「怒りに出口を与えるな」カッとなったときに思い出したい古代ローマの哲学者セネカの言葉

AI要約

怒りをコントロールするためには、冷静になってから相手に伝えることが重要だ。そのためには、怒りと闘い、怒りが収まるのを待つこと、冷静に意見を伝えることが大切だ。

怒りは破壊をもたらす感情であり、報復の欲望を生む。怒りに出口を与えず、自分自身と闘うことで怒りを克服することがセネカの教えだ。

正しい怒りの表現とは、怒りが収まるのを待ち、冷静に意見を伝えること。怒りを抑えることが勇気であり、相手との関係をより良くするためのステップだ。

怒りをコントロールするにはどうすればいいのだろうか。哲学者の小川仁志さんは「冷静になってから相手に伝えればいい。そのための3ステップがある」という――。

 ※本稿は、さわぐちけいすけ・小川仁志『哲学を知ったら生きやすくなった』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■「私の原動力は怒りなの」

■そもそも怒りなんて感じないほうがいい

■「怒りに出口を与えるな」

 【編集部】ストレスの多い時代、余裕がなくてつい怒りっぽくなる人も多いですよね。ょっとしたことですぐ「キレて」しまって後悔したり。

 【小川】怒りは自然に湧き上がる感情ですが、他人や自分を傷つけるやっかいなものです。怒りについて悩んだときに参考になるのが、古代ローマの哲学者・セネカの言葉です。

 セネカは暴君で知られる皇帝ネロに仕えた経験から、怒りを悪だと批判し、「この世で最も遠ざけるべきものだ」と言っています。

 【編集部】やっぱり、怒ることはよくないのですね……。

 【小川】はい。その理由は、怒りは「破壊」であり、仕返しをしたいという「報復の欲望」だからです。報復すると、それに対してまた報復され、さらに怒りが増幅するという憎しみの連鎖が生まれる。そうならないようにするためにも「自分自身の怒りと闘い、怒りに出口を与えるな」と説いているのです。

 【編集部】怒りを表に出さない。それができれば理想的ですが…。

 【小川】怒りが生じるのは避けられないことだとしても、それと闘うことはできるはずです。闘う相手は別の人間ではなく、自分自身の怒り。

 セネカは「人間は相互の助け合いのために生まれた。怒りは破壊のために生まれた」と言っています。つまり人間同士は相手を破壊するために存在しているのではないということです。そもそも怒るのは、何か不正なことがあるからですが、セネカは、人はそれを理性で正すことができると考えた。

■正しい怒りの表現とは

 【編集部】でも、ついカッとなってしまうのが、人間。そんなときも理性を働かせるにはどうしたらいいのでしょう?

 【小川】待つことですね。セネカは怒りに任せて声を上げるのが勇気ではなく、「怒りが収まるのを待つことこそが勇気だ」と言っています。

 【編集部】どれくらい待てばいいでしょうか?

 【小川】それは怒りの程度にもよりますけど、少なくとも相手の言動に即反応してはいけませんね。私が実践しているのは、言い返すにしても、頭の中で10秒くらい数えるとか、メールだったら一晩寝てから返事するとかいった方法です。人間の場合、一晩寝たら怒りも収まりますから。

 【編集部】カッとなったら、収まるのを待つ……。とはいえ、やっぱり、自分の意見や傷ついた気持ちを、相手には分かってほしいです。

 【小川】気持ちを伝えることを我慢する必要はなく、冷静になってから、伝えればいいのです。

 セネカはゆがんだ物事を理性的に正すことは、懲罰の姿を借りた「heal(治す・癒やす)」だと表現しています。怒りが収まるまで待ち、冷静に意見を言うことで、最後に「癒やし」が訪れる――。この3ステップこそが助け合いであり、正しい怒りの表現です。