「食物繊維」サプリで便秘がまさかの悪化 医師がサプリで「不調改善」を勧めない切実な理由

AI要約

口角炎で悩む女性がビタミン不足を疑い、サプリメントを試すと改善したエピソード。

医師の意見では、サプリメントの信頼性には疑問があり、慎重に選ぶべきという考えがある。

サプリメントを上手に活用する医師もおり、アスリートのパフォーマンス向上に役立てている例もあるが、必要性を慎重に見極めることが重要。

「食物繊維」サプリで便秘がまさかの悪化  医師がサプリで「不調改善」を勧めない切実な理由

■もしかしてビタミン不足?

 最近、50歳の女性は、口の両端が切れる口角炎が続いているのが気になっていた。

 病院へ行くほどの不調ではないものの、口を開けるたびにピリッとした痛みが走る。不快だし、メイクにも差し障る。ネットで検索すると、考えられる主な原因として、「ビタミンB2、B6、B12の不足」と出てきた。

「外食続きでビタミン類が不足しているのかもしれない」

 さっそく、ビタミンB群のサプリメントを購入して飲み始めた。

 サプリのおかげか、たまたまかはわからないが、程なくして口角炎が消えた。女性はもともとサプリを飲む習慣がなく、半分以上残っていた錠剤は捨てた。

 買うか買わないかに個人差もあるだろうが、多くの現代人にとってサプリは身近なアイテムだ。薬局だけではなく、スーパーでもコンビニでも手軽に購入できる。

 統計分析研究所の「アイスタット」が昨年6月に取ったWebアンケートでは、回答者300人の約4割が「今まで1度も摂取したことはない」と答えている。そして、6割近い「サプリを摂取したことがある」人々の、約8割が症状を改善するために病医院を受診したことが「ない」、つまり、サプリで症状改善をはかっていたことがわかった。

■医師の6割近くは「サプリ飲んでいない」

 医師はサプリをどうとらえているのか。AERAは医師向け情報サイト「MedPeer(メドピア)」の協力を得て、医師676人にオンラインアンケートを実施した。

 すると、「サプリを飲んでいない」は427票、「たまに飲む」「飲んでいる(その他成分)」「飲んでいる(ビタミン・ミネラル・食物繊維など)」は249票、6対4ほどの割合だった。

 エビデンスを重視する医師らしく、サプリに対して「不要」「気休め」など否定的な声も多かったが、興味深いコメントも寄せられた。

■「あまり信頼しないほうがいい」

「良いものもあるだろうが、悪いもの、効果のないものも混在していると思う。あまりサプリを信頼しないほうがいいと思う」(70代 勤務医 臨床検査科)

「本人がいいと信じているものは偽薬効果もあると思いますので否定はしません。こちらからお勧めすることもありません。尋ねられたら『わかりません』と答えます。すべて自己責任で」(60代 勤務医 腎臓内科・透析)

「サプリはその名の通り補助的なものとして認識しています。サプリ(漢方も)は副作用がないと勘違いされている方が多いので、ちゃんとリスクを知ってほしいです」(40代 勤務医 その他)

■効果があるなら保険適用になっているはず

 新宿駅前クリニックの蓮池林太郎院長は、サプリについて「必ずしも摂取を否定しているわけではない」と断ったうえで、こう話す。

「ビタミン、ミネラルなど栄養素の足りていないときに摂取するのは一つの方法だと思います。ただ、効果があるものは薬として保険適用となっているはずで、『医師から処方された薬は飲まないでサプリを飲む』というのは本末転倒です。サプリには、原価は非常に安いのに売値は高額なものや、信頼性に乏しい業者が取り扱っているものもあります。慎重に選ぶべきでしょう」

■アスリートのプログラムにサプリ

 一方、サプリを上手く活用する医師もいる。岡田医院(京都府)の岡田有史院長は、栄養士、薬剤師とタッグを組み、アスリートのパフォーマンス向上を目的に選手それぞれのパーソナルプログラムを組んでいるという。

「スポーツ選手は、海外遠征など理想的な食事を取るのが難しい場合、コンディションを維持するためにサプリを活用することがあります」

 ただし、首を傾げる場合もあるという。

「『体にいいと聞いたから』『みんな摂っている』という理由でなんとなくサプリを飲んでいても、本人の目的と合致していない場合がある。一般の方にも当てはまることですが、どう考えても必要なかったり、むしろ別のサプリが適しているのでは、というケースが珍しくありません」(岡田院長)