母乳が出なくなり「枯れたの?」と聞かれ…山口真由が向き合った”母としての自信のなさ”

AI要約

山口真由さんは母乳育児と人工乳についての葛藤を率直に語る。

母乳育児の難しさや自信のなさについても触れる。

赤ちゃんの成長や母親の心境の変化を描く。

母乳が出なくなり「枯れたの?」と聞かれ…山口真由が向き合った”母としての自信のなさ”

信州大学特任教授で、法学博士・ニューヨーク州弁護士の山口真由さん。東大卒の才女として様々なメディアで活躍するが、Twitterでのつぶやきはコミカルで飾らないものが多い。FRaUwebの連載では、そんな意外な「素顔」を率直に綴っていただいている。山口さんは昨年6月に第一子を出産した。今回は出産後に山口さんが直面した「母乳か人工乳か」という大きな葛藤と、そこで気がついた自分自身の「母としての自信のなさ」について。

“母乳” これは乳児を育てるにあたってかなりデリケートなテーマである。

産まれたばかりの赤ちゃんを母乳で育てるか、人工乳にするか、どちらをどういう割合で使用するかは、それぞれの考え方、母乳の出方や仕事復帰の早さに依存するだろう。個のライフスタイルが尊重される時代、母乳育児を押し付ける人は圧倒的に少なくなった。ならば、私たちは価値観に縛られず、自由に生きられるようになったのだろうか。

母乳だけで子どもを育てるという「完全母乳」を「完母」と略し、逆に人工乳だけであれば「完全ミルク」で「完ミ」というらしい。当初、私は「完ミ」でもいいかなとうっすら考えていた。“ママにしかできない”がない方が、育児が属人的にならないだろうし。

だが、初乳をと促されて胸元に近づけた赤子がまだ目も開かない状態で必死に吸いつく姿に、その驚くほど力強い吸引力に、そして「お母さんも赤ちゃんもよく頑張ってますね。すごいすごい」という助産師さんたちの声掛けに励まされ、積極的にあげるうちに次第に母乳が出るようになり、結局、ミルクと半分半分になった。そしてその状態を維持していこうと考えていた。母乳には母乳の、ミルクにはミルクの利点があるから。

だが、子どもに必要な総量は月齢とともに増えていき、それに従って出てくる母乳の量も多くなるはずなのに、私の場合はそうじゃなかった。当初の1、2カ月こそ半々を維持できていたが、3カ月を過ぎたあたりから明らかに母乳が足りなくなったのだ。そこから逆に私のスイッチが入る。当初は「完ミ」なんて思っていたのに反比例するように、どんどんムキになっていった。

あれは4カ月の頃だっただろうか。この時期の赤ちゃんは1日の半分くらいを眠り、眠っていない時間はだいたい泣いている。生を受けたばかりのこの世のすべてにいら立っているのか、“アテンション”を集め続けなければ生きていけないという本能のなせる業か。

大泣きしている乳児をなだめるために、とりあえず自分の胸を差し出せるというのが母乳派がよく口にするメリットだ。その日も、赤ちゃんの名に相応しい梅干しのような顔でうわーんと泣く子に、私は自分の胸を差し出した。大きく口を開けてぱくりと咥えれば、あーこれこれと子どもは泣き止む、はずだった。