記録的な円安なのに「100円ショップ」が価格を維持できるワケ 「ダイソー」と「3COINS」に聞いてみた

AI要約

物価高が続く中、100円ショップが好調で1兆円市場を突破。

円安の影響を受けやすいが、ダイソーと3COINSが低価格を維持するためにさまざまな工夫を凝らしている。

消費者のニーズに合わせた商品開発やブランド力の向上が市場での成功につながっている。

記録的な円安なのに「100円ショップ」が価格を維持できるワケ 「ダイソー」と「3COINS」に聞いてみた

 物価高が続く中、いわゆる「100円ショップ」が絶好調だ。帝国データバンクの調査によると、2023年度推計の「100均」市場は初めて1兆円を突破し、店舗数も直近10年間で1.5倍になったという。日本人の節約志向の高まりが背景にあるとされるが、本来、円安のあおりを最も受けやすい「100円ショップ」が今でも低価格を維持できているのはなぜか。「100円ショップ」のダイソーと「300円ショップ」の3COINS(スリーコインズ)を取材した。

 帝国データバンクのリポートによると、2013年度の「100均」の市場規模は約6530億円で、大手4社の店舗数は5887店だった。それが23年度は1兆200億円の市場規模が見込まれ、店舗数は推定値も含めて約8900店に増えた。「100円ショップ」は、今の日本ではめったに見られない“右肩上がり”の成長を続けている。

 近年の物価高は100円ショップの追い風になっている。東京23区の場合、昨年1年間の消費者物価指数は生鮮食料品を除き、速報値で前年比3.0%の上昇。1年間の上昇率が3%台となるのは、第2次オイルショックの影響があった1982年以来、41年ぶりだという。ただ、これに賃金の上昇が追いついていないがゆえに、消費者は少しでも生活を楽にしようと100円ショップを頼りにする。この構図は実にわかりやすい。

 だが一方で、100円ショップのビジネスモデルは、円安では分が悪い。商品の多くが海外生産品であるため、円安により輸入コストや原材料費がかさめば「100円」で販売することは難しくなるからだ。

■トータルのブランド力が重要(3COINS)

 物価上昇は追い風で、円安は向かい風ーーこの相反する状況を業界大手のダイソーと3COINSはどのように捉え、低価格の維持に努めているのか。

 まず、業界全体が好調の理由について、ダイソーのグローバル広報課、後藤晃一課長はこう話す。

「買い物をする際の“入り口”として機能している自負がありますが、その分、消費者の皆さんが商品を選ぶ基準も厳しいと痛感しています。100円で売るだけでは駄目な時代になっており、100円以上の価値を感じていただくことは大前提です。そのためには時代のニーズに対応することが何より大切で、コロナ禍の時はマスクとウェットティッシュを100円の枠内で販売すると反応がありました。アウトドアブームの時も、私たちができる範囲で関連商品などを用意しました。すると防災グッズとしても評価されるなど、思わぬところでご好評いただきました」

 消費者ニーズを丁寧に拾おうとするダイソーに対し、3COINSのブランドディレクターの肥後俊樹氏は「ブランド力」を強調する。肥後氏は「“3COINSでいい”ではなく、“3COINSがいい”と言われるようにならなければならない」と語る。

「コロナ禍をへて、日本人の消費傾向が変わったと実感しています。“おうち需要”の増加で日常生活に必要な生活雑貨が改めて脚光を浴びました。その結果、今は『お金をあまりはかけずに、日常生活を充実させたい』というニーズが増えています。それに対して手に取りやすい価格で、かつ“ちょっと幸せ”を感じてもらえる提案をすることが3COINSの役目です。消費者の心の奥にあるニーズに響く優れた商品の開発は大前提で、さらには、商品価値を感じてもらうための店舗の内装、公式サイトやeコマースの利便性、SNSでの積極的な情報発信など、3COINSトータルとしてのブランド力が重要になると考えています」