深刻化する子どもの「ネットいじめ」 止めるのに必要なのは「賢い仲裁者」

AI要約

ネットいじめが深刻化しており、命を絶つ子どももいる中、予防的な視点が求められている。

いじめは早めに気づき深刻化させないことが大切であり、教師や大人が子どもの居場所を多角化し、いじめた理由を肯定しないことが重要。

教職員の研修やいじめ対策のための組織が機能していない学校も多く、現状において予防策の強化が必要とされている。

深刻化する子どもの「ネットいじめ」 止めるのに必要なのは「賢い仲裁者」

 パソコンやスマホを通じた、ネットいじめが深刻化している。命を絶つ子どももいる中、求められるのは、予防的な視点だ。AERA 2024年7月1日号より。

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 いじめは、早めに気づき深刻化させないことが重要だ。だが現状は、見過ごされる場合が多く、心身に重大な傷を負う「重大事態」も増えている。文科省の調査では、22年度は923件と過去最多を更新した。命を絶つ子どももいる。

 22年2月、大阪府門真市の市立中学3年生の男子生徒(当時15)が自死した。2年以上続いた、ネットいじめが原因だった。

■いじめた理由を肯定しないことが重要

 男子生徒は中学1年生の時、同学年全員が登録されているLINEグループに「雨の匂い臭ない?笑」と書いたところ、「お前の方が臭い」などと集中的に書き込まれた。3年生になるといじめはエスカレートし、「なんで4なないの?」などと「死ぬこと」を求めるようなメッセージが執拗に投稿された。亡くなる2カ月前には「誰にも見守られず死んで下さい!」などと送られた。

 今年2月、門真市は原因を調査した市の第三者委員会が作成した報告書を公表した。そこでは同級生らによる計62件をいじめと判断し、自殺との因果関係を認めた。ほとんどが、LINEなどネット上の中傷や暴言だった。第三者委員会は、教職員の研修などをしっかり行う必要があると提言した。

 13年にできた「いじめ防止対策推進法」は、多様な視点で子どもを見守るため、各学校にいじめ対策のための組織をつくるよう義務づけた。だが現状、教員は忙しく、対策組織が機能していない学校は少なくない。

 ネットいじめが拡大している現状で、求められるのは予防的な視点だ。

 社会心理学者で大阪大学の綿村英一郎准教授は、「まずは、大人が子どもの居場所を多角化し、いじめを見つけた時はいじめた理由を肯定しないことが重要」と指摘する。

「子どもは学校以外に居場所があれば、集団内のメンバーに嫌われてもよくなり『ノー』と言うことができます。そして、いじめの本質はスケープゴートです。いじめに関わった子どもはいじめた理由を正当化しようとしますが、何であろうと肯定してはいけません」