【39歳、子連れ再婚の365日】癌の再発。孫を思う母の強い意志に娘として何ができる?

AI要約

蓮の合判テストが終了し、志望校判定は低かった。母は蓮のリラックスを支持し、今後の対策に焦りを感じる。

母の再発の診断により、腹膜播種が見つかり、抗がん剤治療への不安が浮上。母は手術より体力温存を選択。

蓮の受験や母の入院、家族の状況を考慮し、今後の選択肢に悩むあん。母は未来を考え、蓮の受験を優先する決意を示す。

【39歳、子連れ再婚の365日】癌の再発。孫を思う母の強い意志に娘として何ができる?

バツイチ子持ちの39歳、あおいあんさんの実録再婚ストーリー。夫婦仲に反抗期の子ども、義母との関係etc…リアルな毎日をお届けします。今回は第30回。現在Season3をWeb Domaniで連載中。最新話は毎週月曜日19時更新です!

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【登場人物】

あん(私)…メーカー勤務のシングルマザー。8年前に離婚し、実家に出戻り。39歳。

蓮…生意気盛りの小学生。11歳。

臣斗くん…あんの会社の後輩・海斗くんの大学の同級生で再婚相手。34歳

結衣…蓮の彼女。4年生からS塾に通い中受予定。

お母様…臣斗の母。英語教師で蓮の中学受験を強力プッシュ。

【前回までの話】

シングルマザー歴8年を経て、事実婚という形で再婚に踏み切ったあん。義母から中学受験を進められるもあんは反対派でいたが、息子・蓮の前向きな気持ちと、夫・臣斗のサポートもあり中受へ臨むことを決意。

臣斗と新居の選択を巡って意見の食い違いが見られた頃、あんの母親が癌の手術を受ける。術後の経過が良く、あんは家族3人で初の家族旅行へ行くも臣斗と大げんか。その後、あんは臣斗とのセックスレスや疑惑の女性からのメッサージなどを乗り越え、家族として新しい一歩を踏み出した。

一方、最後の夏休みと呼ばれる受験生にとっての正念場を過ごした蓮は、原因不明の夜泣きを始めるも理由が分からないまま1週間で止まる。そして9月に入り日曜日まで塾通いになる中、連から衝撃のトラブルを聞いてしまう…。

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こんにちは。シングルマザー歴8年目にして再婚へと踏み切ったあおいあんです。

前回は、少し前に癌の手術をした母の定期検診で、血液検査の結果が思わしくないところまでお伝えしました。

蓮の合判テストは緊張感のないまま無事!?終了しました。試験会場になっている中学校へ行くときも、電車でS塾生であろう子は片手にコアプラス(問題集)を持ちブツブツと唱えている中、蓮はどうでもいい話をペラペラ私に話してきました。

終了後も「お腹がすいた」と近くのファストフードにに駆け込み、頑張ったご褒美にと文房具屋へ行く始末。テストの結果は言うまでもなく、偏差値は上がらず、志望校判定は30%と低空飛行を維持していました。このままじゃ合格はできないと焦る親の気持ちに反し、蓮は合判テストが終わった解放感で、塾のない学校帰りは友達と遊んで帰ってくるように。

そんな蓮を母は「1日2日くらい、いいじゃない」と、私をなだめるかのように言いました。その母の再検査の日。私と母は口数少なく病院へ。待ち時間の長い検査を終え、ようやく先生の診断へ。

先生:検査結果ですが、残念ながら癌の再発です。腹膜播種を起こしていて、手術では取り除けない状態です。ですが、抗がん剤などで進行を遅らせることはできます

母:腹膜播種!?それはどういう病気ですか?

先生:元々、癌を患った方がなる病気で、大元の癌細胞が種のように飛び散るとイメージしてもらうと分かりやすいかと思います。開腹して目視できるものは取り除くことができますが、目に見えないところにも飛び散っているため、完璧に除去することはできません。なので今回はご本人の体力温存のためにも、手術でない方法でアプローチしたいと思います

私は先生の説明を聞いて真っ暗闇に放り出されたようだった。その後、先生は治療法の説明をし、今までで一番長い時間をかけて診察をしてくれた。今まで検査で長時間拘束される割に、大切な先生の話は秒で終わることに不満を感じていたが、それは先生が詳しく説明することがない=健康だからだったんだと改めて感じた。先生の話が長くなるのは、それだけ深刻と言うことだった。

今すぐ入院をしなくても大丈夫だが、どう治療していきたいか考えて欲しいと言われた。

母と私は深々と頭を下げ診察室を出た。会計待ちをしている間、余命はどのくらいになるのか聞けばよかったのかな? 今入院をしたら蓮の受験にどう影響するだろう? 元々拒否していた抗がん剤を母は受け入れるのだろうか? ああしたら、こうしたら、どうしたらと次々頭の中で波が押し寄せてきた。そんな隣で母がボソッと

母:新しいパジャマ買っておいてよかったわ

その言葉に、この人はなんて強いんだと少し驚いた。オロオロしていた自分は、トンチンカンなLINEの返事をしてくる父となんら変わりないと思ってしまった。遅めのランチを食べに行くと、その間再発のことや、入院の話は出てこなかった。家に帰ると蓮が塾へ出発した後だった。私は父に連絡をし、早めに帰るように伝えた。父が帰り、先生が話したこと全てを伝えると

父:お前の好きなようにしなさい

そう言うとお風呂へ行ってしまった。私はイラッとし

私:なんなのあの態度。ママの相談に乗るとかできないわけ?

母:男の人は怖がりだからね。いいのよ。相談に乗られた方が、ああでもないこうでもないって押し付けてくるから

私:ママはどうしたいの?

母:抗がん剤は元々話していた通り、するつもりはないのよ。手術で癌を取り除けないなら、ギリギリまで入院はしないで普通の生活をしようかな。その方が蓮の受験にもいいでしょ

母は元気な細胞まで傷付けてしまう抗がん剤はしないと決めていた。あの苦しみに耐えられないとも言っていた。治療も入院もしない母に、私ができることって…。

私:蓮の受験のことは考えなくていいよ。中受がダメでも高校も大学も受験はできるんだから

母:そうはいかないわよ。蓮がこんだけ頑張っているんだから、私が足を引っ張るわけにいかない。受験が終わるまで入院はせず、蓮が全力で入試を受けられるようにしなきゃ

確かに今入院されたら、母の看病と蓮の受験、どちらも支えられる自信はない。でも命がかかってる方が優先されるべきだと思う。

母:最初、癌になった時から最後がそこまで遠いものではないと思っていたから、私は大丈夫よ。未来がある人を優先しなさい

母の前では泣かないと決めていた私は奥歯をギュッと噛み締めて頷いた。次の日、先生には入院せず検査のタイミングを短くして様子を見たいと伝えた。これから母はいつ入院してもおかしくない状態、万が一があるかもしれない、そう思うと今日1日1日を、今までよりももっと大切に過ごさなくてはと思った。

(次回に続く)