学童保育の指導員「年収150万円未満」が半数、増える「非正規公務員」 処遇改善は道半ば…

AI要約

学童保育指導員の処遇に関する調査結果を元に、指導員の状況や課題が浮き彫りになった。

経験年数の短さや低賃金、非常勤やパート職員の割合の高さなどが指摘されている。

指導員の仕事は専門性や責任が高く、子どもたちの安全な生活のために重要である。

学童保育の指導員「年収150万円未満」が半数、増える「非正規公務員」 処遇改善は道半ば…

親が仕事などで家にいない小学生のための放課後の居場所となる「学童保育」。子どもたちが安全な生活を送るには、生活づくりをする指導員の存在がとても重要です。しかし、その処遇は決してよいとはいえません。

学童保育の普及・発展のために活動する「全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)」は、2018年に週20時間以上勤務する指導員について調査を実施(※1万331人中4972人が回答)。

経験年数5年未満の指導員が約半数を占め、長く続いていない実態が浮き彫りになりました。また、1日6時間未満の勤務の指導員が5割以上を占めました。

調査対象を週20時間以上勤務する指導員としたにもかかわらず、約半数が年収150万円未満で、約6割が「ワーキングプア」といわれる年収200万円未満ということもわかりました。

全国の学童保育には、2015年に定められた「放課後児童支援員」という資格をもった専門的な指導員が、必ず一人は置かれることを基本としています(ただし、民間企業がビジネスとして運営している一部の学童保育は、児童福祉法が定義する学童保育には当てはまらないため、対象外)。

「放課後指導支援員」とは、保育士や社会福祉士、教諭などの基礎資格を持つ人が、16科目24時間の研修を受講することによって取得することができます。要件は徐々に緩和され、現在は一定の年数以上、学童保育に従事した人も研修を受けることができます。

しかし人手不足の解消策のために、研修の免除や基礎資格のさらなる緩和を求める動きは、「誰でもいい」という考え方につながる危険性をはらんでいると全国連協は警鐘を鳴らします。基準の「緩和」ではなく、指導員が就労を継続するための条件整備と人材育成を基本とした方策が必要です。

全国連協の事務局次長・佐藤愛子さんと千葉智生さんにその実態についてうかがいました。

「非常に専門的な知識や経験を求められる仕事であるのに、8割近くが非常勤やパート職員です。最近は学童保育の指導員という仕事自体に魅力を感じて志す人もいますが、雇用が不安定なため長く続けにくいのが現状です。さまざな年代の人がいますが、子育てがひと段落した50~70代の指導員も多くいます。

賃金が低く抑えられてきたのは、子育て経験があれば“誰でもできる”ような仕事だと思われていたことがあります。また、子どもが過ごす放課後の時間帯だけ働けばいいと思われていることもあります。それによって時給単価が低くなったり、そもそも労働時間が短いために収入が少なくなったりします。

扶養範囲内で働きたい人が多いと、処遇改善の声もなかなか上がってきません」(全国連協・佐藤さん)

しかし実際の指導員の仕事は、子どもや保護者と直接関わるだけではありません。

「学童保育は、子どもがいる時間だけ仕事をすればいいというわけではないんです。保育前後の“子どもがいない時間”にも、昨日までの振り返りをしたり、活動内容や声がけを考えたりする必要があります。そういうふうに生活の場を整えてこそ、子どもが安心して通えるようになります」(全国連協・千葉さん)

その他、学校との情報共有や要望・苦情への対応、地域住民との連携など、指導員の仕事は多岐にわたり、子どもがいる時間だけでは到底こなしきれません。