「Everything is a Museum」が問いかける美術館の存在。金沢11ヶ所でプロジェクトが展開

AI要約

今年元旦に発生した能登半島地震をきっかけに、金沢市内11ヶ所のアート関連スペースを活用したプロジェクト「Everything is a Museum」が始動した。

プロジェクトでは、金沢のアートシーンで活躍するスペースとコンセプトに沿った展覧会が企画され、異なるアプローチでアートを楽しむことができる構成がされている。

参加作家らの作品を通じて、プロジェクトの独自性や多様性、美術館とは異なるアート体験の意義が浮かび上がってくる。

「Everything is a Museum」が問いかける美術館の存在。金沢11ヶ所でプロジェクトが展開

 今年元旦に発生した能登半島地震。これに反応するように、金沢市内11ヶ所のアート関連スペースを舞台にしたプロジェクト「Everything is a

Museum」が始動した。

 このプロジェクトを立ち上げたのは、キュレーターの髙木遊。「Everything is a

Museum」は金沢でそれぞれ独自の表現活動を続けてきたスペースに協力を仰ぎ、それぞれのコンセプトに添うかたちで様々な展覧会が企画された。金沢のアートシーンを構成する仲間同士のつながりが、このプロジェクト実現の鍵だ。長年、金沢で活動を続けてきたNPO法人「金沢アートグミ」が本展の起点となる。

 参加作家の一例を紹介しよう。例えば2023年6月に誕生したオルタナティブスペース「FOC」では、涌井智仁がフルクサスのメンバーとして知られる塩見允枝子の《真昼のイヴェント》をリアライゼーションした同名作品や、地震によって金沢21世紀美術館での展示が中断された「MONAURALS」シリーズの新作などが展示されている。

 またSIDE COREは、震災後に大地が隆起した能登を訪れ、新たな映像作品《new

land》(2024)を制作した(展示場所は冊子掲載のQRコードから問い合わせるかたちとなる)。

 金沢美術工芸大学の学生らによって運営されている「芸宿」では、小松千倫と中村壮志が作品を展示。黙祷をテーマに制作された中村の《A Minute of

Silence》(2024)は、黙祷の歴史を省みつつ、その意味を問いかける静かな映像だ。

 これらの作品は「Everything is a

Museum」を構成するごく一部に過ぎない。各会場に購入できる冊子を手に取り、美術館という大きなインスティテューションとは異なるかたちで美術を紡ぐ一つひとつのスペースを、星座を結ぶように巡ること。そうした体験によって、美術館の意義を照射する試みとなっている。