三島由紀夫ファンの高校生が描きだした「美」 17歳で新潮新人賞受賞の伊良刹那さん

AI要約

高校1年の時に三島由紀夫の小説に影響を受けた伊良刹那さんが、史上最年少で新潮新人賞を受賞したエピソード。

伊良刹那さんの作品『海を覗く』の内容とテーマについて。

伊良刹那さんがスマホで二百数十枚に及ぶ小説を書き切り、進学先の東北大学で学業と創作の両立に取り組む姿勢。

三島由紀夫ファンの高校生が描きだした「美」 17歳で新潮新人賞受賞の伊良刹那さん

「高校1年の時に三島由紀夫の小説を読んで、はまったんです。登場人物の思索が自分の腑に落ちる形で描写されていて。自分もあんな文章を書けたらなと」

そう話すのは『海を覗く』(新潮社)で昨年、新潮新人賞を史上最年少となる17歳で受賞した伊良刹那(いら・せつな)さん(18)。筆名の伊良も、三島の名編『潮騒』の舞台、伊良湖水道から取ったという大の三島ファンだ。

『海を覗く』は、美術部に所属する男子高校生の速水が主人公。精緻な横顔をした同級生の男子の「美」に魅せられた速水は、彼をモデルに肖像画を描き始める。親しく会話を交わすようになる2人だが、その距離はある出来事を境に微妙に変わっていく。完全なる美とは? 見ることと見られることの関係は? そんな思弁の先に、闇に包まれた海の情景が印象的なラストが待つ。

「完全なる『美』というのは、いろんなものを無力化する圧倒的なもの。そこには到達できないと分かっていても、あこがれや願望を捨てきれない人もいる。美と人間-この二者の関係を描きたかったのかもしれない」

原稿用紙換算で二百数十枚に及ぶ本作をすべてスマホで書き切った。「パソコンを持っていなかったので、ほかに手段がなくて。夜、自分の部屋で横になって書いたりしてましたね」

今春、東北大文学部に進学。学業と創作の両立に励む。「頭の中をぐるぐる回っている思索が、書くことで深まり、整理される。それが楽しい。変に気張らずに、自分のスタイルで書き続けたい」(海老沢類)