糖尿病も怖いけど...血糖値が去年より急に上がった人が疑うべき「がん」とは?

AI要約

職場健診で重要な項目である血糖値について解説されている。

基準値の変遷や厳しさ、健康管理の重要性に触れられている。

年齢による基準の変動や保健指導の現状についても言及されている。

糖尿病も怖いけど...血糖値が去年より急に上がった人が疑うべき「がん」とは?

 毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。

 BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。

 『健診結果の読み方』連載第16回

 『健診結果が出たら「血小板数(PLT)」必ずチェック! 数値が高いと起きる「恐ろしい」事態とは』より続く

 糖尿病が心配な中高年にとって、血糖値は最も気がかりな健診項目のひとつです。職場健診では、必須項目となっています。

 血糖値は血液中のブドウ糖濃度のことです。単位は「mg(ミリグラム)/dL(デシリットル)」。血液100cc当たりに溶けているブドウ糖の量(重さ)になります。

 血糖値は食事をすれば増えますし、空腹になれば下がります。変動幅が大きいため、健診では、食事から10~12時間経過後に血糖値を測定するようにしています。採血の前日は、夜9時までに食事を済ませるように言われるのは、そういう理由からです。完全に空腹になった時点で測定するので、「空腹時血糖値」と呼ばれているのです。

 基準範囲は70~109。100~109は「正常高値」と呼んで、糖尿病予備群が含まれているとしています。また110~125までは境界領域、126以上になると糖尿病の疑いが強くなります。逆に69以下なら、低血糖と言われます。

特定健診の基準はこれよりも一段厳しく、基準値は100未満となっています。職場健診も同様ですから、40歳になると基準が変わります。その結果、次のような問題が生じてきます。

 去年39歳だったひと(仮に鈴木さんとでもしておきましょう)の、去年の空腹時血糖値が105だったとします。その時点では鈴木さんの血糖値は正常値です。そんな鈴木さんは、今年40歳になりました。この1年間、それなりに摂生して暮らしてきたおかげで、今年の血糖値も105でした。でもそれではダメなんです。鈴木さんにはイエローカード(保健指導の勧告)が渡されてしまいます。

 まあ、実際にそこまで厳しくやっている会社はほとんどないでしょう。それに保健指導の制度そのものが形骸化してしまって、真面目に受けるひとが減っています。

 そもそも以前は血糖値の基準値は、もっと緩いものでした。1980年に世界保健機関(WHO)とアメリカ糖尿病学会が決めた基準では、140以上を糖尿病(疑いを含む)とするというもので、日本でも同じ基準が採用されていました。しかし1990年代後半に、WHOとアメリカが基準値を下げ、126以上としました。それを受けて、日本でも同様の基準となったのです。

 それだけでも厳しいのに、40歳以上をもっと厳しく締め付けようとしても、従わないひとが多いのは仕方がないことです。