スマホ専用ゾーン付き 老眼鏡の「見えにくい」問題をかなり解消してくれる「デジタイム」はデジタル時代の“作業用メガネ”か

AI要約

バリラックスの「デジタイム」というメガネ用のレンズは、老眼鏡の不便さを解消する新しい「作業用メガネ」である。

メガネはメガネ+肉眼の組み合わせで機能し、老眼には調整能力の衰えが関係しており、近くや遠くが見えなくなるのではなく、調整能力が弱まることを示す。

累進レンズは60年代以前から存在しており、バリラックスXRは最新技術を取り入れた進化した製品である。

スマホ専用ゾーン付き 老眼鏡の「見えにくい」問題をかなり解消してくれる「デジタイム」はデジタル時代の“作業用メガネ”か

 バリラックスの「デジタイム」というメガネ用のレンズは、老眼鏡という道具の不便さを、かなりの部分で解消する、デジタル時代の新しい「作業用メガネ」なのかもしれない。

 このレンズを使ったメガネを作ってから約1カ月の試用で感じたのは、そのことだったのだけど、これが中々伝えにくい。それは、メガネという視力補正器具が実際のところどういうものか、分かっているようで分かっていない人は、案外多いのかもしれないからだ。

 例えば、「老眼はどんどん度が進むから、メガネを作るタイミングが難しい」というのは、確かに事実だ。ただ、老眼の度が進むことと、近眼の度が進むことは、根本的に違うということに気がついていない人は多いのではないだろうか。

 そもそも、メガネというのはカメラのレンズとは違って、「メガネ+肉眼」の組み合わせで機能する道具なのだ。なぜ、メガネが一枚のレンズで、遠くから近くまでピントが合うのかというと、それは、目がオートフォーカス的な機能を持っているから。

 つまり、メガネはカメラでいうと、レンズというより、コンバージョンレンズに近いのだ。例えていえば、遠くが見えないからテレコンバーターを使うのが近視鏡、近くが見えないからワイドコンバーターを使うのが遠視鏡といった感じ。

 一方で、老眼鏡は目の調整能力が衰えて、そのオートフォーカス機能が弱まっているから、そのピントが合いにくい範囲内の、もっとも見たいと思う距離──例えば本が読みたいなら、本までの距離、PCなら画面までの距離などにピントが合うように作る。

 そして、老眼が進むというのは、近くや遠くが見えなくなるのではなくて、調整能力がさらに弱まることをいう。だから、「老眼鏡を作った当初は、本が楽に読めたけど、最近は見えにくくなってきた」といった現象が起きるが、それは同時に、「でも、PCの画面は見やすくなったんだよね」という状況も引き起こす。

 つまり、最初に作った老眼鏡は、本を読む距離に合わせてあるけれど、目の調整能力がまだ残っているから、その前後もある程度ちゃんと見える。ところが調整能力が弱まると、本の距離では近過ぎて見えにくくなり、少し遠くの画面の方が見やすいという状況になるのだ。

 こうなると、本の距離と画面の距離のどちらを優先するかを選んで、メガネを作るか、両方見たければ、累進レンズのメガネを作る必要が出てくる。多くの人は、ここで老眼鏡を諦めるか、本の距離に合わせたものに作り直すだろう。メガネに詳しい人は、そこで「近々両用」と呼ばれる累進レンズのメガネを作ろうと考える。

 この「近々両用」というのは、例えば、目からPC画面までの40cmくらいの距離と、本までの30cmくらいの距離の2つの度数を基準に合わせたレンズで、近い2つの距離で合わせるから「近々両用」という。これを、向かい合った人の顔までの80cmくらいから、本の30cmに合わせるのが「中近両用」、遠くから近くまで満遍なく見えるようにするのが「遠近両用」である。

 両用というから、何となく二焦点のレンズみたいだが、度数はレンズの中でグラデーションになっているから、正式には「累進度数レンズ」と呼ばれるわけだ。いつまでも「遠近両用」とかいってしまうから、大昔のレンズの真ん中からパッキリと遠く用と近く用が分かれたメガネのイメージが生き残ってしまう。

 「バリラックスの累進レンズは、1959年にベルナール・メトナーズ博士という方が開発しました。彼のお父さんはメガネ職人さんで、真ん中に線が入った『バイフォーカル』と言われるタイプのレンズを入れたメガネを掛けて仕事をしていたそうなんです。それが使いにくいというのを父親から聞いていたメトナーズ博士が、青年時代から試作を繰り返して作っては、父親に試してもらって、完成したのが世界最初の累進レンズだったんですね。つまり、累進レンズって、60年代になる前からあったんですよ」と、ニコン・エシロールの井上陽奈さんが言うように、もう随分前に、線が入ったり、レンズの中に小さい別の度数のレンズが入ったりといった、いわゆる二焦点タイプの遠近両用メガネは、古いものとなっていたのだ。

 それが知られていないな、と感じたのは、例のメガネの中にスイッチで別の度数の部分が現れるというタイプのメガネに注目が集まった時だったのだけど、あれはレンズ内に別の度数を出したり引っ込めたりできるという技術自体はすごかったので、注目されたこと自体は間違ってはいなかったと思う。とはいえ、前述したように、メガネは目の機能と合わせることで威力を発揮するデバイスなので、カメラのレンズ的な発想とはあまり相性は良くないのだ。

 ともあれ、そうやって累進レンズは進化を続けてきたのだが、その一つの到達点が、以前にこの連載でも紹介した「バリラックスXR」なのだ。創業当時から、実際に使う人、必要とする人に試してもらいながらレンズの開発をしていたメーカーだから、とにかく膨大なモニターデータを持っている。そのデータと最新技術と世界的に行われる試用者によるモニタリングが、視線の動きに合わせた遠くから近くまで、自然な視界を得られるメガネを実現している。