メタのAI部門トップ、大規模言語モデルが「人間レベルの知恵」を持つことはないと発言

AI要約

メタのAI部門トップは、OpenAIやGoogleのAIが人間の知能に到達できないと語る。

AIモデルは、訓練データに依存し、人間と同等の能力には到達できないと指摘。

メタは次世代AIシステムの開発に取り組み、人間レベルのAI実現に最大10年かかる見込み。

メタのAI部門トップ、大規模言語モデルが「人間レベルの知恵」を持つことはないと発言

メタのAI部門のトップを務めるヤン・ルカンは、5月22日に公開されたフィナンシャル・タイムズ(FT)によるインタビューの中で、OpenAIのChatGPTやグーグルのGemini(ジェミニ)などのAIは、将来的に「人間レベルの知能には到達できない」と語った。


彼のこの発言は、4月末の決算発表でAI投資の拡大を宣言して投資家の不安を煽り、2000億ドル(約31兆円)もの時価総額を消失させたメタの今後の計画についての洞察を与えるものだ。

ChatGPTやジェミニ、メタのLlama(ラマ)のような人気の生成AIツールの基盤となる大規模言語モデル(LLM)は、「人間のレベルのプランニングや推論に到達することはできない」とルカンはFTに語った。

このようなAIモデルは、膨大な量のデータを使って訓練されるが、正確な答えを導く能力は、「訓練されたデータの性質によって制限される」とルカンは言う。これは、これらのモデルが適切なデータで訓練された場合に限って、正しい答えを導けることを意味する。

LLMは「限られたロジックの理解」しか持たず、永続的な記憶を持たず、物理的な世界を理解せず、「階層的な計画を立てることができない」とルカンは説明し、「理にかなった推論を行えない」と付け加えた。

トロント大学のジェフリー・ヒントン教授や、モントリオール大学のヨシュア・ベンジオ教授らと並んで、「AIのゴッドファーザー」の1人とされるルカンは、LLMは適切な訓練データを与えられたときのみに正確であるため、「本質的に安全ではない」と述べ、人間と同じレベルのAIを望む研究者は他のモデルに目を向けるべきだと語った。

彼は、メタのAI研究組織であるFundamental AI Research(FAIR)の約500人のチームとともに、「ワールド・モデリング」と呼ばれるアプローチに基づく次世代のAIシステムの開発に取り組んでいると語った。これは、システムが周囲の世界を人間のように理解し、何かが変わった場合に、何が起こるかを予測する感覚を養うものだという。

ルカンは、ワールド・モデリングのアプローチを使って人間レベルのAIを実現するには最大で10年かかる可能性があると予測した。


■投資家は「巨額の投資」を懸念

フェイスブックやインスタグラムを運営する、世界で最も知名度の高いハイテク企業であるメタは、生成AIの進化の最前線に立っている。Llama 3のようなメタのLLMは世界で最も有能なもののひとつと考えられており、同社が提供するAIアシスタントのMeta AIは最近、公式ウェブサイトを通じてスタンドアロンツールとして提供されることが発表され、OpenAIのChatGPTやグーグルのジェミニのような市場のリーダーと直接競合することになった。

しかし、AIモデルは訓練にコストがかかるため、投資家はこの競争に全面的に乗り出すというメタの決断を歓迎していない。同社のマーク・ザッカーバーグCEOは、米国時間4月24日の決算発表で、AIに資金を投入している間は成長が鈍化することを覚悟するように述べたが、その直後にメタの株価は急落し、2000億ドル近い時価総額を喪失。この下落はハイテク株全体に波及することとなった。

ザッカーバーグは、投資家に対し、AIへの投資がいつ、どこで、どのように実を結ぶのか、まったく見通しが立たないにもかかわらず、多額の費用を投じてAI機能を強化すると語った。彼は、メタが過去にリールやストーリーズ、ニュースフィードなどの製品で同様の収益化戦略を成功させており、「AIでも他社をリードすることで利益を得られると考えている」と強調した。