ウイングアーク1st、生成AIで現場の効率化を目指す新戦略を発表

AI要約

ウイングアーク1st株式会社は、生成AI戦略とAIプラットフォーム「dejiren」に関する記者発表会を開催し、既存製品の生成AI対応や新機能の強化を発表した。

会社は、現場の業務効率化を目指し、生成AIを活用したスマートフォンを使った情報処理や業務効率化の提案を行っている。

さらに、技術スタックの提供や新たな製品の開発を通じて、生成AIの活用を簡素化し、お客さまの業務利用を促進していく方針を示している。

ウイングアーク1st、生成AIで現場の効率化を目指す新戦略を発表

 ウイングアーク1st株式会社は19日、生成AI戦略とAIプラットフォーム「dejiren」に関する記者発表会を開催した。同社は、帳票基盤ソリューション「SVF」、データ分析基盤「Dr.Sum」などの製品を提供しているが、これら既存製品を順次生成AI対応にしていくという。さらに、従来はコミュニケーションプラットフォームとして提供してきた「dejiren(デジレン)」の機能を大幅に強化し、OpenAI、Azure OpenAI、Google Vertex AI、Amazon Bedrockなどとのインターフェイスとして利用できるようにするとした。

 今回、さまざまな現場の情報を生成AIで処理する用途を想定。部品見積もり、不良報告、現場活動記録、経費精算などのために、対象をスマートフォンで撮影し、その情報を社内に送って上司等が処理し、見積もりであれば社外に見積もり依頼通知とする、といった用途での業務効率化につなげていく。

 かなり泥臭い用途での生成AI利用となるが、ウイングアーク1st株式会社 取締役 執行役員事業統括担当兼 CTOの島澤甲氏は、「今回、当社のお客さまに多い、さまざまな現場で生成AIを使うという観点でいえば、社内のR&Dセンターでもさまざまな使い方を試し、魔法のような使い方のデモも登場している。が、実際に業務が大きく変わったというお客さまにはあまり出会えない。我々の提案は、他社からすれば地味かもしれないが、『プロンプトエンジニアリングを習得して生成AIを利用するのは厳しい』と感じるようなお客さまも多いことを想定し、できる限り簡素化して、お客さまの目線にあった技術展開を行っていきたい」と、あえて現場改善につながる提案を行っていくと説明した。

 今回、会見の冒頭で島澤取締役が指摘したのは、現場の業務効率を上げるために生成AIを使うといった場合に、期待されていることと、実際の利用にはギャップがあること。本当に望まれているのは、現場の情報、担当者の情報をスマートフォンで撮影する、音声で報告するといった作業をするだけで、自動的にレポートが作られる、進捗状況が自動登録されて工事工程をリアルタイムに把握できるといったことだが、プロンプトエンジニアリングやシステムとの連携は容易ではなく、現状ではそれは難しい。

 「こうした課題を解決するため、我々は生成AIを使えるようにする技術スタックを全社挙げて取り組んでいる。私たちが目標とする生成AIの1つのゴールは、生成AIの存在をユーザーに意識させないようにしていくことが1つの目標」と島澤取締役は説明した。

 こうした背景を受けて、まず、生成AIを使えるようにするために3つのレベルの技術スタックを提供する。レベル0はプロンプト直接実行レイヤーで、ウイングアーク製品としてはinvoiceAgent Copilotなどが対応。レベル2は半プロンプトで、マルチモーダル解釈レイヤー。画像から文字列を抽出し、動画から情報抽出、フォーマット生成などを行い、ウイングアーク製品ではinvoiceAgent、MotionBoardなどが対応する。レベル3は、プロンプトなしの具体的な機能提供レイヤー。請求書データ抽出、工事現場状況解析などを行う。

 「レベル1は、ちょっとだけ日本語で指示を書いて使ってもらう。さらにそこから進化し、利用する側は生成AIの存在が全くわからない状況で利用できるのがレベル2。こういう形で技術の階層を設計し、お客さまの目的に合わせた技術要素をダイレクトに提供していく。よりシンプルで簡単に使えるものにしていくことで、お客さまの業務利用をより促進したいとい考える」(島澤取締役)。

 これを実現するために技術者養成拠点D.E.BASEを開設し、生成AIからリアルなものづくりまでを支援していく。「生成AI時代のエンジニアには、深い技術知見だけでなく、縦にも横にも広げていく必要がある」として、技術者育成を強化する考えを示した。

 ウイングアーク製品への生成AI対応としては、帳票基盤ソリューション「SVF」の生成AIによる自動生成を可能にするための開発を進めており、2025年以降に提供を予定している。企業の基幹システムのデジタル帳票の出力・保管・配信についてSVFとinvoiceAgentで実施し、発行したデジタル帳票については受け取った企業側もデジタル帳票としてデータ保存できる世界実現を目指していく。

 「お客さまは受発注における実際の作業として、デジタルからアナログへ変換し、さらにまたデジタル化してといった作業に多くの工数を使っているが、そこに生成AIを活用し、従来は人間がやってきた書類の認識、システムのつなぎ込みを自動化していくことで、業務が大幅に効率化できるのではないかと考えている。また、故障した機械部品の特定、品番特定といった作業も生成AIで効率化できるのではないかと考えている」(島澤取締役)。

 これを実現するために、SVF以外の製品についても生成AIを組み込む考えで、「invoiceAgent」は、生成AI連携により定型・非定型帳票のOCRが事前の読み取り位置設定不要で可能にするソリューションとして、2025年以降に提供開始される予定。また、生成AI連携によりグラフ・データからのインサイトを自動生成することを可能とする「MotionBoard」は、2024年12月にプレビュー版を提供開始予定となっている。

 このほか、自然言語からSQLクエリやPythonスクリプトを生成開発プロセスの効率化を実現し、開発者をアシストする「Dr.Sum」は、すでに2024年3月から提供している。

 さらに、AIプラットフォームとして機能強化した「dejiren」を11月から提供する。従来のdejirenはコミュニケーションプラットフォームだったが、新たなdejirenはLLMのインターフェイスとしての機能を提供する。OpenAI、Azure OpenAI、Google Vertex AI、Amazon Bedrockなどユーザーが選んだLLMを利用する際のインターフェイスとして利用し、定型・非定型帳票のOCR処理や、各種サービスとの連携を皮切りに、さまざまなSaaSとの連携を図りながら、OCR・画像・音声解析などデータ処理ごとに最適な生成AIモデルを組み込んだ機能を提供する。

 「企業の実態からすると、働いている方々はやるべき業務、利用するシステムを頭の中でマッピングし、その業務効率化については各個人に委ねられているケースが非常に多い。しかし、新しい人が入る、従来の担当者が移動するといったことが起こると、培われていたノウハウも継承されない。それに対し、dejirenはシステムやサービスを意識することなく、さまざまな情報を簡単に得ることができるというコンセプトで提供してきた。今回、この考え方をそのまま継承し、AIのプラットフォームとしての機能充実を進める」(dejiren 事業開発部 部長の大畠幸男氏)。

 新たなdejirenの主な機能は、1)生成AIにおけるマルチベンダー・マルチモデル連携を可能にするプラットフォーム、2)OCR・画像/音声解析などのデータ処理ごとに最適な生成AIモデル組込型の機能提供、3)「業務フロー」と「業務アプリ」一体型のノーコード環境の提供――という3点となっている。

 また、ラストワンマイルの現場DXを加速させるためにスマートフォンで使える「dejirenアプリ」を提供。日報作成、現場の活動記録、領収書・経費精算、不具合報告、勤怠入力など、アプリ一体型の業務フローをノーコードで作成することができる。

 さらに今後は、dejiren本体の機能だけでなく、生成AI利用環境も含めたライセンス提供することも予定しているとのこと。