FCNT arrows We2 / We2 Plus発表。タフで洗えて高コスパ「SIMフリースマホの存在に気づいていない方に」(石野純也)

AI要約

FCNTが久々の新モデル「arrows We2」と上位版「arrows We2 Plus」を発売。SIMフリー市場への参入も果たす。

arrowsシリーズはコストとバランスが優れており、耐久性や独自機能を提供する一方、コスパは他機種に及ばない側面もある。

ライバルとしてシャオミのRedmi Note 13 Pro+ 5Gが存在し、処理能力やコスパで競合。消費者の選択肢を広げる一方、独自性を打ち出している。

FCNT arrows We2 / We2 Plus発表。タフで洗えて高コスパ「SIMフリースマホの存在に気づいていない方に」(石野純也)

スマートフォンarrowsシリーズを手がけるFCNTは、久々の新モデルとなる「arrows We2」とその上位版「arrows We2 Plus」を8月に発売します。

トップの写真は、左がarrows We2、右がその上位版にあたるarrows We2 Plus。

arrows We2はドコモとKDDI(auとUQ mobile)が8月16日に発売します。

arrows We2 Plusはドコモが8月9日、楽天モバイルが10月15日に発売するほか、IIJmioがRAMを12GBに増量したモデルを8月14日に発売します。

 これらキャリア版に加え、FCNTは2機種をSIMフリー(オープンマーケット)にも展開します。FCNTがオープンマーケットにスマホを投入するのは、約5年ぶりのこと。

一時はSIMフリー版の投入を見送っていたほか、昨年は経営破綻やレノボグループへの事業継承もあり、ドコモから発売された「arrows N」以降、スマホそのものを発売できていませんでした。

(▲FCNTとして5年ぶりにSIMフリースマホを販売する)

 久々のSIMフリースマホ発売となったFCNTですが、その目的は「arrowsのブランドを広げていくため」(FCNT プロダクトビジネス本部 副本部長 外谷一磨氏)とのこと。

メーカー自身で販路を開拓していくことで、ブランドを定着させるのが狙いです。一方、日本ではキャリア市場が9割前後を占める大きさで、FCNTとしても「まだまだ市場はこれかだと認識している」(同)といいます。ここを開拓していくことで、ビジネスチャンスも見込めるというわけです。

(▲SIMフリー市場は、まだまだ開拓の余地があるとしたFCNTの外谷氏)

 とは言え、単純にキャリアモデルをオープンマーケットで販売するだけでは、微妙に異なるニーズを捉えることはできません。外谷氏も、「SIMフリー市場と大手キャリアではニーズが異なる」と考えているようです。

そのため、FCNTはオープンマーケットで端末を販売するにあたり、キャリア版とは「異なるSKUを用意した」(同)いいます。

(▲コスパのよさや日本市場に必要な要素を満たしつつ、SKUを変えることでキャリア市場とは異なるニーズにこたえるという)

 例えば、arrows We2に関しては、キャリア版のストレージが64GBなのに対し、SIMフリー版は128GBに倍増。いくらmicroSDカードに対応しているとは言え、OSのサイズも大きくなっているほか、内蔵メモリしか使えないアプリもあるため、64GBでは少々心もとないのも事実。

128GBでも大容量とまではいきませんが、写真や動画などをmicroSDカードに保存すれば、ひとまず安心して使える容量と言えそうです。

(▲arrows We2は、ストレージを128GBに増量)

 スペック強化版のarrows We2 Plusに関しては、冒頭で挙げたIIJmio版がSIMフリー版ならではのSKUと言えます。

同機はミドルハイの端末で、チップセットに「Snapdragon 7s Gen 2」を採用していますが、この処理能力を生かし、アプリを同時に複数動かすのであれば、やはりメモリは多い方がいいでしょう。

メモリ容量が12GBになっているIIJmio版は、その意味でハイエンド志向のユーザー向けに仕上がっています。

(▲arrows We2 Plusは、IIJ限定モデルのみメモリが12GBに増量されているうえに価格も通常版より安い)

 ただし、そのぶんSIMフリー版はやや価格もお高め。一例を挙げると、ドコモ版のarrows We2は本体価格が2万2000円で割引があれば1円で配れてしまいそうな安さなのに対し、ストレージが増えているSIMフリー版は3万6500円の価格をつけています。やや価格が高くても、きっちり端末を選んで使いたいオープンマーケットのユーザーに沿った対応と言えるでしょう。

(▲価格はキャリアモデルより高めの設定。ストレージ容量の大きさが影響したとみられる)

 逆にミッドハイのarrows We2 Plusはドコモ版が6万2150円なのに対し、SIMフリー版は5万9950円とやや安い価格で販売します。arrows We2 Plusはベースのスペックが同じため、この程度の価格差に収まったというわけです。

ただし、メモリを12GBに増量したIIJmio版が一括価格で5万4800円と、どこよりも安いのは謎が残るところ。

これについては、戦略的パートナーシップを結んだIIJが意図的に価格を引き下げている側面があるようです。

(▲arrows We2 Plusは、6万円を下回る価格を想定している)

 中国メーカーを中心に、コスパのいいスマホがひしめき合うSIMフリー市場ですが、先の外谷氏のコメントの通り、まだまだ市場規模が小さいのが実態。

「(SIMフリーがあることに)気づいていないという方も多くいらっしゃるので、そういうところにarrows We2シリーズでアプローチして全体を育てていきたい」というのがFCNTの方針と言えます。

 実際、arrows We2、We2 Plusともに、コストとのバランスがいい端末に仕上がっています。arrows We2は、チップセットにメディアテックの「Dimensity 7025」を採用。

これは、モトローラの業績を押し上げているmoto gシリーズの最新モデル「moto g64 5G」に搭載されているのと同じもの。ディスプレイの仕様やバッテリー容量ではmoto g64 5Gに及びませんが、逆にarrowsならではのMIL規格23項目準拠+耐コンクリート落下性能を備えているなど、頑丈さでは他社を大きく上回っています。

(▲高さ1.5mからのコンクリート落下にも耐える頑丈さや、ハンドソープで洗える防水性能などは、FCNTならでは。同価格帯のスマホにはない強烈な売りと言える)

 また、arrows We2 Plusは、先に述べたようにSnapdragon 7s Gen 2を搭載しており、比較的高いスペックながらも価格は6万円をギリギリ下回っています。

端末単体購入でもIIJmioから買った方がお得では……というのはさておき、価格帯としては「Snapdragon 7 Gen 3」を搭載したモトローラの「motorola edge 50 pro」より一回り下を狙った印象。チップセットの性能は及ばないものの、価格を抑えつつ耐久性を出し、差別化を図っています。

(▲上記の頑丈さに加え、arrows We2 Plusは自律神経測定機能も備えている)

 とは言え、同じSnapdragon 7s Gen 2を搭載するモデルには、シャオミの「Redmi Note 13 Pro 5G」という強力なライバルも存在します。こちらはau、UQ mobile版しかなく、厳密にはオープンマーケットで競合しているわけではありませんが、本体価格は4万円を下回っています。

 より価格の近いSIMフリー版の「Redmi Note 13 Pro+ 5G」はチップセットに「Dimensity 7200-Ultra」を採用。メインカメラは2億画素や120Wの急速充電に対応しているなど、同価格帯でのスペックは群を抜いている印象です。arrows We2 Plusも軍に納入できそうな高耐久性や独自の自律神経計測機能があるなど特徴はあるものの、SIMフリー市場で重視されるコスパでは一歩及んでいない印象も受けました。

(▲arrows We2 Plusと価格帯が近いシャオミのRedmi Note 13 Pro+ 5G。処理能力やカメラ性能だけを見ると、こちらの方がコスパはいい)

 もっとも、同価格帯で処理能力を中心としたコスパを重視するのか、耐久性や健康管理機能などの独自機能を重視するのかは、人によるところが大きいと言えるでしょう。

その意味で、arrows We2 Plusも、SIMフリー市場に新たな選択肢をもたらしていると言えそうです。レノボ傘下で調達力も上がり、攻めに転じている様子がうかがえます。日本では知名度も高いだけに、他の中国メーカーにとっても強力なライバルになるかもしれません。