欧州「FacebookとInstagramは違反」、二択を問題視

AI要約

欧州委は、米メタがDMAに違反しているとする予備的見解を発表。問題は二者択一のモデル。

メタはEU規制対応で有料サービス導入。行動ターゲティング広告の制限に対処。

欧州委は二者択一モデルに懸念表明。最終判断は25年3月末までに。

 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は2024年7月1日、米メタが巨大IT(情報技術)企業を規制する「デジタル市場法(DMA)」に違反しているとする予備的な見解を発表した。同社が23年に欧州向けサービスに導入した「同意か支払いか」の二者択一モデルを問題視した。

■ 欧州委「二者択一は同意の強要」

 欧州委は「メタの二者択一モデルは、利用者に個人データの広告利用に同意することを強制するものだ」と指摘している。

 マルグレーテ・ベステアー上級副委員長(競争政策担当)は、「我々の調査は競争市場を確保することを目的としている。メタはDMAを順守していないというのが予備的見解だ。市民が自身のデータをコントロールし、よりパーソナライズされていない広告体験を選択できるようにしたい」と述べた。

■ メタ、EU規制対応で有料サービス導入

 メタは23年11月、18歳以上の欧州ユーザーを対象に、「Facebook(フェイスブック)」と「Instagram(インスタグラム)」の広告なし有料サービスを始めた。

 サービスの利用履歴に基づく広告(行動ターゲティング広告)の配信を制限するEUの規制に対処するためだ。行動ターゲティング広告を配信する場合は、事前にユーザーの同意を得る必要がある。だが、そうすることで、多くのユーザーは同意しないとみられる。このことは、売上高の98%を広告収入が占める同社のビジネスを脅かすことになる。

 そこでメタは欧州の利用者に対し、FacebookとInstagramを、(1)同意して、広告付きで利用する「広告型」、(2)同意せず、広告なしで利用する「有料型」、の2つを用意した。

■ 「同意するか、支払うか」

 しかしこれについて欧州委は、「同意するか、支払うか」の二者択一のモデルには、「(同意したくない場合)現実的な代替手段がない」と指摘。「巨大IT企業による恣意(しい)的な個人データ収集を抑制するというDMAの目的を達成できない」と懸念を示していた。

 欧州委は今回、「DMAでは、(ユーザーが同意した場合)メタが広告のために個人データを使用することや、サブスクリプション(定額課金)サービスを提供することを禁じていない」としながらも、「同意に基づくサービスが無料で提供されている限り、同意しないユーザーに対しても無料で利用できるサービス(パーソナライズの度合いが低い)が提供されるべきだ」と指摘した。EU法では、特定のデータ利用への同意を拒否したユーザーにも、サービスにアクセスできるようにしなければならない。

 一方、メタは以前、スウェーデンのスポティファイ・テクノロジーなどの音楽配信サービスが、ユーザーに無料の広告付きサービスと、広告なしのサブスクサービスの選択肢を提供している例を挙げ、自社の有料サービスを擁護していた。

 欧州司法裁判所が23年7月に下した判決では、「SNS(交流サイト)企業は、特定のターゲティング広告を目的としたデータ使用を拒否したユーザーに対して、 “合理的な料金”を請求できる可能性がある」、という一節があった。メタはこの点を指摘。「これが、サブスクサービスへの道を開くものだ」と強調していた。

■ 最終判断は25年3月末までに

 欧州委の予備的見解は、メタがDMAに違反したと結論付けるものではない。メタには今後、反論や対応の機会が与えられる。欧州委は25年3月末までに調査を完了し、最終結論を出す。重大な違反があったと判断すれば、世界年間売上高の最大10%の制裁金を科す。違反が繰り返される場合、最大20%まで引き上げられる。

 米CNBCによると、メタの広報担当者は、「当社のサービスは欧州司法裁判所の指示に従ったもので、DMAを順守している。調査が早期に終了するよう、欧州委とのさらなる建設的な対話に期待している」と述べた。