潘めぐみ×限界トルガル“深すぎるFF愛”対談 ヴァリスゼアとエオルゼア、それぞれのリアルさと自己肯定の物語

AI要約

『FINAL FANTASY XIV(FF14)』のクロスオーバーイベント「炎影の旅路」について、声優・潘めぐみと限界トルガルの対談を通じて楽しみ方やエピソードを紹介。

潘めぐみはFF16関連でFF14を始め、MMORPGの魅力や刹那的な出会いに感動。限界トルガルはオンラインと現実との融合を評価。

クロスオーバーイベントの内容や感想についても言及し、FF14とFF16の関連性、プレイヤー間の交流を享受した経験を共有。

潘めぐみ×限界トルガル“深すぎるFF愛”対談 ヴァリスゼアとエオルゼア、それぞれのリアルさと自己肯定の物語

 スクウェア・エニックスが開発・運営するオンラインRPG『FINAL FANTASY XIV(FF14)』では、4月2日から5月8日まで『FINAL FANTASY XVI(FF16)』とのクロスオーバーイベント「炎影の旅路」が開催された。両タイトルを愛するファンにとっては、短いながらも充実感のあるイベントとなっていた。

 そんななか、『FINAL FANTASY XVI(FF16)』でジル・ワーリック役を務め、『FF14』のファンフェスティバルにもゲストとして出演した声優・潘めぐみと、『FF16』に関するnoteが話題を呼び、『FF14』での出来事も日々発信している限界トルガルによる対談が実現。ふたつのタイトルへの愛を存分に語ってもらった。(片村光博)

■ふとした瞬間の“刹那的な出会い”に感じる『FF14』の魅力

――まず、潘さんに『FF14』を始められたきっかけからうかがえればと思います。

潘めぐみ:きっかけは『FF16』に関わり、そのなかで第三開発事業本部のみなさんの人間性に触れて、「この人たちはほかにどんなゲームを作っているんだろう」と思ったことです。『FF14』自体は知っていましたが、実際どんなゲームなのかを知りたくて始めました。

 『FF16』発売直前に生放送があったんですが、そのときにコラボドリンクを飲み回していたり、皆さんでカレーを食べていたりするところを見て、ノックアウト(笑)。「あゝ好き!」ってなってしまったんです。それから、2~3時間の予定とされていた配信を、実際は4時間以上にもわたって……。すべてがユーザーのためなんです。

 しかも、体験版からのフィードバックへの回答についても、すべてを丁寧に説明してくださって……。そのなかで草木の生え方にもこだわっているというお話も聞けて、ゲーム作りにこんなに愛情を持っている方々に出会えて幸せだなって思いました。

――おふたりとも、それぞれの『FF14』の楽しみ方があると思います。「こんな楽しみ方がおもしろい」と特に感じている部分があれば教えてください。

潘めぐみ:私は『FF14』が初めてのMMORPGなんです。キャラクターを作って、グリダニアからスタートしたんですが、Xでスペースを開いていたこともあってか、本当にすごくたくさんの人が街に来てくださっていたんです。「同じ時間、同じタイミングに、こんなにこのゲームを、世界中の人が楽しんでいるんだ」と感動してしまって、そこから一気に魅了されちゃいました。

限界トルガル:実は、潘さんのパーティ募集を見かけたことがある気がするんです。正確には松澤千晶さん(松澤ネキ)が、クリスタルタワーにいく募集を朝の4時くらいに立てていて……。

潘めぐみ:それ、たぶん私です(笑)。メインストーリーを進めていて、クリスタルタワー(24人で攻略するコンテンツ)に行こうとしたらもう朝だったんですが、ネキと「ちょっとやりたいね」と話していたんです。試しに朝の4時からパーティ募集をしたら、12人ほど集まってくれて、各国でシャウト(※)してくれたりもしていたんですが、結局24人は集まらなくて。でも残念だった一方で、見知らぬ人のためにここまでしてくださる人たちは本当に素敵だと思いましたし、後日再チャレンジしたときに、募集のことを覚えていて、もう一度来てくださった方もいたんですよ。その優しさに感動しました。

※…エリア内のキャラクター全員に聞こえるチャット形式。

限界トルガル:私もRPGはひとりでやるものという意識が強かったので、『FF14』もひとりでプレイしていたんですが、最初に入ったFC(フリーカンパニー/同じワールドの冒険者同士で結成できるグループ)のマスターだった方がゲーム内でバーを運営していたんです。そこのマスターに「いろんなバーに遊びに行こう」と誘われて、行ってみたら本当にゲームに出てくる酒場みたいにいろいろな人がいろいろな話をしていて……。それまで、『FF14』はMMORPGのなかでもバトルに特化していて、あとはハウジングが有名なイメージだったんですが、いろいろな楽しみ方、人との関わり方があるんだなと知りました。

 個人的な意見ですが、MMORPGの刹那的な出会いがとても好きなんです。もちろん同じ人と何度も遊ぶことも楽しいんですが、「2度と会えないかもしれない」という関係性にエモさを感じるというか。バーにもそういう関係性を感じたのかもしれません。

潘めぐみ:MMORPGが初めてだったこともあって、最初は私もフレンドさん以外とコンテンツに行くことを億劫に感じていたんです。タイピングも遅いし、コミュニケーションしようとしてボタンを押し間違えちゃったりしますし……。それでもやっぱり、刹那的な交流の魅力は大きくて、それに気付いてからは断然、初めて会った人たちともどんどんコンテンツに行くようになりました。

限界トルガル:現実で言えば街で困っていたら声をかけて助けてくれて、「じゃあね」と別れるくらいの関係性ですよね。すごくうれしいし、ありがたいけど、もう2度と会わないだろうな――でも、お互い元気でいられたらいいな、くらいの気持ちで遊んでいます。普段から遊んでいるフレンドさんとの関わりが薄くなってしまいがちで、難しいところでもあるんですが。

潘めぐみ:ログインのタイミングもありますしね。そのフレンドさんもまた違うコンテンツに行っていたりとか。

限界トルガル:そうなんですよね。だからあまり重く考えず、ログインしたときにいたら遊ぼう、くらいの感覚です。気兼ねなく遊べていますし、吉田(直樹)Pがよく言っているように、ほかのゲームに行って遊び尽くしてから、エオルゼアに戻ってくる……みたいなこともしています。忙しい人ほどそういう傾向は強いんじゃないかな。ストーリーがおもしろくて、気になって戻ってきちゃうということもあります。

潘めぐみ:気になっちゃいます! 私が『FF14』を始めたことで、お休みしていたヒカセン(光の戦士=FF14プレイヤー)さんたちが再開してくださることもありました。一緒にメインストーリーを進めていたんですが、その方はもう『暁月のフィナーレ』まで終わっちゃって。本当に、やり始めたら止まらないんですよね。

――いろいろなプレイヤーの方がいて、いろいろな楽しみ方がある『FF14』ですが、そのなかで築かれている“文化”を感じた印象的なエピソードなどはありますか?

潘めぐみ:私はよくフレンドさんと一緒にミラプリ(※)で楽しんでいるんですが、スクリーンショットを撮って遊んでいたところ、こちらをじっと見ている方がいたんです。「なんだろう?」と思っていたら、英語で「私もその装備欲しいな」みたいに話しかけてきてくれて。そのとき一緒に遊んでいた中に英語のできる方もいたので、チャットで会話ができたんです。話しかけてくれた方は当時まだ『新生エオルゼア』のストーリー中で、私たちとはレベル差もあったんですけど、せっかくの機会だったので、初めて見知らぬ人にフレンド申請を送ってみたんです!

 そうしたら、その後にストーリー進行中の姿を見かけることが多くて、なんだか愛おしくなってしまいました。でも、気付いたらストーリーもレベルも、なにもかも追い越されちゃって(笑)。日本のサーバーにキャラクターを作っている海外の方も、結構いらっしゃるんですね。

※…ミラージュプリズム。装備品に別の外見を投影し、おしゃれを楽しめるシステム。

限界トルガル:先ほどもバーの話はしたんですが、バー巡りをしているなかで仲良くなるという経験もありました。バーにも独特の文化があって、マスターはYell、お客さんはSayで話すとか。それに、たとえばお通しをくれるバーがあったり、本当にちゃんとしたバーやカフェがあるんですよね。ほかにプレイヤーが営業しているお店だと、マネキンショップといって、ミラプリの組み合わせをマネキンに投影して「こんな組み合わせはどうですか」と見せてくれる、そしてそのまま売ってくれるお店があるんです。去年のハロウィンのとき、自分にはハロウィンっぽいミラプリをするセンスがないので、服を買いに行きました(笑)。

潘めぐみ:行ってみたい! 今度探してみます。でも、うれしいですよね。センスのいいコーディネートがそこにあって、リアルの服屋さんみたいに買えるなんて。

限界トルガル:誰かがそういったことを最初にやろうとして、まねする人もいて、そこからちゃんと機能するようになっていくのはすごくおもしろいですよね。あと、吟遊詩人は楽器演奏ができますが、潘さんは演奏会に行ったことってありますか?

潘めぐみ:ちょうど見かけたことがあります。ウルダハで演奏している方々に遭遇したんですが、演奏を聞いている人たちがたくさんいて。そこで冒険を彩る音楽を嗜む……。素敵ですよね。

限界トルガル:最初、ちょっと楽器を弾くのに憧れて、ウルダハの夜の曲(『夢見る女王陛下』)を街の中で練習していたことがあって。気付いたら、2人ほどオーディエンスの方がいてくださって、終わったら拍手をしてからトレード機能でチップを渡してくれたんです。でも、その方々はすぐいなくなってしまい、「せめてお名前を!」という感じでした。

潘めぐみ:演奏を含めたイベントなどを通じて、プレイヤーのみなさんが聖地を作っていくという流れがありますよね。先日も「#桃染めエオルゼア」というハッシュタグを見てみたら、みなさんがピンク色のミラプリをして春を楽しんでいました。

 プレイヤー主導のイベントは本当にすごいと思います。こんなに人のために尽くしてくれるMMOがあるんだ、って。それぞれのプレイヤーが独自に進めていくものだと思っていたんですけど、こんなに交流があるなんて。知らない世界でした。

限界トルガル:ゲーム内でいろいろと開催してくれる方々も、現実でやりたくてもできなかったことを反映していることもあるのかもしれないですね。多くの場合、本人も楽しそうですから。

潘めぐみ:『FF14』では、なりたい自分になれますからね。素敵です。

■優しさと思いやりを贈り合うエオルゼアの世界

――おふたりともいろいろな体験をしてきたと思いますが、エオルゼアで最も衝撃を受けた出来事や、「この世界っていいな」と思ったきっかけはありますか?

潘めぐみ:一番感動したのは、最初にログインしたときかもしれません。同時にXでスペースを開いていたということもあるとは思いますが、同じ時間、同じ場所に、こんなにたくさんの人が冒険しているんだって。エモートを飛ばしてくれたり、「おめでとう」って言ってくれたり……。朝4時の出来事だったんですけどね。「こんなに来てくれたんだ」とすごくうれしくなりました。

 若葉さん(※)に優しくあれという“教え”がありますけど、本当にみなさん優しいんです。結果として自分たちが得をするということももちろんあるんでしょうけど、それだけじゃ理由にならないというか……。無償のものを感じるんです。私はバトルが不慣れで、いまもまだ不得意なこともあり、助けてくれる人たちの存在は本当にありがたくて。そうした人たちもきっと誰かに助けてもらって、同じことをほかの誰かにしてあげているんだと思います。助けてくれた人に直接お返しするだけじゃなくて、その優しさをほかの若葉さんに渡してあげる。この思いやりの渡し合いがすごく尊いし、とても感動しています。

※…『FF14』を始めたてのプレイヤーにはビギナーステータスが付与され、名前の横に若葉マークが表示されることから、初心者のことを若葉と呼ぶ慣習がある。

限界トルガル:私の場合は、もともと『FF14』に誘ってくださった方がメンターさん(※)だったんです。「メンター」という言葉は、現実の企業では「新入社員の育成担当」として付くケースでわりと聞きますよね。でも、ゲーム内のベテランプレイヤーが自ら名乗り出てメンターを務めてくれて、高難易度のバトルにマッチングすれば説明する側になって難しいこともあるなかで、可能な限り初心者の助けになろうと努力してくれている。そうした善意で成り立っている世界というのが、信じられなかったんです。

※…初心者や復帰者へのサポートを行う存在で、システム的にメンターとして認められると、名前の横にメンターのマークが表示される。

潘めぐみ:たしかに、無償ですからね。そこになにかが発生するわけじゃないからこそ、すごいと思います。

限界トルガル:そんなシステムを知って思ったのは、『FF14』がゲームだけどすごく現実的なところがあって、助け合いを重要だと思っているからこそ、成り立っているんだろうなと。それこそがすごいことなんだと思いました。

潘めぐみ:オンラインの世界なのに、現実のようなやり取りがありますよね。1月には『FF14』10周年のファンフェスティバルに初めて行かせていただいたんですが、リアルで会うのは初めてな人たちや、久しぶりに会ったら互いに家族ができて、それぞれが紹介し合っているヒカセンたちを見て「なんて尊いんだろう」と思ったんです。オンラインはもちろん、オフラインでも同じようなやり取りが続いているというのは、すごく素敵ですよね。

限界トルガル:リアルとゲームがこれまでにないくらい本当にうまく融合していて、そのふたつにあまり差がないように思えるのが『FF14』だと思います。だから、すごくハマる人はどっぷりハマるのかなと。

潘めぐみ:本当の現実より、現実のように感じるんだと思います。

限界トルガル:そういう雰囲気をすごく感じますね。でも、そうである一方、自分みたいにソロで遊ぶ人でも楽しめる。コンテンツが充実しているから、気分によって変えられるというのはすごいことだと思います。ひとりで遊びたいときって、誰にでもあるはずですから。

――話は尽きないですが、4月2日には『FF14』内で『FF16』とのクロスオーバーイベント「炎影の旅路」が始まりました。こちらの感想もぜひ伺えればと思います。

潘めぐみ:「本当にクライヴが来た!」って(笑)。グラフィックもすごくきれいで、トルガルも気合が入っていました。

限界トルガル:すごかったですよね。あれは『FF14』と『FF16』に“癒着”を感じました(笑)。

潘めぐみ:クオリティがすごすぎました。イフリートの毛並みもですし、バトルも「こうやって戦うんだ!」と、ヴァリスゼアでの旅の記憶を想起できて楽しかったです。

限界トルガル:プレシジョンドッジ、おもしろかったですよね。『FF16』が大好きなので、第三者の視点からクライヴにかけたかった言葉を、選択肢として選んで言うことができたんです。クロスオーバーイベントではありますが、いろいろと気持ちが浄化されたといいますか……。フリーカンパニーで運営しているバーにも『FF14』と『FF16』を愛する人たちが集まってくれて、“MMORPGをプレイしている感”がありました。

潘めぐみ:ご自身のかけたかった言葉というお話がありましたが、私は「ジルだったらこう言うだろうな」という選択肢を選んでいました。本当は強く背中を押したい気持ちでも、クライヴの意思を尊重する選択肢で遊ばせてもらいましたね。

 個人的には、世界が違ってもクライヴを見つけられたことがうれしかったです。でも、最初にクライヴを言葉どおり「見つける」ところが難しかったんですよ(笑)。「異変」(※)と言われても、異変もなにも……。遠くを探したり、真下を探したりもしたんですけど、クライヴそのものが「異変」だったなんて(笑)。あれは探すのに時間がかかりました。

※…画面上から「異変」としてクライヴ・ロズフィールドを探すイベントがあったが、クライヴの服装が暗めの色で統一されていたため、背景に溶け込んで発見の遅れるプレイヤーが続出した。

限界トルガル:これは多くのプレイヤーの総意なんじゃないでしょうか(笑)。そういえば、クライヴがヴァリスゼアに帰る直前に話しかけると、ジルの名前を出すんですよ。

潘めぐみ:え! すぐ帰らせちゃいました。えー!

限界トルガル:リプレイ機能では見られないんですが、クライヴが「ジル、待っててくれ」という内容のことを言うんですよ。たぶん、そこでしか言わないんですよね。

潘めぐみ:まだジョシュアにちゃんと再会できていない段階のクライヴかなと思ったので、ジルは出てこないとも思っていたんです。でも、そっかぁ……。またやりたい! 期間中何度でもチャレンジできるようにしてほしいですね。

限界トルガル:クライヴは『FF16』のフェニックスゲートのイベントと同じセリフも言っていましたね。

潘めぐみ:ありましたね! ストーリー本編とのつながりも感じることができました。

限界トルガル:クライヴが『FF16』で立ち直る要因として、光の戦士も関与できていたんだとしたら、すごくうれしいです。

潘めぐみ:手助けできていたらいいな。本当にいいクロスオーバーイベントでした。