「千と千尋」ロンドンで満員&満点 ロングラン公演中「号泣した。魔法のようでした」と絶賛の声

AI要約

ロンドンで上演中の「千と千尋の神隠し」舞台化が大成功を収めている。初演から4カ月の長丁場公演で、高い評価を受けている。

日本発の舞台作品がロンドンで成功を収める中、今年は野田秀樹氏や戸田恵子氏の作品も海外公演される予定。

「千と千尋」以外にも、様々なジャンルの舞台作品が海外で上演されることで、日本の演劇文化が世界に広まっている。

「千と千尋」ロンドンで満員&満点 ロングラン公演中「号泣した。魔法のようでした」と絶賛の声

<情報最前線:エンタメ 舞台>

 宮崎駿監督のアニメ映画を舞台化した「千と千尋の神隠し」が、ロンドンで上演中です。日本発の舞台のロンドン公演は過去にもありましたが、今回は5月7日に初日を迎え、8月24日まで4カ月公演という異例の長丁場です。「千と千尋」ロンドン公演の人気ぶりとともに、今年予定されている海外公演を紹介します。【林尚之】

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 ★5つ星評価

 2300人収容の大劇場コロシアムで迎えた7日初日のカーテンコール。満員の観客は大きな拍手、歓声、指笛などスタンディングオベーションで「千と千尋の神隠し」ロンドン上陸を歓迎した。終演後、観客からは「号泣した。魔法のようでした」「人生で初めて見た世界。日本の文化のエッセンスを感じた」などと絶賛の声が相次いだ。

 8日以降に掲載された各メディアの劇評でも好評だった。オンライン新聞の「インデペンデント」は満点の5つ星で、辛口評が多い高級紙の「ザ・タイムズ」「ガーディアン」でも4つ星を獲得。「インデペンデント」は「千尋とハクのラブストーリーは繊細で心温まる。ハクが千尋におにぎりを差し出すシーンは切ない優しさに満ちていた」と称賛し、「ガーディアン」も「観客を魅了し、視覚的にも野心的でスペクタクルな舞台として再創造された」と高く評価した。

 これまでも日本発の舞台はロンドンで上演されてきた。劇団四季のミュージカル「ジーザス・クライスト=スーパースター」ジャポネスク・バージョン、蜷川幸雄さん演出の「NINAGAWA十二夜」「リア王」「海辺のカフカ」、海老蔵時代の市川團十郎の歌舞伎公演などだが、その大半は短期公演だった。

 今回は英国の演劇製作会社との共同製作で、当初から3カ月公演という長期公演を予定し、前売りの売れ行きが好調だったことからさらに5週間も延長した。チケット代は高い席で225ポンド、安い席でも92ポンド、1ポンド=197円のレートから換算すると、1万8000円から4万円を超える高額にもかかわらず、ジブリファンの若者から高齢者、家族連れまで幅広い層に売れているという。

 昨年夏にロンドン公演が発表され、その年のクリスマスに合わせて宣伝活動を活発化した。ロンドン名物の2階建てバスに「千と千尋」のラッピングが施され、劇場周辺の地下鉄の駅構内にはポスターや看板が張り巡らされた。

 ★欧州各国も関心

 「千と千尋」は22年に帝国劇場で初演され、大阪、福岡、札幌、名古屋で上演された。今年は3月に帝劇で上演された後、名古屋・御園座、博多座をへて、現在は大阪・梅田芸術劇場で上演されている。日本と英国の同時上演となり、ヒロインの千尋役も初演からの橋本環奈、上白石萌音に加えて川栄李奈、福地桃子が新しく加入し、4人体制で臨んでいる。

 コロシアムは帝劇に比べて舞台が狭いため、コロシアム用の舞台装置が作られた。出演者も4月中旬にロンドン入りし、2週間ほどの舞台稽古をへて、4月30日からプレビュー公演を行った。初日から5月11日までは橋本と上白石の2人だったが、上白石が博多座出演のため一時帰国。橋本は12日から29日まで1人で演じた。その後、福地がロンドン入りして橋本と交代。6月11日からは上白石がロンドンに戻り、7月には川栄が福地と交代して出演する。

 初日から3週間が過ぎ、チケットが完売する日も続出。「英国のタモリ」的な存在の大御所タレントのグラム・ノートンや、湯婆婆役の夏木マリの親友池畑慎之介も観劇に訪れている。ロンドン公演限定のグッズも発売されるなど、グッズ売り場には人だかりもできているという。最終的な観客動員は30万人を見込んでいる。

 22年にはロイヤル・シェークスピア・カンパニーの製作によりジブリ作品の「となりのトトロ」がロンドンで上演され、英国で最も権威のある演劇賞のローレンス・オリヴィエ賞で最優秀演出賞など6冠を獲得した。早くも「千と千尋」にもオリヴィエ賞の期待がかかっている。さらには欧州各国の劇場・演劇関係者も観劇し、強い関心を示しているという。「千と千尋」の快進撃は続きそうだ。

 ◆「千と千尋の神隠し」 10歳の少女千尋が、神々の世界に迷い込んで豚に姿を変えられた両親を救うために懸命に働き、生きる姿を描いた作品で、2001年(平13)に映画公開され、1年以上のロングランで興収300億円超え。米アカデミー賞で長編アニメーション映画部門賞受賞。22年に英国人演出家ジョン・ケアードの翻案・演出で舞台化され、その舞台成果で「菊田一夫演劇大賞」を受賞。

 ■アンダースタディ 待機の「代役」長丁場で出番

 ○…ロンドン公演は8月24日の千秋楽まで135公演という長丁場となるため、日本ではなかなか出番がなかった「アンダースタディ」が出演する機会も出てきた。アンダースタディとは、本役の人が病気やけがなどのアクシデントで出られなくなった時に備えて待機する代役で、ロンドンでは千尋役のアンダースタディの森莉那が初出演する。4月中旬にロンドン入りしていたが、初めて登場するのは6月12日の公演。以降、全9公演で千尋を演じる。そのほかハク役の新井海人、カオナシ役の澤村亮、湯婆婆役の桜雪陽子らも出演。メインの役で135公演皆勤するのは、千尋の父役・大澄賢也の1人だけという。

 ■今年の海外公演 野田秀樹氏新作、戸田恵子記念作

 ◆ロンドン 野田秀樹氏が作・演出のNODA・MAPの新作「正三角関係」が10月31日~11月2日までロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で上演。ドストエフスキーの長編小説「カラマーゾフの兄弟」をモチーフにした、日本の花火師一家の物語で、花火師の長男に松本潤、物理学者の次男に永山瑛太、聖職者の三男に長澤まさみが出演。7月11日に東京芸術劇場で幕を開け、北九州、大阪公演をへて、ロンドン入りする。

 ◆ニューヨーク 6月25~27日まで、戸田恵子の一人舞台「幸せのかけら~もうひとりのジュディ」がニューヨークのカーネギーホール内にある小ホールで上演。18年に戸田の生誕60周年記念作として三谷幸喜氏が作・演出した舞台で、映画「オズの魔法使」で知られる女優ジュディ・ガーランドの代役兼付き人の目を通してジュディの数奇な運命が歌い、語られる。東京・博品館劇場(5月31日~6月6日)で上演。

 ◆ソウル&ロンドン 22年に日生劇場で初演のミュージカル「四月は君の嘘」が6月はソウル、夏にロンドンで上演。製作の東宝が現地のプロダクションに上演権をライセンスするもので、ソウルは韓国語プロダクション、ロンドンは英国プロダクションによる上演。