歌舞伎の名門初の〝2人菊五郎時代へ 52年ぶりに新・菊五郎が誕生 2025年5月に八代目襲名 七代目は襲名せず〝現状維持〟

AI要約

尾上菊之助が2025年に八代目尾上菊五郎を襲名することが発表され、長男の尾上丑之助も六代目尾上菊之助を襲名する。菊五郎が襲名の理由や経緯、二人の決意について述べられている。

菊五郎は自身の名を変えずに歌舞伎界を去りたいと思い、これを受けた菊之助は父の思いを受けて新たな菊五郎となることを決意。二人がそれぞれの使命と覚悟を述べている。

2022年には市川團十郎が誕生し、八代目菊五郎の襲名で新たな時代が始まる。新しい菊五郎となる二人はこれからの歌舞伎舞台に期待を寄せている。

歌舞伎の名門初の〝2人菊五郎時代へ 52年ぶりに新・菊五郎が誕生 2025年5月に八代目襲名 七代目は襲名せず〝現状維持〟

 松竹は27日、歌舞伎俳優の尾上菊之助(46)が2025年5月に八代目尾上菊五郎を襲名すると発表した。歌舞伎界の名門・音羽屋で新しい菊五郎が誕生するのは52年ぶり。同時に長男の尾上丑之助(10)も六代目尾上菊之助を襲名する。菊之助の父で当代の尾上菊五郎(81)は襲名せず、そのまま七代目を名乗る。江戸時代から300年近く続く大名跡で初の〝2人菊五郎時代〟が幕を開ける。

 菊五郎が菊之助に八代目菊五郎を襲名させようと決断したのは2年前。「脊椎の病気で舞台を休み休みになり、菊五郎という名前はいつも元気で働いていなくてはいけない。この際、せがれに継いでもらおうという気になった」と明かした。昨年4月ごろに自宅の居間で菊之助に「おまえ、継げよ!」と淡々と言い渡し、同時に自身は七代目菊五郎のままでいくことも伝えたという。

 異例の決断について菊五郎は「52年間名乗らせていただいた名前を今さら変える気はなくて、七代目菊五郎のまま歌舞伎人生の幕を閉じたい」と説明。「52年使わせていただいて、だんだん自分のものになってきちゃった。全然違う名前になってあと何年、芸能生活が送れるんでしょうか。皆さまが認知する前に幕を閉じなきゃいけなくなっちゃう。他の名前を継ぐことは考えませんでした。襲名は非常にパワーがいるが体力がない。私が何か名前を考えてしまうと他の方にも迷惑をかける。菊五郎のままでいようと思った」と胸中を語った。

 菊之助も「歌舞伎界ではなかったことで、どう受け止めればいいのか最初は戸惑いましたけど、菊五郎以上の名前は音羽屋にはありません」と断言。「父が健在な限りはずっと菊之助を名乗っていこうと思っていた。でも父が『八代目』と言ってくれたのでその言葉に従う。菊五郎の名を絶やさない父の思いが強かったと思う。当主の重い決断。その思いを家族や一門で支えていく」と理解を求めた。

 松竹の迫本淳一会長も「松竹としてもちょっとびっくりはしましたけど、芸の継承や切磋琢磨(せっさたくま)で喜んでいただけたらいいな」とサポートしていく姿勢を強調した。

 八代目を継承する菊之助に対し、菊五郎は「私のできなかった時代物、世話物、所作、新作と、どんどん挑戦して菊五郎の名前をもっともっと大きくしてもらいたい」と注文。菊之助は「歴代の菊五郎に劣らぬ役者となれるよう一生懸命に精進してまいる所存。全力で八代目をまっとうしたい」と気を引き締めた。

 2022年に十三代目市川團十郎(46)が誕生し、八代目菊五郎の襲名で「令和の團菊時代」が本格的な幕開けを迎える。菊之助は「十三代目團十郎さんと八代目になる私とで何とかスクラムを組んでやっていきたい」と歌舞伎復活へ意気込んだ。

 新・菊之助となる丑之助は「もうちょっと丑之助のままでいたいと思ったが、祖父の思いを受け継ぐと心に決めた。祖父・菊五郎、祖父・(中村)吉右衛門みたいな役者になりたい」と頼もしい口調で宣言した。

 ◆尾上菊五郎(おのえ・きくごろう) 1942年10月2日生まれ、東京都出身。本名・寺嶋秀幸。七代目尾上梅幸の長男。48年4月の新橋演舞場「助六曲輪菊」の禿で五代目尾上丑之助を名乗り初舞台。65年5月の歌舞伎座「寿曽我対面」の十郎ほかで四代目尾上菊之助を襲名。六代目市川新之助(現・市川團十郎の父)、初代尾上辰之助(現・尾上松緑の父)と共に「昭和の三之助」として活躍。66年にNHK大河ドラマ「源義経」で主演、共演した女優の富司純子と72年に結婚。女優の寺島しのぶは長女、五代目尾上菊之助は長男。73年10・11月の歌舞伎座「弁天娘女男白浪」の弁天小僧菊之助ほかで七代目尾上菊五郎を襲名。文化勲章や人間国宝など受賞歴多数。日本俳優協会理事長。

 ◆尾上菊之助(おのえ・きくのすけ) 1977年8月1日生まれ、東京都出身。本名・寺嶋和康。尾上菊五郎の長男。84年2月の歌舞伎座「絵本牛若丸」の牛若丸で六代目尾上丑之助を名乗り初舞台。96年5月の歌舞伎座「弁天娘女男白浪」の弁天小僧ほかで五代目尾上菊之助を襲名。現・市川團十郎、現・尾上松緑と共に「平成の三之助」として歌舞伎人気を盛り上げる。「マハーバーラタ戦記」「風の谷のナウシカ」「ファイナルファンタジーX」などの新作歌舞伎も手がける。13年に二代目中村吉右衛門の四女・瓔子さんと結婚。尾上丑之助は長男。

 ◆尾上丑之助(おのえ・うしのすけ) 2013年11月28日生まれ、東京都出身。本名・寺嶋和史。尾上菊之助の長男。19年5月の歌舞伎座「絵本牛若丸」の源牛若丸で七代目尾上丑之助を名乗り初舞台。