大作ぞろいで大混戦、巨匠の話題作は賛否両論…カンヌ映画祭・パルムドールに輝くのは?

AI要約

第77回カンヌ国際映画祭の授賞式と会期終了の報告。コンペティション部門での混戦やパルムドールの期待作、短編アニメーションの紹介。

有力作品として仏のコラリー・ファルジャ監督のホラー「ザ・サブスタンス」や米のショーン・ベイカー監督のドラマ「アノラ」を挙げる。また、ジャック・オディアール監督のスリラー「エミリア・ペレス」も注目。

一方、フランシス・フォード・コッポラ監督の「メガロポリス」は評価が分かれており、その行方が注目されている。

 第77回カンヌ国際映画祭は25日夜(現地時間)に授賞式が開かれ、12日間に及ぶ会期の閉幕を迎えます。コンペティション部門は今年も大混戦。最高賞パルムドールの行方を展望していきます。また、独立部門「監督週間」で23日(同)に上映された、山村浩二監督の短編アニメーション「とても短い」の情報もお伝えします。(文化部 松田拓也)

 記者がパルムドール最有力ではないかと思うのは、仏のコラリー・ファルジャ監督のホラー「ザ・サブスタンス」です。主人公はデミ・ムーアさん演じる芸能人の女性。老いゆく自分が嫌になり、若く美しいもう一人の自分を生み出す製品を使います。しかし、1週間ごとに元の自分に戻らなければならないルールがあって――という物語。ここでは書けないような刺激的な場面が連続するだけでなく、ルッキズムや過剰な美意識への皮肉も込められた驚きの一本でした。

 次点に推したいのは、ニューヨークを舞台とする米のショーン・ベイカー監督のドラマ「アノラ」です。セックスワーカーの女性がロシアの大富豪の息子と出会い、結婚します。仕事も辞め、華やかな生活が待っているかと思いきや……。相手の両親が結婚を解消させようと動きだし、迎えることになる修羅場がすさまじく、試写会場は爆笑に次ぐ爆笑。楽しませるだけでなく、富と搾取や職業差別についても考えさせる、見事な出来栄えでした。

 仏の映画雑誌「ル・フィルム・フランセ」の星取表で23日現在、15人の批評家のうち最多の5人が満点を付ける仏のジャック・オディアール監督のスリラー「エミリア・ペレス」も有力候補です。性別適合手術を受けて別名の女性に生まれ変わったメキシコの麻薬カルテルの元リーダーと、手を貸す弁護士。2人の行く末を描いたミュージカル映画で、目にも耳にも楽しく、見る側の予想も次々と裏切ってくれる快作でした。

 一方、開幕前から話題だった米のフランシス・フォード・コッポラ監督の「メガロポリス」は、批評家の賛否が真っ二つに分かれています。退廃した現代の大都市「ニューローマ」を、天才建築家が「人々が夢を見られる」未来都市に造りかえようと奮闘する姿を描いたSF大作。英BBCが「支離滅裂で恐ろしいほど安っぽい」とこき下ろした一方で、米ウェブサイト「IndieWire」は「彼の数ある試みの中でも最も大胆で素直な作品」と絶賛しています。果たして、どう転ぶでしょうか。