マギー司郎『お笑いスター誕生!!』を経て訪れた変化と戒めのために持ち歩く1枚の写真「25歳、かっこつけていた時期です。気持ち悪いでしょう」

AI要約

マギー司郎さんが若い頃の写真を持ち歩く理由とは。

テレビ番組出演をきっかけに自分をそのまま出すことの大切さを気付く。

自身のダメなところも表現することで、新たなスタイルに変化していく。

マギー司郎『お笑いスター誕生!!』を経て訪れた変化と戒めのために持ち歩く1枚の写真「25歳、かっこつけていた時期です。気持ち悪いでしょう」

 よこじまのハンカチをたてじまにーーでお馴染みの手品師・マギー司郎さん。ゆったりとした茨城なまりのしゃべりで振りまく愛嬌が心地よい78歳は、現在も現役真っ只中で舞台に立ち、よこじまをたてじまに変えている。もうすぐ60年目に突入する芸歴の中に、一体どんなTHE CHANGEがあるのだろうか。【第5回/全5回】

「見てよこれ、気持ち悪いでしょう」

 手品師のマギー司郎さん(78)が、テーブルの中央に1枚の写真を置く。往年のジュリーのように、ツヤのあるセミロングヘアを7:3に分け、ダンディな口ひげを生やした男性が写っている。

「これ、25歳くらいのとき。かっこつけてた時期もあったんでね。この写真、ほんとうにイヤだもん。だから戒めのために持ち歩いているんです」

ーー戒めのために……!?

「そうそう。キャラクターが全然違うでしょ。作りこんじゃって、中身なんか空っぽですよ。この時代の僕はなんにもないからね。自分がダメなときに限って、作りすぎるんだと思います」

 当時、ストリップ劇場での下積み時代。1日4~6ステージ、手品目当てではないお客の前に立ち、辛酸を舐めていた時期だ。

「温泉地のストリップ劇場でやるときはね、お姉さんたちが温泉旅館の宴会場に呼ばれて、出張に行くこともあったんですよ。そうするとお姉さんが自分の出演時間になっても戻ってこないこともあって、僕がお客さんの間を繋がなきゃいけないんですね。お客さんは踊り子さんに早く出てほしいから、僕は自分が嫌われているのがわかるんですよ。50人くらいの無言の"ひっこめ”という圧が、いちばんきつかったですね。お客さんの気持ち、全部わかってますのでね」

 そんな時代の、ご本人が恥じらうダンディマジシャンスタイルから、現在のスタイルにCHANGEしたきっかけがあった。それは、下積みを脱した瞬間でもあった。

「34歳のとき、1980年に『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)という番組に出たんですよ。テレビってどういうものか知らないまま出ていって、今思えば無防備な状態でなにかやったんでしょうね。それが、お客さんが想像する手品師とはまったくちがっていたからかわかりませんが、僕がなにもやらないうちからみんな笑っているんですよ」

 あまりにもクスクス笑いが止まず、マギーさんは「うしろで誰かがなにかをやっているのか?」と思わず振り返って確認したほどだった。

「そのときに気づいたんです。自分をそのまま出したほうがいいのかもしれないな、と。それから、人間っていいところなんてそんなにたくさんないし、自分のダメなところを、汚く表現したらよくないかもしれないけど、"そうではない方法でダメなところも表現したらいいんじゃないか?”ということとか、“頭がよくて安定している友達と一緒にいると、なんか疲れるんだよなあ”とか、そういうことにちょこちょこ気づいた時期でしたね」

有山千春