TOMORROW X TOGETHER、RIIZE、aespa、Stray Kids……“日本語曲×アニメーションMV”の話題作が増えた背景

AI要約

「きっとずっと(Kitto Zutto)」と「Lucky」、さらに「CASE 143 -Japanese ver.-」など、K-POPグループが日本語曲のMVでアニメを使用する理由と魅力について解説。

TOMORROW X TOGETHERやRIIZE、Stray Kids、aespaなど、異なるグループがアニメMVで特徴的なコンセプトを表現。

ファンにとって楽しい驚きや感動を届け、さらなるコラボや展開を期待させる一連のアニメMVにフォーカス。

TOMORROW X TOGETHER、RIIZE、aespa、Stray Kids……“日本語曲×アニメーションMV”の話題作が増えた背景

 K-POPグループのMVは、磨き抜かれた技術が光るダンスシーンや圧倒的なビジュアルで魅せるソロ歌唱シーンなど、基本的にメンバー本人が登場する形式が多い。しかし、TOMORROW X TOGETHER「きっとずっと (Kitto Zutto)」やRIIZE「Lucky」など、K-POPグループが日本語曲のMVでアニメを用いる例が相次いでいる。なぜ彼らが日本でリリースする楽曲のMVにアニメ表現を選んだのか? 今回は、話題になったK-POPグループの日本語曲におけるアニメMVを紹介するとともに、その魅力について考察していきたい。

 冒頭でも触れたTOMORROW X TOGETHERの「きっとずっと(Kitto Zutto)」は、彼らが今年7月3日にリリースした日本4thシングル「誓い (CHIKAI)」に収録されている楽曲で、メンバーのHUENINGKAIが制作に参加していることでも知られている。

 本作は、スタイリッシュなダンス曲のイメージがある彼らの中では異色であるアップテンポなJ-ROCKスタイルの楽曲。歌詞では「どんなときもずっとそばにいる」という決意が歌われており、HUENINGKAIも「MOA(ファンの呼称)のことを想いながら作りました」と明かしていた(※1)。9月4日に公開されたMVでは、歌詞のテーマに合わせてメンバーをモデルにしたアニメキャラクターがMOA(ファンの呼称)への想いを手紙に託し、紙飛行機に乗って空へと旅立つ様子が描かれている。日本のアニメのOP映像を思わせる作りは親しみやすく、紙飛行機の飛行シーンは疾走感のある楽曲とマッチし、楽曲の魅力をより引き立てている。MVでは、途中でピンチに見舞われてしまうが、5人が力を合わせて乗り越え、前に進んでいくというシーンが描かれている。メンバーの怪我や病気など、決して順風満帆ではない歴史の中でも変わらなかった5人の絆を想起させ、胸が熱くなってしまう。

 後半では、公式キャラクターである「PPULBATU」も登場するなど、ファンにとってはたまらない内容だ。アニメの制作は、1999年生まれのイラスト・アニメーション作家、MARU AKARIが手がけており、キュートで優しげなタッチにほっこりさせられる。

 同じく冒頭で言及したRIIZEの「Lucky」は、9月5日に発売された彼らの日本1stシングル『Lucky』のタイトル曲。ゆったりとした爽やかなダンスチューンで、RIIZEらしい抜け感がありつつも、メロディもビートもより耳馴染みが良いものとなっていて、J-POPらしいとっつきやすさが感じられる一曲だ。MVは、本人出演バージョンの他に、ドリームワークス・アニメーションの「Good Luck Trolls」とコラボしたアニメバージョンも公開されていて、メンバーをモチーフにしたカラフルなトロールズが音楽に合わせて軽快に踊るかわいらしい内容となっている。本楽曲には、タイトルでもある〈lucky〉というフレーズが繰り返し出てくるが、MVのキャッチーな世界観やポップな色合いのキャラクターたちの効果も相まって、より楽しくてハッピーな気持ちにさせられる。

 このコラボレーションは、2023年に公開された映画『Trolls Band Together』に登場するキャラクターであるブランチの韓国語吹き替えをメンバーのEUNSEOKが担当したことがきっかけとなって実現。今後は「Good Luck Trolls」のキャラクターを用いたコラボ商品も展開されるとのことで、ファンの期待も高まっている様子だ。

 アニメを使ったK-POPグループのMVの中でも、特に注目を集めた印象があるのが、Stray Kidsが2023年2月にリリースした日本1stアルバム『THE SOUND』収録の「CASE 143 -Japanese ver.-」。本作は、「おぱんちゅうさぎ」や「んぽちゃむ」などのキャラクターの作者として知られ、ポップな絵柄と独特でシュールな世界観がSNSで人気を集めているイラストレーター、可哀想に!が制作を手がけたことで話題に。

 本作は、恋に落ちた時の気持ちを事件になぞらえた歌詞が印象的で、Stray Kidsの醍醐味ともいえる強烈なビートやサウンド、パワフルなラップが光る一曲だ。本人出演の韓国語バージョンのMVでは、年相応の青年らしい爽やかで無邪気なStray Kidsメンバーを、警察官に扮したStray Kidsメンバーが追いかけるという一人二役のストーリーが展開されているのだが、日本語バージョンのアニメMVでは、可哀想に!による丸みを帯びた可愛らしいタッチのイラストでその様子が完全再現されている。

 特に、メンバーをモデルにしたキャラクターたちはポップにデフォルメされつつも、一人ひとりの個性や特徴がしっかり捉えられて、パッと見ても誰がどのキャラクターなのか一目瞭然。Stray KidsがこちらのMVを視聴しながらリアクションをする動画も公開されているが、メンバーたちは「ほっぺたが本当に可愛い!」「本当に上手にできている」「笑みが止まらない映像でした」と終始その完成度の高さや面白くて可愛いキャラクターについて口々に大絶賛している。

 可哀想に!といえば、Stray Kidsの大ファンであることでも知られているが、普段から彼らをよく見ていて応援しているからこそ、このようにメンバーの特徴やグループ内での位置づけを見事に捉えて、キャラクターに落とし込めるのだろう。そして、本人出演のMVの内容を、メンバーの動きやストーリーの展開、演出、構成など何から何まで細かくイラストで完全再現しているところからは、Stray Kidsへの愛情を感じることができる。

 そしてStray Kidsに続き、aespaも可哀想に!とのコラボレーションで話題に。7月3日にリリースされた日本デビューシングル『Hot Mess』の収録曲「Sun and Moon」のリリックビデオでは、今ブームが再熱しているフラッシュゲームをテーマにメンバー4人をモチーフにしたキュートなキャラクターが登場。本作は〈引かれ合う pure gravity 君の光で I shine〉、〈寂しげな moonlight 君といれば/暗闇も so bright 歩めるから〉と歌詞にあるように、恋することで成長していく様子が歌われた切なくて甘いラブソング。aespaといえば、強気なアティチュードを感じられる楽曲が多いイメージだが、本作はより柔らかく共感を呼びやすい内容となっていて、可愛らしいアニメーションとの親和性もばっちりだ。

 MVでは、2000年代初期~中期にブームを巻き起こしたインターネットの掲示板やニコニコ動画を彷彿させるようなシーンもあり、Y2Kブームを牽引するaespaらしい雰囲気も感じられる。また、可哀想に!らしさが溢れるポップなイラストで再現されたaespa、動物のキャラクターに落とし込まれたaespa、スタイリッシュなアニメーションのタッチで描かれたaespaなど、シーンによって切り替わる世界観の違いを異なる絵柄で表現しているところも巧妙だ。

 そして、このMVが功を成したのか8月に行われたaespaの東京ドーム公演『2024 aespa LIVE TOUR – SYNK : PARALLEL LINE – in TOKYO DOME -SPECIAL EDITION-』では、可哀想に!の描き下ろしグッズも展開。アニメMVをきっかけに今後も様々なコラボが期待できそうだ。