池田朱那、松澤匠、石橋菜津美 『虎に翼』終盤も適材適所のキャスティングに

AI要約

ついに最終章へと突入した『虎に翼』。第24週では少年法、司法の独立、尊属殺人重罰規定に関する裁判などを描き、法の下の平等とその中で生きる人々の姿を描き切るスタートとなった。

時代は1969年、登場人物たちの子どもたちの成長や尊属殺人重罰規定に関する裁判など、重要な出来事が展開されている。

薫(池田朱那)や誠也(松澤匠)、美位子(石橋菜津美)など新たなキャラクターも登場し、物語の展開がさらに面白くなる予感が漂う。

池田朱那、松澤匠、石橋菜津美 『虎に翼』終盤も適材適所のキャスティングに

 ついに最終章へと突入した『虎に翼』(NHK総合)。第24週は少年法に対する是非や司法の独立、そして尊属殺人重罰規定に関する裁判と、ラスト3週間も手を抜かずに、“法の下の平等”とそこで生きる人々を描き切るという胆力を感じられるスタートとなった。

 時代は1969年(昭和44年)となり、第23週のラストからさらに6年の月日が経過。登場人物たちの子どもも成長し、汐見香子(ハ・ヨンス)の娘・薫(池田朱那)は大学生になり、のどか(尾碕真花)には結婚を約束している恋人・吉川誠也(松澤匠)がいるようだ。そして、最終章の大きなポイントになるであろう尊属殺人重罰規定に関する裁判の依頼人・斧ヶ岳美位子(石橋菜津美)も新たに登場した。

■汐見薫(池田朱那)

 NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』や『青天を衝け』への出演経験もある池田朱那が、汐見と香子の娘・薫を演じている。香子が寅子と偶然の再会を果たしたときには、まだ香子のお腹の中にいた子がついに大学生になったのかと感慨深い気持ちになってしまう。大学生になった薫は、学生運動に没頭中。崔香淑という名とともに朝鮮人である自分を捨てることになった香子に、「加害者側に立って逃げた」という言葉をぶつけたところを見ると、社会に対する強い違和感が彼女の中にくすぶっているように見える。

 今よりも遥かに朝鮮人への偏見や差別があった時代に、平穏な生活を守るために日本人として生きる覚悟を決めた香子の心情を、薫が理解する機会は訪れるのか。正義とも受け取れる主張と、個人の事情、社会的な立場などの両立できない難しさを描いていくうえで、大きなポイントとなりそうだ。

■誠也(松澤匠)

 未婚だからという理由で30歳を過ぎても新年の振袖着用を強制されたうえに、若い子に囲まれるのは嫌だろうという謎の理論を押し付けられていたのどか。そんなのどかの婚約者として登場するのが、誠也だ。朋一(井上祐貴)との会話のなかでは、画家であるということが明らかになっている。のどかには、美術系の大学への進学を諦めた過去があり、第118話では建築に関する書籍を読んでいるシーンが描かれるなど、現在も美術分野に対する関心が高いことが伺える。芸術を極める者への憧れが、誠也との恋人関係に表れているのかもしれない。

 誠也を演じるのは、特集ドラマ『高速を降りたら』(NHK総合)で次女の夫・トミタを演じた松澤匠。『高速を降りたら』では、実直で真面目ゆえに男らしさに悩まされる男性を繊細に演じきった。どんな性質を持った画家として登場するのか、楽しみに待ちたい。

■斧ヶ岳美位子(石橋菜津美)

 第117話の冒頭で描かれた、ある女性が父親を殺害してしまった事件。尊属殺人罪自体を問い直すきっかけの事件の加害者として、斧ヶ岳美位子はよねと轟に弁護を依頼する。美位子は起訴されたのち一時釈放され、山田轟弁護士事務所で手伝いをしている。一審では減刑された判決が下ったが、すぐに検察側から控訴された。

 実の父親から長きに渡り性的虐待を受け、最後には父親を殺してしまうという壮絶な生い立ちながら、どこかあっけらかんとした態度を見せる美位子。むしろそうした態度でいなければ、精神が保てないという状況に近いのかもしれない。弁護費用を心配する母親に対して「1人で逃げた」という言葉を冷静に投げた姿や、第118話でもインサートされた殺害時の状況を見るに、彼女の孤独の深さは相当なものだろう。

 『虎に翼』が最後に描く“法の下の平等”を表す最も重要な人物の美位子を演じるのは、石橋菜津美だ。『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)では、素性を隠して慎森(岡田将生)に近づく小谷翼役を演じており、石橋は本心を隠して飄々とした態度を見せる芝居が抜群にうまい。おぞましい性的虐待の被害にあいながらも、表面上は普通を装わざるを得ない美位子を演じる俳優として、ベストキャスティングといえるだろう。

 かつて穂高(小林薫)らが違憲としながらも合憲という判決が下った尊属殺人重罰規定に対して、よねと轟が弁護士として、桂場が最高裁判所長官として関わることになる最終章。穂高が成し得なかった違憲判決が下る“雨垂れ石を穿つ”瞬間を身を引き締めて見届けたい。