幼少期に冠動脈に瘤が出来てしまう…多発冠動脈瘤がどれほど珍しいのか~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.40~

AI要約

『ブラックペアン シーズン2』では、双子である天城先生と渡海先生の幼少期の物語が描かれ、冠動脈瘤による難題と手術の過程が明らかにされる。

多発冠動脈瘤は、川崎病に関連するまれな症例であり、幼少期に心臓の手術が必要になるケースは非常に珍しい。

渡海先生が左内胸動脈にも冠動脈瘤を患っていたことから手術は難航し、双子である天城先生の左内胸動脈移植が奇跡を起こす展開となっている。

幼少期に冠動脈に瘤が出来てしまう…多発冠動脈瘤がどれほど珍しいのか~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.40~

二宮和也主演で6年ぶりに日曜劇場に帰還した『ブラックペアン シーズン2』。シーズン1に引き続き、医学監修を務めるのは山岸俊介氏だ。前作で好評を博したのが、ドラマにまつわる様々な疑問に答える人気コーナー「片っ端から、教えてやるよ。」。今回はシーズン2で放送された8話の医学的解説についてお届けする。

■幼少期の渡海先生

今回は天城先生と渡海先生が双子であり、幼少期の渡海先生が多発冠動脈瘤を発症し手術は難航。双子である天城先生の左内胸動脈を採取し、渡海先生の内胸動脈を延長しバイパス術を完成させ渡海先生は生き永らえた。天城先生はフランスに養子に出され、その後同じく冠動脈瘤を発症しバイパス術を受けなければならないが、左内胸動脈を採取されているために静脈(大伏在静脈)でのバイパスを繰り返し行わなければならなかった。静脈でのバイパスは全て詰まりかけてきていて、渡海先生の実家で倒れてしまい手術となる。という流れでした。

■多発冠動脈瘤とは

ここで天城先生、渡海先生の多発冠動脈瘤がどれほど珍しいかの解説をいたします。

幼少期に冠動脈に瘤が出来てしまう背景には川崎病という病気があり、1967年に小児科医・川崎富作先生が最初に報告されました。川崎病は原因不明で4歳以下の乳幼児に多く、全身の血管に炎症が起きてしまいます。高熱や目の充血、発赤、手足や首のリンパの腫れ等の症状があります。川崎病の全ての患者さんが冠動脈に瘤が出来るわけではありません。後々まで心臓の問題になるのは3%程度で、このうち冠動脈瘤として残るのは0.8%程度と言われています。

渡海先生や天城先生のように心臓の手術まで要する方は非常に珍しいです。私も18年医師をやっていますが、幼少期にバイパス術のために携わったのは数例です(成人の冠動脈瘤は良く経験しています)。

3歳の時に渡海先生は多発冠動脈瘤を患い冠動脈バイパス術が必要になりますが、渡海先生は左内胸動脈にも瘤があり(よーく見ると、チラッと瘤が見えます)オペは難航します。左前下行枝にバイパスが作れず心臓の機能は弱まってしまいどうしようもなくなった時、双子の兄である天城先生の左内胸動脈を移植するという賭けに出て、何とか渡海先生は一命を取り留めます。