『真砂楼』『米砂原醫院』に続く和風ホラーADV『鳴蟇村(なりびきむら)』プレイレポ―不気味な廃村探索、怖すぎる異形とのチェイスなど、さらに“深化した恐怖”は期待以上だった

AI要約

『鳴蟇村』はリアルな廃村を舞台にしたホラーアドベンチャーゲームで、探索と脱出をテーマにした作品。

プレイヤーは異形の怪物から逃れながら村内を探索し、謎を解き明かして物語を進める。

グラフィックスや音響設定もこだわりがあり、廃墟の雰囲気をリアルに再現している。

『真砂楼』『米砂原醫院』に続く和風ホラーADV『鳴蟇村(なりびきむら)』プレイレポ―不気味な廃村探索、怖すぎる異形とのチェイスなど、さらに“深化した恐怖”は期待以上だった

今回は、DorsalFin Studioが手掛け8月16日に発売された『鳴蟇村(なりびきむら)』のプレイレポートをお届けします。

発端は掲示板の書き込み…廃村探索ホラー『鳴蟇村』とは

本作は、一人称視点のシングルプレイ専用ホラーアドベンチャー。主人公はネット掲示板に書き込まれた情報を頼りに、地図に存在しない村「鳴蟇村」を発見します。橋が崩れ退路を断たれた彼は、村から脱出するために周辺を探索し、手掛かりを見つけ隠された真実を明らかにしていきます。

特徴的なのは、日本にある廃墟・廃村を参考に制作されたリアルな村の風景です。鬱蒼と茂る森や雑草、昭和レトロな寂れた家屋、食器や黒電話といったオブジェクト、村はずれにある神妙な社など、探索するだけで心拍数が上がってしまうほど不気味な雰囲気を作り出すことに成功しており、非常に没入感があります。

なお、ホラー要素の全くない「廃墟探索モード」を搭載。朝~夜の時間帯変更やカメラ撮影など、ホラーが苦手なプレイヤーでも安心して自由に村を歩き回ることが出来ます。

本作を開発するDorsalFin Studioは、『真砂楼(まさごろう)』、『米砂原醫院(よねさわらいいん)』といった和風テイストのホラー作品を一貫してリリースしています。各作品のSteamレビューを参照にすると、粗削りだった1作目から徐々にクオリティアップしていき着実に評価を伸ばしているようです。

例えば、前2作までは廃旅館や廃病院など限定された舞台を題材にしていましたが、今作では「ひとつの村」を舞台にしたことでゲームの規模やスケール感が増しています。また、悪く言えば単調だったアイテム収集型の探索も、襲ってくる異形の怪物や村人から捕まらないよう逃げる2種類の「チェイス要素」のおかげで、程よく緊張感のあるゲームプレイになったりと全体的により“深化した恐怖”を感じました。

操作方法、グラフィックス、各種設定

操作方法は、マウス&キーボードおよびコントローラーに対応。筆者はXboxコントローラーを使用してプレイしました。言語はもちろん日本語字幕に対応していますが、一部難解で読みづらい漢字があったので、そういうものにはルビが振ってあれば良かったかなと思います。その他は、一般的なグラフィックスや音声に関する設定が行えます。

筆者個人的に、アクション要素が少なくウォーキングシミュレーター寄りのホラーゲームは、前後左右にスムーズに違和感なく動けるかがゲームへの没入度も変わってくる、という持論から重要視していますが、本作はキビキビと主人公が動いてくれるので、プレイフィールは好印象でした。

鳴蟇村を探索して脱出せよ

時は2000年9月。某巨大掲示板に「鳴蟇峠の対岸の崖が崩れてトンネルらしき物が見えるんだが?」というスレッドが立ち、ユーザー達の間で様々な憶測が流れる中、真相を探るため主人公は現地へと向かいます。

御存知の通り、元ネタは巨大ネット掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」で、スレッドの構成や飛び交うスラングなど当時の雰囲気が再現されています。こうした演出は、世代的にドンピシャな筆者の年代にはノスタルジーを感じ、若い世代にはレトロかつ新鮮なイメージを与える、インパクトのある素晴らしい導入だと思いました。

たどり着いた場所にはトンネルの様な穴が空いていて、その先には電柱や詰め所、明らかに人が居た痕跡があります。外はすでに薄暗く、懐中電灯の明かりを頼りに周辺を調べていきますが……もうこの時点でかなり怖い。不気味な雰囲気は心細く、本当に自分が孤立しているような気分になります。

奥深く足を踏み入れると、なんと老朽化した橋が崩壊し退路を絶たれてしまう事態に。そして振り返ってみると……地図にない空白の地「鳴蟇村」が姿を現します。とにかく脱出を図るため、別の道を探っていきましょう。

まずは、近くの「宮田商店」に恐る恐る入ってみます。中を覗くと昭和感あふれるレトロな様子。ホコリで汚れた壁やポスター、無造作に置かれたままの商品など細部までリアルに作り込まれたグラフィックはとても臨場感があります。

2階へ行くと「鳴蟇村掟」と書かれた謎の張り紙を発見。「山の主ヂウ様」「お啜りの日」「ミグク」など、聞き慣れない単語が並んでいます。意味はまったく不明ですが、不穏な何かがこの村で行われているようです。

さまざまな場所で手に入るメモや日記は、物語の背景を断片的に知ることができる貴重な情報源。次へすすむ場所の手がかりになったり、仕掛けを解くヒントが隠されていたりする重要なものです。こうしたアイテム収集型の探索は『真砂楼』から変わらない基本的なシステムとなっています。

宮田商店を後にして、食堂や小学校へ向かいさらに探索を続けていきます。廊下の軋みや扉の開け閉めなど、本作は「環境音」にも非常にこだわりが見られます。基本的に村内は静寂なので、そのぶん余計に音が際立つのです。廃村の雰囲気と見事に合わさり、周辺を歩くだけでかなりの恐怖を感じました。

異形の怪物“ヂウ様”から逃げろ

次は「土谷家」を調べてみます。腐った床下からは雑草が生えていたり、汚れた畳の上にはチャブ台があったりと荒れ果てた様子です。

2階の部屋で発見した妻の日記には、「息子にお印が出て“ヂウ様”に選ばれて嬉しいが、気持ちの整理がつかない」と複雑な心境が吐露されています。お印、ヂウ様…以前にも見た言葉ですが、鳴蟇村では何かの儀式めいたものが行われているのでしょうか。

同じ部屋で「鳴蟇食堂の鍵」を手に入れ、早速食堂へ向かおうとすると…

突然目眩がして朦朧とします。直後村の電灯がすべて付いたかと思うと、空も赤みがかった気味の悪い色に。まるで別の世界に来たかのように変貌してしまっています。この現象は一体…?

異変の影響なのか、食堂内には正気では無い雰囲気の住民が徘徊しています。彼らは目玉がなく、生きた人間なのかそうでないか分かりません。ただ、見つかったら明らかにヤバそうなので、しゃがんだまま息を殺しゆっくりと移動しなければ…。

なんとか外へ出て階段を登っていくと、深い霧の先から「ヒュルルルル」と動物のような鳴き声が響いています。

そこには人間を喰らい啜る異形の姿が。ヒョットコのような顔面に長い首、手足には鋭い爪を持ち、下半身は大きな口が開いている奇怪なビジュアルに思わず背筋がゾッと粟立ちます。

そして怪物がこちらに向かって来る!ダッシュで階段を降り、とりあえず宮田商店へと避難します。

しかし、怪物は家の中までは追ってこない模様。ホッと一息ついて、先程の現場を見に行くことにしますが……

外へ出ると再び怪物とのチェイスが開始。意外と足が早く、モタつけばすぐに捕まりゲームオーバーになるので注意です。要所要所で家へ入ってやり過ごしながら進みますが、「追われる恐怖」がハンパなく恐ろしい。

村長の日記や古い村の記録書などを見ると、怪物の正体は「ヂウ様」と住民から崇められている山の主で、その異形に住民の中から選んだ“ミグクと”呼ばれる生贄を献上するという、おぞましい儀式を行う因習があるようです。

血だらけの凄惨な現場には、賀田倉醫院の鍵が落ちていました。さらに探索と調査を続け、鳴蟇村で一体何があったのか真相を明らかにし、無事脱出できるのか…結末はぜひプレイヤー自身の目で確かめてください。

本作の良かった点は、圧倒的にリアルで雰囲気抜群の廃村を舞台にしていること、異形の怪物や村人など敵への対処が屋外/屋内の2パターンあり、探索に適度な緊張感が生まれていることです。

また、日記や資料からうかがえる前2作と今作の繋がりは物語に大きく深みを与えているし、考察するのも楽しそうです。さらにブラッシュアップされたホラー体験は初心者からコアゲーマーまでオススメできる作品だと思います。

気になる点としては、かなり接近しないと扉が開かなかったり、アイテムが拾えないことがあり、インタラクトに少し問題があるようです。

タイトル:『鳴蟇村』

対応機種:Windows PC(Steam)

記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)

発売日:2024年8月16日

著者プレイ時間:4時間

価格:1,320円

※製品情報は記事執筆時点のもの

スパ君のひとこと

廃村の雰囲気は臨場感抜群でめっちゃ怖い!ホラーが苦手なプレイヤーでも「廃墟探索モード」で自由に歩けるスパ!