ゼットンってどうやって倒したっけ? 忘れがちな『ウルトラマン』ラスボスの最期

AI要約

『ウルトラマン』の最終話では、宇宙恐竜ゼットンが登場し、ウルトラマンを倒す衝撃的な展開が描かれた。ゼットンの異形の姿や神々しさ、ウルトラマンの敗北シーンは多くの視聴者に強烈な印象を与えた。

ウルトラマンの敗北後、ゼットンは科学特捜隊のアラシ隊員によって無重力弾で爆破される。このあっけない最期は物語の流れからは欠かせないものであり、科学特捜隊員のプロフェッショナリズムが際立つ瞬間となった。

物語の重要な要素であるゼットンの倒され方に関しては、ウルトラマンの敗北とは異なる視点から描かれた瞬間であり、物語の展開において必然的な役割を果たしていた。

ゼットンってどうやって倒したっけ? 忘れがちな『ウルトラマン』ラスボスの最期

『ウルトラマン』の最終話、「さらばウルトラマン」に登場した「宇宙恐竜ゼットン」は衝撃的でした。

 どちらかといえば「宇宙人」を思わせる昆虫型のフォルムはもとより、「ピポポポポ……」という鳴き声ともつかぬ不気味な音、いっさいの表情を排した頭部、「メフィラス星人」のような「知的」とも、「レッドキング」のような「怪力」とも違う、対話不能な異界の使者のような、神々しさすら感じさせる奇妙な威圧感がそこにありました。

 そして、こともあろうに、ゼットンは「ウルトラマン」を倒してしまうのです。

 筆者は後追い世代であり、VHSで「さらばウルトラマン」を視聴する前に、児童雑誌でウルトラマンがゼットンに倒される事実は知っていました。それでもなお、「八つ裂き光輪」がバリアーでバラバラに割られ、スペシウム光線が吸収されてしまったときの衝撃は今も忘れられません。リアルタイム世代の方々も、筆者と同じ後追い世代も、間違いなくあの瞬間は、地球の一員として絶望していました。

 そして、決定的瞬間が訪れます。スペシウム光線を吸収したゼットンは無慈悲にも、波状の光線を放ち、ウルトラマンの「カラータイマー」を破壊しました。そのままウルトラマンは倒されてしまうのです。徐々に光を喪っていく過程は今観ても、「ヒーローの死」の描写として完璧です。

 その後の展開はご存じの通りで、宇宙警備隊の「ゾフィー」がやってきて命を与えると、「ハヤタ」と分離したウルトラマンはM78星雲へと帰っていくのでした。

 ここまでするりと書いてしまいましたが、そういえばゼットンはどのように倒されたのでしょうか。ゼットンが余りにも強すぎたこと、ウルトラマンが倒されたこと、ゾフィーが迎えに来たこと、ウルトラマンが宇宙へと帰っていったこと、どれも鮮明に覚えていますが、逆にそれらの印象が強すぎて、ゼットンの「最期」に関する記憶が薄れてしまっている方も多いのではないでしょうか。

 もちろん、ゼットンは倒されます。それも、ウルトラマンが倒されたすぐ後でした。ゼットンを倒したのは復活したウルトラマンでも、ゾフィーでもありません。科学特捜隊の「アラシ隊員(演:石井伊吉、現在の毒蝮三太夫)」です。

「岩本博士(演:平田昭彦)」より「昨日完成したばかりの新兵器」として受け取った「無重力弾(ペンシル爆弾)」を受け取ると、およそ20秒後には打ち込みに成功します。ウルトラマンを倒したゼットンは爆散し、無数の肉塊となったのでした。

 確かに、あっけない最期です。このシーンの後、ゾフィーがやってくるラストシーンへと向かうので、印象に残りにくいのも無理からぬことかもしれません。ゼットンを倒したのは科学特捜隊であり、厳密にいえばアラシ隊員でした。これは動かしようのない事実です。

 ゼットン爆破後に「イデ隊員(演:二瓶正也)」が「我々の勝利だ」と笑顔を見せると、アラシ隊員は「まだまだ! 炎の消火が先だ!」と走り出します。これは『ウルトラマン』という物語の傍流に絶えずあった「ウルトラマンに頼らずに地球を守る」という目的を達成した瞬間であり、最強の敵を倒しながらも喜びにひたることなく、消火に急ぐ科学特捜隊員の姿は間違いなくプロフェッショナルです。

 そういう意味において、確かにあっさりしていましたが、ゼットンがアラシ隊員に倒されるというのは、『ウルトラマン』という物語にとっての必然でもありました。