初めての劇場運営、離れていた常連たち…窮地のキネ旬シアターを救った“映画を愛するスタッフたち”

AI要約

キネマ旬報社が運営する映画館、キネマ旬報シアターの興りと成功の経緯。

映画に対する強い情熱とスタッフの協力により、難しい状況を乗り越えてきた様子。

映画館としての魅力や施設の充実が顧客に広く支持される理由。

初めての劇場運営、離れていた常連たち…窮地のキネ旬シアターを救った“映画を愛するスタッフたち”

〈《スクリーンは図工室》丘の上の“廃校映画館”が人口の少ないエリアでも人気を集める“納得の理由”〉 から続く

 1919年創刊。日本最古の映画雑誌『キネマ旬報』を刊行するキネマ旬報社は、劇場運営も行なっている。2013年、千葉県柏市にオープンしたキネマ旬報シアターだ。

 シネコンの進出に配信サービスが始まるなどミニシアターを取り巻く環境が厳しくなる中、キネ旬はなぜ劇場を持つことになったのか。支配人の三浦理高さんが語る。

「弊誌の読者はかなりの映画好きが多いですが、彼らが見たい作品が見られなくなってきたことへの危機感、それが最大の理由です」

 だが、厳しい滑り出しとなった。というのも同館が入ったテナントにはかつて映画館があったものの、閉館していた期間も長く、すでに常連のほとんどが離れてしまっていたからだ。

 また同社にとって劇場運営は初めての経験。映画雑誌を作るのとはわけが違う。この状況を支えたのが近隣の劇場から集まった、映画を愛するスタッフたちだった。

「みんなが自発的にアイデアを出し合い、劇場を充実させてくれました。装飾にすごく力を入れてくれて、お客さんのリクエストカードにもマメに返事を書いてくれる。徐々にお客さんとの信頼関係が生まれ、5年目あたりから軌道に乗ってきました。現在も、長く支えてくれたスタッフと新しく加入したスタッフで、どんどん魅力的な空間に作り変えてくれています。ただただ、感謝しかないですね」

 ミニシアターとしては規模が大きい同館。3つのスクリーンをまわすのは大変だが、これも強みに変えている。

「編成を担当する渡邉(隆介)は24歳と若いですが、映画の知識が豊富でセンスも良く、これを見たら、次にこれを見ると世界観が深まるといったような“物語性のある編成”を組んでくれる。おかげでここに来るお客さんは、一日に2本、3本と鑑賞してくれる方が非常に多いんです」

 キネ旬のバックナンバーはもちろん、映画関連書籍が充実した図書館や新装されたカフェスペースも併設された同館は、朝から晩まで映画の世界に浸るにはうってつけ。さすがキネ旬シアターである。

《映画の後で》カレーで盛り上がる柏市。三浦支配人の推しは老舗「ボンベイ」。

INFORMATIONアイコンキネマ旬報シアター

千葉県柏市末広町1-1

柏駅西口 柏高島屋ステーションモールS館1F

☎:04-7141-7238

HP: https://kinejun-theater.com/

座席数:シアター1 160席(車イス3席)シアター2 148席(車イス3席)シアター3 136席(車イス3席)

オープン:2013年2月2日

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