大島優子、脇役でこそ光り輝く頼もしさ ドラマを引き立てる“内面の弱み”の演技

AI要約

大島優子が小芝風花と共演するドラマ『GO HOME』でのバディコンビネーションが注目を集める。

大島のキャラクターは明るさと裏の闇を持ち、演技力で様々な役柄を成功させる可能性がある。

ドラマのキャラクターには深い過去や複雑な感情があり、大島が演じる役に生まれた強みが表れている。

大島優子、脇役でこそ光り輝く頼もしさ ドラマを引き立てる“内面の弱み”の演技

 小芝風花が主演を務める日本テレビ系の土ドラ9『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』で、主人公・三田桜(小芝風花)の、10歳上で性格も趣味も正反対の同期・月本真役を演じている大島優子。今年の6月でAKB48卒業からちょうど10年が経ち、今や“曲者役者”の地位を確立するとともに、信頼のできる名バイプレイヤーとして引っ張りだこ。第1話から早くも小芝との軽快なやりとりを見せ、名バディぶりを見せている。

 遺体からその人の人生を浮き彫りにしていくという意味では、沢口靖子主演『科捜研の女』(テレビ朝日系)や石原さとみ主演『アンナチュラル』(TBS系)に近いジャンルだが、初回を観る限り今作が特徴的なのは、もちろん親身になって遺体に寄り添っていくのは変わらずも、小芝×大島だけでなく、相談室の仲間達らの軽快なやり取りで真実に迫ることで、重いテーマであるはずの内容をストレスなく見せていることだ。特に良い意味で予想外だったのは、こうした「年の差」や「性格が正反対」というバディものはぶつかりあうのが定番だが、「年の差でも同期である」という絶妙な設定、そして1人でも多くの身元不明者を家族のもとに帰してあげたい気持ちは分かりやすく一緒だということ。年齢差のいじりはあるものの、同じ目線で親友同士の軽快なやり取りに繋がるバランスの良さがある。

 このコンビーネーションを生み出しているのは、小芝が主演ドラマ『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)のラジオDJ役でガサツで裏表のないキャラを演じ、サッパリ系のヤサグレ演技を開花させたことが大きい。そこで培った歳上に対してグイグイ迫る演技が、もともと大島が得意とするもので波長が合うというのも考えられる。そうした演技をさらりと受け流す大島の懐の深い演技があるからこそ、どちらとも面倒臭さを感じさせない絶妙なバランスとなっている。

 面白いのが、事件が一件落着し、2人が「これで良かったのか、本当は生きて戻ってくるって信じてたのに、その希望さえ奪ってしまった」(桜)、「仕方ないじゃない、それが私たちの仕事なんだから」(真)と落ち込むように深く考え、「はいおしまい!」(桜)と切り替える、毎回定番らしいプチ反省会。この事件を引きずらないメリハリある2人の粋な演出は、例えていうなら『あぶない刑事』のタカ&ユージに近いかも知れない。また2人とも小柄というのも、どこかバランスの良いかわいらしさと軽快さを感じさせる。AKB時代はセンターに立つことも多かったが、脇に回った時の頼もしく達観した存在感が、卒業から10年経った今バディものとして大島の魅力が活かされていると感じる役だ。

 大島の魅力は、かわいらしいルックスと小さい体を凌駕する演技力だ。子役時代を経て、AKB時代から表情豊かな人なだけに、表情で感情を表現するような明るいキャラクターの演技をさせると自然体の魅力を発揮し、裏表がない(とは言え何かしらの悩みを抱えてるような)サバサバ系女子を演じるのが上手い。それゆえに、明るい人が急に真面目な顔を見せるとそのギャップで役柄に深みを与え、様々なものを抱えている中でも明るく気丈に淡々と振る舞おうとする、根底にある裏返しの明るさを表現するキャラが実にハマる。

 なので、大島が演じる役は、一見どっしりと構えた強い女性に見え、人には見せない弱さや闇のあるキャラが多く、『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)での居酒屋で働くアラサー女子役では、一見サバサバ系女子だが、実際に恋愛すると物分かりの良い女を演じてしまい行き詰まってしまう弱い人物だった。さらに『七人の秘書』(テレビ朝日系)では都知事秘書として隙がなく、ホテルオーナーの令嬢として気高くふるまいつつも家庭は崩壊していて世の中に生きづらさを感じる闇を抱えた人物を演じたり、NHK連続テレビ小説『スカーレット』で演じたヒロインの幼なじみの友人役も、本当は心優しいのに、わがまま放題に育ったお嬢様なだけに素直になれないという憎めない役どころだった。実はヒロイン以上に人間味のある存在を数多く好演し、ドラマを引き立てているのだ。

 また、表情で感情を表現するのが上手いからこそ、逆に陰のある役やテンション低めの役柄も巧みに演じ、映画『紙の月』でヒロインの同僚の銀行員のように、ジョーカー的なミステリアスさも感じさせるなど、心の底で何かを企んでいる役にも対応できる。なので、彼女がいることでリード、ミスリードどちらでも転がせられるところが曲者役者と思わせる所以だ。それはつまり、ヒロインよりも脇役の方が大島の魅力を活かせるという理由でもある。

 『GO HOME』での桜と真には、個人個人には色々と深い思いや抱える問題があり、桜には飛び降り自殺未遂の過去、そして真の人物紹介には「週刊誌の記者だった真が、この部署を志願した背景には、ある哀しい過去があった」とある。いつもは明るいのに、愛する人の死体の可能性があった時の不安な表情からの、別人だと分かり安堵の表情を見せたり、第1話で白骨遺体で見つかった富田純也(浅利陽介)に対し、死んでいるのを認めたくない妻・聡美(仁村紗和)が親身になる真の姿に同じような経験をしていると思い、「誰かを待ってるんですか」と尋ねると、「私はもう待ちくたびれました」と、どこか達観した笑顔で答える時の表情はさすがだった。

 そうした辛い過去であったり、諦めてるけどやはり捨てきれない希望、真実を知りたいけど知ると死を認めてしまうという感情、そうした内に秘めたものがあるからこそ、普段は明るくふるまう人物像に深みが出てくる。そして“疲れた大人”の表情を見せることができるのも、年齢を重ねたいまの大島だからこそなせる技。これが大島が役者として培ってきた表の強みと、内面の弱みの演技を最大限に活かした役柄となっているのだ。