梅棒の2バージョン公演、『シャッター・ガイ』がついに開幕

AI要約

梅棒の『シャッター・ガイZ』が公開ゲネプロを迎える。商店街がデパート化される中、登場人物たちの人間模様が描かれる。

緻密なストーリー性を重視した梅棒の最新作は、笑いとパワーで満ち溢れた作品。清々しいほど笑い一色の中学生男子のノリが舞台で展開される。

振り返ると、梅棒メンバーとゲスト陣の個性豊かなキャスト、20曲以上の楽曲を駆使した舞台が観客に大いに楽しませる。

梅棒の2バージョン公演、『シャッター・ガイ』がついに開幕

ダンスエンターテイメント集団「梅棒」が、18年に発表した『Shuttered Guy』を再演。梅棒 18th “RE”SHOW『シャッター・ガイ』として、キャストを大幅に入れ替え上演する。しかも今回は半分の配役をシャッフルし、『シャッター・ガイZ』、『シャッター・ガイ改』という2バージョンでの上演に挑戦。すでに6月21日に開幕済みの『改』に続き、6月26日にはついに『Z』の幕も切って落とされた。そこで『Z』の初日に先駆けて行われた、公開ゲネプロの様子をレポートする。

物語の舞台は、多少の寂れは否めないものの、人情あふれる温かみが魅力のネコダ銀座商店街。だが突如そこに、豪華デパートを経営するセヴン姉妹が舞い降りる。商店街一帯を買い占め、煌びやかなデパートへの乗り換えを迫るセヴン姉妹。それぞれに内情を抱え、揺れ動く商店街の人々は……。

前作『花婿は迷探偵 -THE FINAL-』(23年)では本格ミステリーに挑むなど、緻密なストーリー性を重視した作品も多かった近年の梅棒。しかし本作では細かいことはいっさい関係なし! とにかくバカバカしさとパワーで押し切る、中学生男子のノリをそのまま舞台上に乗せたような、清々しいほど笑い一色の作品になっている。

『Z』の梅棒メンバーの配役は、初演とほぼ同じ(※野田裕貴は『改』のみの出演)。それだけに「そうそうこれこれ!」といった、各メンバーならではのハマり役を楽しむことが出来る。塩野拓矢演じるラーメン屋の頑固オヤジっぷりに、鶴野輝一演じる理容室のキュートな奥さんなどはさすがの安定感。セヴン姉妹の妹・バナナ役の楢木和也は、『花婿~』で主役を務めた自信からか華やかさに磨きがかかり、服屋の四代目・ねね役の梅澤裕介の自由人っぷりは、ただただサイコー!のひと言だ。

一方のゲスト陣では、ラーメン屋のひとり息子で、主人公のともゆきをLeadの谷内伸也が熱演。今回が梅棒初参加となるが、ダンススキルの高さは言うまでもなく、抜群の存在感で、個性派ぞろいのキャスト陣の中においてもひと際目を引く。ちなみにほとんどのゲスト陣は『Z』『改』ともに同役となっているが、谷内が『改』で演じるのはセヴン妹のバナナ。悩めるラーメン屋の息子が、華やかなセレブとしていかなる変貌を遂げているのか。こちらも期待大だ。

ゲスト陣で唯一『Z』のみの出演となるのが、ねねの孫・ももか役の吉原怜那。今最もチケットが取れない8人組「ダウ90000」の最年少メンバーで、笑いどころのセンスはもちろん、そのダンスのキレの良さは圧巻。観客参加のシーンでは、吉原が率先して盛り上げてくれるので、ぜひ前のめりになって楽しんでもらいたい。

ダンスと芝居にJ-POPを融合させ、かつてないエンターテインメント作品を生み出してきた梅棒だが、本作での楽曲の使い方は特に秀逸と言える。おなじみのあのナンバーから、本作のための書き下ろしかと疑うほどハマるナンバーまで、20曲以上をセレクト。見事に物語を構成し、さらにステージを大いに盛り上げる。そして観終わったあとに残る、胸いっぱいのハッピーな気持ち。これぞ梅棒! とも言うべき、ゴキゲンなエンタメ体験がここにある。

取材・文:野上瑠美子

写真:角田大樹