黒髪、切れ長の目、小さい鼻…元祖・トップモデル、山口小夜子が初めてパリで認められた瞬間

AI要約

山口小夜子は、ファッションの街・パリで活躍したトップモデルであり、多くの女性に憧れられる存在であった。

彼女は独自の個性を持ち、パリでの仕事を通じてその価値を理解するようになった。

また、パリでの初めての外国旅行では苦労もありつつも成長し、その経験を紡ぎながら活躍した。

黒髪、切れ長の目、小さい鼻…元祖・トップモデル、山口小夜子が初めてパリで認められた瞬間

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ファッションの街・パリでコレクション・モデルとしてデビューし、一シーズンに十数件のショーを掛け持ちするなど、文字通りのトップモデルとして活躍した山口小夜子。

モデル・俳優の冨永愛は、もっとも尊敬する存在と公言する。マツコ・デラックスは美の化身と絶賛。

亡くなって15年以上が経つが、いまも多くの女性がそのファッションやメイクに憧れ、模倣する。東京都現代美術館の「山口小夜子 未来を着る人」展覧会(2015年)には5万6000人もの人が来場した。

山口小夜子は、印象的な言葉を数多く残した人でもあった。

生前に残した多くのインタビューを再編集した新刊『この三日月の夜に』から、圧倒的に美しい写真と「天につながる」言葉を抜粋して紹介する。

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 黒髪、切れ長の目、小さい鼻は

今までになかった個性

 パリに来てほしいと招待を受けたとき、最初は躊躇しました。なぜ私が必要なのか、よくわからなかった。“小夜子はそのままでいい”と言われて、心から驚いたほど。

 オカッパのヘアスタイルで黒髪。西洋的なモデルとまったく異なった私に、“そのままでいい”と言った人はそれまでいませんでしたから。なぜ、“そのままでいい”のか、パリで仕事をしていくうちに段々理解できるようになりました。黒髪、切れ長の目、小さい鼻の私の顔は、彼らにとって日本的であり、今までになかった個性だったのです。

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和楽 2005年5月号

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 パリでは毎晩泣いてたの

でも寂しくてじゃないの

 そのときが、初めての外国旅行だったの。なぜか南回りで行っちゃって、着いたときは緊張感と疲れで、もうフラフラ。空港からタクシーでどこかのレストランに行ったのだけど、気分が悪くて、トイレに立とうとしたとたん、フーッと意識がなくなって。その間、私は日本にいると思い込んでたらしいの。『私帰る』って家へ帰るつもりになって意識をとり戻したら、音楽みたいにフランス語が耳のところで聞こえて、金髪の人が、ぐるりとのぞきこんでいるじゃない。そのとき、ああ、私はパリにいるんだって、思ったの。それからタクシーを拾ってホテルへ帰ろうとしたのだけど、また路上で気絶しちゃったのね。

 私、向こうでは毎晩泣いてたの。でも寂しくてじゃないの。親切にしてもらっても、何がうれしかったとか、どれほどうれしかったかを伝えることが出来ないのが辛くて辛くて。

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MORE 1979年11月号

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