「神様みたいなものを感じた…」當山奈央・6曲の歌詞が6篇のストーリーとなり映画化

AI要約

音楽アーティストの當山奈央が制作した6曲の歌詞を映画化した『わたしの、途切れない物語。』は、40歳のライターが悲しみや寂しさと向き合いながら自分自身と周りの人々との関係性に気づく物語。

當山奈央と監督の永田琴は、映画化のアイデアを検討する過程で、より広がりや深みを持たせるためにMVではなく映画にすることを決定。

岩井堂聖子と村川絵梨が演じる登場人物は、結婚や子育てに悩む女性や、過去の思い出にとらわれる男性として、物語のキーポイントを担っている。

「神様みたいなものを感じた…」當山奈央・6曲の歌詞が6篇のストーリーとなり映画化

アーティストとしても活動する當山奈央が紡いだ6曲の歌詞をもとに、永田琴が監督を務めて映画化した『わたしの、途切れない物語。』。

同作は、40歳を目前に彼氏と別れてしまったライターの栞が、悲しみや寂しさから目を背けるように、いつもと変わらない時間を過ごそうとするも、何気ない日常、何気ない出会いや再会が現実へと向き合わせることになり、「今、何を大切にすべきか」を見つめ始めるという物語。

ニュースクランチ編集部は、この映画に込められた「自分を大切にしてこそ、大切な人や環境を守れる」という想いを、主演の當山奈央、監督の永田琴、そして出演した岩井堂聖子、村川絵梨にインタビューした。

◇MVじゃなくて映画にしてみるのはどうだろう?

――まずは、この作品が作られた経緯についてお聞かせください。

當山 奈央(以下、當山):東京で20年以上、音楽活動をしていたんですが、コロナ禍をきっかけに早い段階で地元の大阪に活動拠点を移したんです。ちょうどその頃、世の中でも活発に多様性や、さまざまな愛の形について議論されるようになった印象がありました。

それと私自身、40歳になったばかりなんですけど、男性もそうだと思うんですが、30代後半から女性として思うことが増えてきて、結婚はどうする? 子どもは? とか。自分はそれを肌で感じて焦ったりもしたんですけど、ふと“なんで焦ってるんだろ、私”って思うこともあったんです。要するに、いろいろ考えすぎていたんですね。

そして、沖縄でミュージックビデオを撮影する機会があり、この映画のエピソード5に出てくる夫婦のモデルとなる方と知り合うことになったんです。その方々は東京から沖縄に移り住んでいたんですけど、話をしているうちに、自分の考えがどんどんシンプルものになってきた感覚があって。“本当に自分の大切にしたいものはなんだろう”というところから、曲を書き始めたのがきっかけです。

――なるほど、まず楽曲ありきだったんですね。當山さんと永田さんは旧知の仲だとお聞きしました。どのように映画につながっていくのでしょうか?

永田 琴(以下、永田):最初、彼女(當山)から歌詞のような、エッセイのような、詩のようなものが送られてきて「こういう曲を作るんです、これを60分くらいで1本のMVにしたいんです」と言われました。ただ「MVかあ、そんなに簡単じゃないよ」って伝えて。送られてきたストーリーが6編、1編を10分として考えても、それなりの撮影量と日数になるなと思って。

「それぞれが、なんとなくつながっていれば……」ということは最初に言われたんですけど、それも簡単なことではないし、出来上がったものをYouTubeに上げたところで、ファンの方はいいけど、他に誰が見るのって。そう考えたときに、自分が映画監督という立場を取っ払って、彼女の立場になって考えてみたんです。

もちろん、最初に言ったMVでもいいけど、それでは広がりがない。じゃあ、それぞれ独立したMVを6編作るってなったときも、それを1編だけ見た人からは“これって何?”って思われるだけかもしれない。じゃあ見る側には、6編通してお持ち帰りいただけるようなものにしよう。そう考えたときに「いっそ映画にしてみるのはどう?」って。

當山:そんなこと考えてもいなかったので、「できるんですか?」って聞きかえしちゃいました(笑)。

永田:「できるんですか?」じゃなくて、「それをやるんだよ!」みたいな(笑)。

當山:でも、初めは飲みながらの相談くらいの感じだったんですけど、すごい真剣にいろいろと考えてくださって、とってもうれしかったです。

◇サヤのような人生を歩んでいたかもしれない

――岩井堂さんは一見、幸せそうに見えるけど、じつは一人で子どもを育てていく決心をしたサヤ、村川さんは彼女への想いを断ち切れず、スタートを切れない男の思い出のなかの彼女、川越友梨役を演じました。それぞれ演じてみての感想を聞かせください。

岩井堂 聖子(以下、岩井堂):私自身、サヤを演じるにあたって、とても他人事には思えない、もしかするとどこかで違う道を選んでいたら、私もサヤのような人生を歩んでいたかもしれないと思いました。どうしても女性は、多くの方が20代後半から、結婚や出産を意識しつつも、もう少し仕事を頑張ってみたいということに直面するだろうし、この作品の栞とサヤのように、どこか探り合ったりもするだろうし。

このサヤって役は、弱い部分を見せたくないという人間だと思ったので、私が演じることで、物語のなかのサヤがもっと良い方向に進んでいってほしい、そう感じるくらい愛着のある役でした。

――うまくいっているように見える昔からの友人に会いたくない、と栞がサヤを避けようとするシーンは、同じような経験をしたことがある方の共感を呼ぶだろうと思いました。村川さんはいかがですか?

村川 絵梨(以下、村川):私は、この作品が出来上がる前から「MVを作りたい」という話を聞いていたんです。(當山)奈央ちゃんとは、もう20年の付き合いになるのかな? だから私も、全てが他人事じゃなかったですね。

「絵梨にやってほしい役がある」と聞いていたので、役作りというよりも、奈央ちゃんが描いてくれたことをチャーミングに演じきろうと思いました。私の演じた川越友梨は、彼のなかの幻想ですよね。だから、とにかく良い思い出だっただろう彼のなかの彼女を、キラキラ演じることを意識しました。