今いくよ・くるよさんの「所得隠し」をスクープした記者 訃報に際し思い出す吉本興業への“気が進まない取材”

AI要約

人気芸人、今くるよさんの訃報について元記者が「スクープ」について複雑な思いを抱くことを明かす。

元記者が今いくよ・くるよ師匠の所得隠しのスクープについて語る。

記事の筆者が大阪社会部で大物芸人の暴力団との交際の取材を行った経緯を振り返る。

今いくよ・くるよさんの「所得隠し」をスクープした記者 訃報に際し思い出す吉本興業への“気が進まない取材”

 取材記者も人間である以上、現場ではさまざまな感情が生まれる。しかしそれを記事に反映させないように心がけるのは当然だろう。先日訃報が伝えられた人気芸人、今くるよさんについて、元産経新聞記者の三枝玄太郎氏は、今思い出しても複雑な気持ちになってしまう「スクープ」があるのだという。以下、三枝氏の特別寄稿。

 ***

 今くるよさんが5月27日に亡くなった。膵(すい)がんのため、大阪市の病院で息を引き取ったと発表されている。76歳だった。少し早すぎる気がする。コンビを組んでいた今いくよさんが亡くなってから、みるみる元気を失くしていったと聞いている。苦楽をともにして、成功したコンビだけに、相方とは一心同体だったのだろうと思う。

 新聞記者というのはつくづく因果な商売で、警察回りや国税担当が長かった僕は、刑事さんやマルサ、料調 といった国税職員を除けば、今でも付き合いがある友人、知人は事件や事故で知り合った被害者、いじめられて自死した子の親御さんなどが多い。その方にとって災厄がなければ、知り合うこともなかった間柄だ。「今いくよ・くるよ」さんはその後、お付き合いがあったわけではないが、接点を持つきっかけとなった出来事はお二人 にとって災難極まりないものだったと思う。

 2004年、東京の社会部から大阪社会部への異動を言い渡された。大阪と聞いた僕は、読売新聞社会部で大阪府警を長く担当し、エースとして活躍した大谷昭宏氏原作の漫画「こちら大阪社会部」の世界を堪能してみたい、と警察回りを社会部長に希望していたが、会社側の諸般の事情から国税局担当となった。

 ある日、大物芸人の暴力団との交際が人の口の端にのぼるようになった。彼を調査しているらしい、と国税記者クラブの記者たちは緊張した。この芸人は司会者としても成功を収めていた。

 しかし、取材の過程でまったく別の所得隠しの情報を得る。聞いた名前は意外な人だった。今いくよ・くるよ師匠だったのだ。