「津軽海峡冬景色」などを聴いて育ったMikanHayashiが日本語で歌う台湾ロックバンド・ゲシュタルト乙女 「音楽で架け橋に」

AI要約

台湾出身のロックバンド「ゲシュタルト乙女」が日本での活動や音楽に対する思いを語る。

ボーカル・ギターのMikanHayashiが日本語で歌う理由や、日本と台湾を音楽でつなぐ夢について紹介。

ライブツアー「門出燦々」や新曲「神様」のリリースに関する情報、活動の展望を述べる。

「津軽海峡冬景色」などを聴いて育ったMikanHayashiが日本語で歌う台湾ロックバンド・ゲシュタルト乙女 「音楽で架け橋に」

 日本語で歌う台湾出身のロックバンド「ゲシュタルト乙女」が6月5日、福岡市中央区今泉の「comoes」でライブを開く。幼少期から日本の音楽に親しんできたボーカル・ギターのMikanHayashi(28)には、「台湾と日本を音楽でつなぎたい」との夢がある。

 物心が付いたときから身の回りに日本語があった。日本に約2年留学していた両親は「なごり雪」(イルカ)や「津軽海峡冬景色」(石川さゆり)をよく聴いていた。車でドライブするときはMISIAの歌が多かったという。自分も高校生になると、福岡出身のバンド・スピッツや椎名林檎を好んで聴いた。「福岡の人がつくる音楽はすごいなっていう印象があります」

 17歳で楽曲制作を始めた。母語の歌詞で心中を「分かりやすく見せる」ことには抵抗があり、本格的に学び始めた日本語で書いた。あえて周囲に伝わらないように選択した日本語は「逃げ場所」でもあった。2016年に結成した「ゲシュタルト乙女」では最初から日本語で歌唱。楽曲はインターネットなどで日本でも広がり、18年には日台両方で活動するようになる。

 好きなことを続ける上では、他人の視線や自分への期待は重いプレッシャーになる。5月15日に配信リリースした新曲「神様」には、そんな他人の目を恐れず、「真剣に前に進む限り、必ず素晴らしい景色が待っている」とのメッセージを込めた。自身も日本語で歌う選択をしたことに疑問を抱いたり迷ったりすることもあった。かつての自分のような「選択に迷う人の背中を押せたら」と願う。うねるような起伏と力強さ、文学的とも言える歌詞と繊細なメロディーが印象的で、「神様」と呼びかけるMikanのボーカルは祈りのようにも聞こえる。

 6月5日の福岡を皮切りに、日台8カ所を回るライブツアー「門出燦(さん)々(さん)」は、初の試みとなる全編Mikanによる弾き語り。春に新生活を始めた人々の活躍を願いつつ歌う。会場で募集した悩み相談に応えるなど「距離感の近いライブにしたい」と話す。

 音楽をきっかけに日本を知ったMikan。今度は自分の歌で「日本の人にもっと台湾を知ってほしい」との思いも強い。「日本と台湾を音楽でつなぐ架け橋に」と誓い、マイクの前に立つ。

(古川泰裕)

 ◆ゲシュタルト乙女 16年結成。日本語の歌詞と型にとらわれない実験的な楽曲で注目を集め、日本と台湾で活動中。現在のメンバーはボーカル、ギターのMikanHayashiと、今年3月に正式加入したベース・阿司(アースー)の2人。ライブ情報はこちらから。