「どこで笑ったら?」衝撃出会いのフースーヤ 新しい漫才…教えてもらった

AI要約

フースーヤが遂にNHK上方漫才コンテストで初優勝し、喜びを爆発させる。

長い道のりを経て成長を続けたフースーヤが、独自のスタイルを大切にする姿勢を示す。

フースーヤの独特のギャグセンスとユーモアが、観客を魅了し続けている。

 初めて彼らの漫才を見たのは何年前だったか。ギャグ漫画のように全身をリズミカルに動かし、テンポの良いセリフが飛び交う。若い女性ファンは爆笑の連続だった。ただ、世代の離れたおっさん記者(私です)は、そのスピード感についていけず「どこで笑ったらええねん?」。衝撃でさえあった。

 フースーヤ。5月24日の「第54回NHK上方漫才コンテスト」で、悲願だった賞レース初優勝を飾った。テレビの生中継が終わった後、記者会見のために残っていた谷口理(31)と田中ショータイム(30)はさすがに喜びを隠せず「朝まで(会見を)やりましょうか?」とノリノリだった。

 無理もない。賞レースの決勝には何度も挑みながら、優勝経験はゼロ。かつておっさん記者が感じていた違和感が、晴れの決勝ステージを邪魔することもあった。漫才の熱気が客席に伝わらない…。

 ただ半年、1年と舞台でフースーヤの漫才を見ていると、徐々に彼らと自分の距離が縮まっていくのを実感できた。漫才は生きものであり、演じるごとに変化していく。演者だけでなく、見る側の耳や脳も変わっていくのだ。

 「僕らの漫才は型破りで、好き嫌いがはっきりするんです。もしかしたら賞レースでは勝てない漫才なのかも。それでも『勝ちたい』という気持ちを失わなかった」とショータイム。時間は要したが、ひとつの壁を乗り越えた。「NHK上方漫才コンテストに優勝したことで、自信をもってこれからも自分たちのスタイルを続けていきたい」と手ごたえをつかんだ。

 「まだ優勝が信じられない」と初々しいコメントを発したのは谷口だった。

 それでも「いつか優勝する日が来たら、喜んでショータイムが抱きついてくるだろう。そのときはわざと無視してやろう、とひそかに考えてました。優勝が決まって計画通りやってみたら、楽屋に戻ったショータイムが『ショックやったわ』と言ってました」。

 これを聞いたショータイムが「言うな!」とツッコみ、周囲の笑いを誘った。優勝会見でもフースーヤらしい軽快な掛け合いだった。

 4月13日の「上方漫才大賞新人賞」では、7組の最終ノミネートに残りながら、同期(NSC38期)で仲良しの天才ピアニストの前に涙をのんだ。天ピが歓喜の声をあげる隣で、谷口はヒザを床につけて「また、お前らか!」と、おおげさに悔しがってみせた。

 「今回は天才ピアニストが不在やからフースーヤの優勝や、とまで言われました」と屈託なく笑った谷口。初優勝まで遠回りしてしまったが、めげることなく成長を続けてきた。時間をかけて「継続こそ力」を見事に証明してみせた。

 ことし3月23日、テレビ大阪の特番「すっきゃねん大阪 ネタバトル2024」では出場10組のなかで最高得点(審査員は大阪のおばちゃん50人)を獲得。賞金100万円をゲットした。

 また、吉本芸人なら誰もがあこがれるなんばグランド花月(NGK)での単独ライブ(6月9日)があっさり完売し、追加公演(6月13日)もソールドアウト。着実に力をつけているのだ。

 一瞬のタイミングのズレも許されないギャグの応酬が、フースーヤ漫才の生命線。2人が相当なネタ合わせを重ねているのは容易に想像できるが、そんなことは口にしない。「全部アドリブですよ。僕ら努力なんてしてません!」と煙に巻く、その姿もクールで良し。おめでとう、フースーヤ! おっさん記者に新しい漫才を教えてくれてありがとう!【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)