熊本・慈恵病院の「ゆりかご」23年度は9人、中部や関東からも
熊本市の慈恵病院「こうのとりのゆりかご」には2023年度、9人の親が育てられない子どもが預けられた。
預けられた子どもの出生状況や地域分布、健康に関わる課題が指摘されている。
子どもたちの出自に関する権利を尊重し、病院と市は検討会を設置している。
熊本市は29日、親が育てられない子どもを預かる慈恵病院（熊本市西区）の「こうのとりのゆりかご」に、2023年度は9人が預けられたと公表した。市の要保護児童対策地域協議会代表者会議に報告した。07年の開設からの累計は179人となった。
預けられたのは男児が4人、女児が5人。生後1カ月未満の新生児が7人で、うち4人は生後7日未満だった。
出産場所は自宅が4件、医療機関が3件、不明が2件。父母らの居住地は中部、関東がそれぞれ2件、熊本県内が1件、不明が4件。孤立出産や出産直後の長距離移動など、母子の健康に危険が伴う課題が残されているという。
協議会には学識経験者など5人の委員で構成される「こうのとりのゆりかご」専門部会があり、運用について検証した。子どもの安全確保の面で特に問題の発生は確認されず、公的な相談機関と適切に連携している、などと評価した。
開設から17年を数え、預け入れられた子どもたちが自らの出自を病院に尋ねることも増えてきた。病院と熊本市は「出自を知る権利」に関する検討会を設置し、問題点の整理などを進めている。大西一史市長は「子どもたちの思いに丁寧に寄り添っていくことができるよう検討を進めていく」とコメントした。
慈恵病院の蓮田健院長は29日に取材に応じ「件数は例年と大きく変わらない。ただ、日本に１カ所しかないことを考えれば、（本来）預け入れはもっと多くあるはずだと思う。熊本以外にも施設を広めること、存在を周知していくことが課題だ」と述べた。（杉浦奈実、渡辺淳基）
