保護者が知らない「『経済的に豊かな家庭が多い』中学ほど部活動で教員が自腹を切っている」という意外な現状

AI要約

小学校の正規教員における授業に関わる自腹の発生率やそれに関連する仕事観についての調査結果が示されている。

教員の授業に関わる自腹と教育活動に関する研鑽・修養が密接に関連しており、自腹を切る意識が教育活動の充実につながっている可能性が示唆されている。

さらに、職場の人間関係を大事にしたいと考えている教員ほど、授業に関わる自腹をしている傾向があるという結果も示されている。

教職員の自腹に関する調査によると、授業に関する自腹は、その教職員の仕事観と関わりがあった。さらに、中学校での部活動に関わる自腹は小学校に比べて発生率が高く、勤務する中学校が「経済的に豊かな家庭が多い」かどうかに「あてはまる」と答える教員ほど、部活動に関わる自腹を切っていたという――。(第3回/全3回)

 ※本稿は、福嶋尚子、栁澤靖明、古殿真大『教師の自腹』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。

■自腹と仕事観

 小学校教員における授業に関わる自腹の発生率は高い(466人中304人、65.2%)。では、どんな仕事観をもつ人が授業に関わる自腹をしているのか。

 じつは「教育活動をより充実させたい」(※1)かどうかについて「あてはまらない」と回答した小学校正規教員の授業に関わる自腹の発生率は52.9%(70人中37人)にとどまるのに対し、「あてはまる」と回答した人の発生率は68.2%(292人中199人)にも上る(図表1)。

 「自分自身が成長したい」についても、「あてはまらない」と回答している人の発生率が50.0%(70人中35人)であるのに対し、「あてはまる」と回答した人は68.8%(292人中201人)になっている。つまり、小学校の正規教員の場合、授業に関わる自腹と教育活動に関わる研鑽・修養がつながっており、よりよい教育活動を子どもたちに提供するためであれば自腹も許容するという捉え方があるのではないだろうか。許容というより積極的に自腹を切っているともいえる。

 また、「職場の人間関係を大事にしたい」かどうかについての回答をみてみると、362人中328人(90.6%)が「とてもあてはまる」ないし「少しあてはまる」と回答しており、ほとんどの人が職場での人間関係を大事にしたいと考えていた。

 そこで、「とてもあてはまる」と「少しあてはまる」と回答した人の間にある違いに着目してみる。「少しあてはまる」と回答した人のうち自腹をしていた人は56.0%(166人中93人)だったのに対し、「とてもあてはまる」と回答した人の場合は73.5%(162人中119人)だった(※2)(図表2)。

 職場の人間関係を大切にしたいと思っているのは多くの正規教員に共通しているが、その思いがより強い人ほど授業に関わる自腹をしているのだ。

 ※1 「とてもあてはまる」と「少しあてはまる」を「あてはまる」とし、「あまりあてはまらない」と「まったくあてはまらない」を「あてはまらない」として2値に変換した。今後特に断りがない場合は他の項目についても同様である。

 ※2 ちなみに、「あまりあてはまらない」と回答した人のうち自腹をしていたのは66.7%(27人中18人)、「まったくあてはまらない」と回答していた人のうち自腹をしていたのは85.7%(7人中6人)だった。