【祝・日米通算200勝】「超有名高校生投手」時代にダルビッシュが語っていた想像絶する「理想の投手像」

AI要約

サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手が、5月20日のブレーブス戦で日米通算200勝を達成した。野茂英雄氏、黒田博樹氏に続く快挙となった。

ダルビッシュは好投で勝利投手となり、毎回の9奪三振、25イニング連続無失点の記録を伸ばし、今季4勝目を挙げた。

中学時代から注目を集め、東北高校を選んだダルビッシュ。監督との相性により成長を遂げ、自主性を重んじた指導方法が功を奏した。

■ 野茂、黒田に続く日米通算200勝

 サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手が、5月20日のブレーブス戦でついに日米通算200勝を達成した。

 この日先発登板したダルビッシュは7回99球を投げ2安打無失点9奪三振の好投で勝利投手となり、今季4勝目。野茂英雄氏、黒田博樹氏に続く日米通算200勝を達成した。野茂が通算201勝、その上の黒田が203勝だから、今シーズン中にダルビッシュが日本人投手で日米通算勝利のトップになる可能性も十分ある。

 ダルビッシュの200勝をかけたマウンドは圧巻だった。初回は2死から3番オズナにツーベースを打たれたものの、4番オルソンを三振に切る。以降、スコアボードに0を並べ、7回までで毎回の9奪三振、自身25イニング連続無失点の記録も伸ばした。

 開幕当初は5試合連続で勝ち星がつかず、4月には負傷者リストに入るなど苦しんだ。しかし、4月30日(日本時間5月1日)のレッズ戦で今季初勝利をあげると、そこから3連勝を果たしている。

 ダルビッシュは「(200勝について)特に実感はないです。アトランタでいいピッチングができて、明日ダブルヘッダーなので、よかったです」「(登板が)1日ずれて体の力はあまりなかった。変化球はよくて、うまくミックスして、相手の集中力をそらすことができました。一日ずれても放送をしてくれたNHKにも感謝しています」と試合後に振り返った。

■ すでに中学生時代に高校からオファー殺到

 大阪に凄い投手がいる――。中学時代からダルビッシュの能力は日本中に知れ渡っていた。当然、甲子園の常連校から幾つもオファーが届いていた。

 その中で選んだのが宮城県仙台にある東北高校であった。本校以外にあった仙台中心部から車で30分ほどのところにある泉キャンパスのスポーツを特化するクラスに入り、そこでトレーニングを積むことになった。

 「まさか、有がウチを選んでくれるとは全く思っていなかった。ウチより環境のよい高校もあったのになんでだべ、という気持ちがありました」

 当時、監督の若生正廣(故人)でさえクビをひねっていたのが印象的であった。

 ダルビッシュは東北高校を選らんだ理由について「親の干渉から逃れられるし、室内練習場も完備していたのが良かった」と周囲に語っていたが、それよりも監督の相性がよかったという点が大きかったのではないだろうか。

 若生監督はダルビッシュに対して「○○しろ」というような命令は全く出さず、彼の好きなままにやらせるような指導方法を取った。甲子園常連校の監督となれば主力選手に対してあれやこれや指示や指導をしたいところだろうが、若生監督はそれをじっと耐えた。選手の自主性を何よりも重んじていたのだ。

 その期待に応え、選手本人が自主性を持ち、自分の頭で考えながら競技に打ち込めば著しい成長が期待できる。その一方で、指導者が期待したような自主性を持てずに、主体的に競技に取り組めない選手は、たとえ一流の素質を持っていても他の選手の中に埋没していくことになる。その意味では、指示や指導を極力控えるというのは、リスクも大きい。

 若生監督は、阪神で主軸の投手だった若生智男投手の弟で、東北高校から法政大学、さらに社会人野球を経験した後に、高校野球の指導者となった。見た目は怖そうなのだが、気配りに長けて神経が細かい仏の心を持っていた。しゃがれ声の仙台弁で話しかけられるだけで、なぜか相手はほっこりしてしまうような徳を持っていた。生徒と信頼関係を築くのが巧みだった。