貸切バス手配できず修学旅行がピンチ?一方で港区立中はシンガポールへ 改めて問われる“意義”

AI要約

修学旅行のあり方についての議論が盛り上がっており、教育評論家や専門家から様々な意見が出されている。

修学旅行費用や教育的意義、教師の負担など、修学旅行にまつわる問題点が指摘される中、その意義や方法について再考すべきだとの声が上がっている。

修学旅行は子どもたちの成長や経験に影響を与える重要なイベントであるが、費用や教育の観点から見直しを行う必要がある。

貸切バス手配できず修学旅行がピンチ?一方で港区立中はシンガポールへ 改めて問われる“意義”

 関東や近畿などの公立中学校で本格的な修学旅行シーズンが始まる中、「バスの運転手が確保できず、貸し切りバスが手配できなかった」とのSNS投稿が議論になっている。修学旅行先の京都でバスが突然キャンセルとなり、在来線で移動することになったという。背景には、運転手の長時間労働などを規制する「2024年問題」があるとみられるが、修学旅行のあり方を見直すべきだとの意見は相次ぐ。

 一方で話題となったのが、東京都港区。2024年度から、区立中学校の修学旅行先をシンガポールに決めた。「子どもにとって素晴らしい体験になる」との声もあるが、区議会では費用の高さや、海外渡航が適切なのかとの指摘も。様々な問題をはらむ昨今の修学旅行について、『ABEMA Prime』で考えた。

 教育学を専門とする千葉工業大学の福嶋尚子准教授は、形骸化した修学旅行はやめるべきだとし、3つのポイントを挙げる。まず「教育的意義」に対する疑問で、旅行会社が提案したプランにのっかるなど、教育としての意味が薄くなったこと。2つ目が、交通費・宿泊代・見学料・保険料などのために修学旅行積立金を支払う上、バッグ・衣類など家庭で用意するものも用意する必要があり、「費用」が高すぎる点。3つ目が「教師の負担」で、現地下見の交通費や入館料、当日の飲食代などが自腹のケースもあるほか、天候ごとのシミュレーション、生徒らのトラブル回避やアレルギー対策などの安全管理に24時間体制で取り組む必要があることなどだ。

 教育評論家の石川幸夫氏は「修学旅行はどんなものでもやったほうがいい」という立場だが、福嶋氏の指摘には同意する。「単純に賛否を取る問題ではない。今の子どもたちには経験値が欠けていて、修学旅行によって人生が変わることもある。そのためには、修学旅行が抱える根本的な問題を解決しなければいけない」。

 日本修学旅行協会「教育旅行年報データブック2023」によると、国公立中学校の修学旅行費用は、交通費や宿泊費、体験活動費などを合わせて総額6万2200円となっている(抽出校まとめ)。リディラバ代表の安部敏樹氏は、「コストが本当に高いかは、整理して議論したほうがいい」と指摘。体験コンテンツを提供する立場から、「教育旅行はまとめて行けるので、コストが一般向けの3分の1~4分の1になる。宿も、大きな会社はまとめ買いしているから安く、個人で同じものをやると高くなる」と説明する。

 その上で、「体験活動が子どもの主体性やコミュニケーション能力に影響を及ぼしそうだと、研究でわかってきた。かつては無償提供されていた体験が、今は資金的理由でできない人もいる。それが将来の所得に影響を及ぼすと考えると、経済状況が厳しい家庭も含めて学校が安く体験を提供するメリットはある」と、修学旅行の意義を語った。

 費用面について福嶋氏は「ジャンボタクシーや大型バスを貸し切るのは、安全性を重視して、昭和期に生まれた手法だ。6人でジャンボタクシーに乗ると、1日だけで8000~1万円。安全性の確保が、公共交通機関よりも高額な交通手段を取る理由になり得るかは疑問だ」とした。