2026年度末はGIGAスクール構想にとって大きな節目となる

AI要約

2024年5月8日から10日にかけて、東京国際展示場(東京ビッグサイト)で教育とITに関する展示会「第15回 EDIX(教育総合展)東京」が開催された。

 文部科学省が2020年から推進しているGIGAスクール構想で導入された1人1台端末は、2024年度から順次更新が始まる。

 GIGAスクール構想により、日本の学校教育が大きく変革したが、次の更新(いわゆるサードGIGA)にも影響が出るという。2026年度末はGIGAスクール構想にとって大きな節目となる。

2026年度末はGIGAスクール構想にとって大きな節目となる

 2024年5月8日から10日にかけて、東京国際展示場(東京ビッグサイト)で教育とITに関する展示会「第15回 EDIX(教育総合展)東京」が開催された。基調講演では、文部科学省初等中等教育局 教育課程課長(前学校デジタル化PTリーダー)の武藤久慶氏が登壇し、「GIGAスクール構想第2期に向けて~次期教育課程を見据えつつ、活用格差を解消したい~」と題して講演した。

 文部科学省が2020年から推進しているGIGAスクール構想で導入された1人1台端末は、2024年度から順次更新が始まる。「ネクストGIGA」とも呼ばれる第2期に向けて、武藤氏は「GIGAスクール構想の原点に戻る」と話した。

 子供たちが学校教育においてICT機器やサービスを利用できるようになり、学校教育は大きく変わった。武藤氏は、「新学習指導要領が目指している主体的・対話的で深い学びや、個別最適で協働的な学びの実現に向けて、1人1台端末やICT環境は良い影響を与えた」と評価した。実際、経済協力開発機構(OECD)による2022年の「生徒の学習到達度調査」(PISA)で、日本は全分野で世界トップ級の成績だった。

 ただ、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末をほぼ毎日活用していると回答した小学校は18.6%、中学校は22.6%にとどまる。「関係者が一丸となって整備に努力したのは、格差が生じてはならないという強い思いからだった。それなのに、整備された端末を使う学校と使わない学校があることで、格差が拡大しては本末転倒だ」と武藤氏は指摘する。

 「理解度や学力もバラバラな多様な児童・生徒をこれまで通り、誰一人取り残さないようにするには、端末などICT環境を使って個別最適な学びを推進していく必要がある」(武藤氏)。一方、ICT活用で教員がさらに忙しくなるのではないかという声に対しては、授業での利用、校務や教員研修、教員同士のコミュニケーションで業務の効率化が進んだり、指導が改善したりした事例を紹介した。

 学校現場でのICT活用を阻害する要因の一つになっているインターネット回線の通信速度について、武藤氏は「推奨するネットワーク帯域を満たしている学校は約2割にとどまる。自治体ごとに不具合の原因を特定するアセスメントを進め、回線契約の見直しも進めてほしい」と話した。

 数多く提供されている動画などのデジタルコンテンツやサービスを活用することで、教員自身が教材を作り込む自前主義から脱却することも「令和の改革のカギになる」と話した。

 学校でのICT活用を進める上で、「迷ったら学習指導要領やGIGAスクール構想の当初の考え方に戻ってほしい」と武藤氏は言う。GIGAスクール構想により、日本の学校教育が大きく変革したことは間違いないが、端末の更新やネットワーク回線の維持や増強など、国や自治体の財政負担が大きいのも事実だ。2023年11月に閣議決定された総合経済対策では「大宗の更新が終了する2026年度中に、地方公共団体における効率的な執行・活用状況について検証するとともに、次期更新に向けて、今後の支援のあり方を検討し、方向性を示す」としている。

 児童・生徒の端末活用や学習効果などネクストGIGAの成果次第で、次の更新(いわゆるサードGIGA)にも影響が出るという。「2026年度末はGIGAスクール構想にとって大きな節目となる。そこに向けて、GIGAスクール構想により整備されたデジタル学習基盤を活用して子供たちが伸びやかに学べるようにし、教員の働き方もICT活用で改革していきたい」と武藤氏は話した。