建築部門の坂茂氏「地震で人は死なない。建築が崩れて人が死ぬ。建築家の責任もある」災害ボランティアにも尽力/高松宮殿下記念世界文化賞

AI要約

坂茂氏が高松宮殿下記念世界文化賞の建築部門で受賞した経緯や、紙管を使った革新的なデザインの取り組みについて紹介。

坂氏のラグビーから建築家への転機、災害ボランティア活動など多彩な活動について紹介。

坂氏の使命感や不屈の精神、世界に対する思いについて述べられている。

建築部門の坂茂氏「地震で人は死なない。建築が崩れて人が死ぬ。建築家の責任もある」災害ボランティアにも尽力/高松宮殿下記念世界文化賞

世界の優れた芸術家を顕彰する「高松宮殿下記念世界文化賞」(主催・公益財団法人日本美術協会=総裁・常陸宮殿下)の第35回受賞者が決まり、10日、パリ、ベルリン、東京など世界6都市で発表された。5部門のうち建築部門では紙管を使った革新的なデザインで新たな可能性を開いた坂茂(ばん・しげる)氏(67)=日本=が選ばれた。授賞式は11月19日、東京都内で開催される。

東京都内で開かれた会見に出席した坂氏は、尊敬する歴代受賞者3人に感謝した。世界的指揮者の小澤征爾さん(2011年音楽部門)、デザイサーの三宅一生さん(05年彫刻部門)、フライ・オットーさん(06年建築部門)の名前を挙げ「同じ賞をいただけるなんて信じられない。お亡くなりになられたお三方のように、世界のために活動を続けていきたい」と感慨深げに話した。

「エコロジー」「サステナビリティ」といった言葉がなかった1980年代中頃のバブル期から、紙管という素材に着目。「とにかく身の回りにあるものを大切に使いたい」。展覧会の会場設計を行った際、仮設展示に使う木の代替材料を模索。ファクス紙の芯、再生紙でできた紙管を構造に使う開発を始めた。軽くて強い建築を目指し、新たな可能性を切り開いてきた。

活動のベースにあったのはラグビーだ。小学生で競技を始め、成蹊高では2年時に全国大会に出場、花園ラグビー場でプレーした。ポジションはフランカー、NO・8。授業の後も週末も、練習の毎日。夏も冬も合宿漬けだった。

「ラグビーって本当につらい。まひして肉体的にも精神的にもつらい中で、喜びを見つけていくことが楽しみになってしまったんじゃないかな」と笑う。

全国大会初戦で強豪の大工大高(現常翔学園高)に敗れてラグビーを断念。中学の夏休みの課題で作った住宅模型をきっかけに志した建築家を目指した。高校卒業後に渡米して建築を学び、帰国して85年に事務所を立ち上げた。

災害ボランティアにも力を入れてきた。「地震で人は死なない。建築が崩れて人が死ぬ。建築家の責任もある」。紙管を使った94年のルワンダ内戦の難民シェルター、翌年の阪神淡路大震災のベトナム人難民のための仮設住宅建設などが高く評価。年始の能登半島地震やウクライナの難民支援にも乗り出している。

平時と非常時の両方で建築家の使命を果たしてきた坂氏。ラグビーで培った不屈の精神で乗り越えていく。