「経験」か、それとも「世代交代」か 自民総裁選を元事務局長・久米晃氏に聞く【解説委員室から】

AI要約

自民党総裁選において、派閥の影響が薄くなり候補が乱立する状況が生まれている。

将来の政界再編や与野党の組み替えを見据えて、一部の候補者は小さな"核"を残す動きを見せている。

有権者の間では自民党に対する不信感が根強く、総裁選の結果が党の支持率にどのような影響を及ぼすかは不透明である。

「経験」か、それとも「世代交代」か 自民総裁選を元事務局長・久米晃氏に聞く【解説委員室から】

 自民党総裁選(9月12日告示、27日投開票)に向け、立候補者の出馬表明が相次いでいる。裏金事件で世論の「逆風」が吹き荒れる中、自民党は有権者の政治不信を払拭することができるのか。新総裁には何が問われるのか。党職員として長く選挙対策を担当した元事務局長の久米晃氏に今回の総裁選の特徴や展望などを聞いた。(時事通信解説委員 村田純一)

◆候補乱立、「小さな核」を残す動き

―総裁選をどのように見ていますか?

▽自民党の派閥は解散表明したけれど、実際に解散手続きまで至った派閥は森山派だけで、ほとんどありません。森山派や岸田派の看板は撤去されましたが、安倍派は残っています。でも、派閥単位で動くのは後ろめたさがあるので動けない、だから今のような状況になっています。

 水面下の動きをよく見ると、小林鷹之・前経済安全保障担当相には安倍派の若手の一部の人が集まり、河野太郎デジタル相には麻生派の一部が集まりますが、どこの派閥もたがが外れてばらばらです。

 麻生派、岸田派の人でも二階派だった小林氏を推す人が入っている。派閥の機能が確実に衰えていることは事実です。

 派閥の締め付けがなくなって、ふわっとした塊は残っているけど、締め付けがないから総裁選に手を挙げる人がいっぱい出てきました。

 だけど、手を挙げた人でも知名度がなくて、当選できるとは思っていない人もいるでしょう。推薦人20人を集めるのは大変なことですが、総裁選が終わって、次の衆院選が終わると、必ず「ガラガラポン」が来ると思っているんでしょう。

―ガラガラポンというのは政界再編の意味ですか?

▽最悪の場合、次期衆院選で自民党が単独過半数を割って、新総裁が責任を取って辞めさせられるということもあり得ます。その場合、公明党も当然議席を減らす。自民、公明両党だけで政権維持は難しくなり、連立の組み替えが起こります。国民民主党、日本維新の会を入れるかどうかなど、いろんな話が出てきます。みんな、そういうことを想定して動いていると思います。

 その時のために、小さな「核」を残そうと思っているのでしょう。推薦人が20人集まらない人も出てくるでしょう。20人集めたとしても、当選の可能性はほとんどない人がいる。でも、総裁選が終わったらその推薦人はその人の新たなグループになります。

 仮に20人集めれば、いろんな意味で交渉ができます。当落は度外視した新しい派閥・グループづくりの動きでしょう。ガラガラポンには派閥再編の意味もあります。今のままなら自民党が議席を伸ばすことはあり得ませんから。

 小泉進次郎元環境相の出馬で「小泉ブーム」がワーッと起これば別です。しかし、誰が新総裁になっても、自民党は議席を減らすと皆思っているでしょう。

◆自民は変われるのか

―自民党は有権者の不信を払拭することが本当にできますか?

▽総裁選で「自民党は変わるか」と聞いたら、「変わらない」という人が圧倒的に多い。自民党の支持率は上がっていますが、自民党は変わらないとみられています。総裁選の結果が、どう票に結び付いてくるかは分からない。

 一時的にブームが起きても、議席が増えると思っている人はいないでしょう。与野党を問わず、マスコミだって、これから自民党の議席が増えると思っていない。岸田政権が続いたら、自民党は単独過半数を割ると誰もが思っていました。今は、岸田文雄さんから新総裁に替わったとしても、減少幅がどれだけ少なくなるかという話です。