「たまたまそこにいただけ」 消防より先に少女2人を火災から救出

AI要約

通りすがりの男性が火事から2人の少女を救出したエピソード。

男性は煙を見て慌てながらも勇気を持ち、少女たちを助け出した。

消防隊がまだ到着していない時に、男性の行動が重要だった。

「たまたまそこにいただけ」 消防より先に少女2人を火災から救出

 消防が到着する前に2人の少女を火事から救い出したのは、通りすがりの男性だった。

 7月の週末の昼下がり、広島市東区の警備員池田孝志さん(57)は自転車をこぎながら、スーパーマーケットを目指していた。その時だった。

 「パーン!パーン!」。耳をつんざく音が響いた。

 近くの2階建て住宅の玄関付近から、立ちのぼる黒煙。火事だ、と認識した瞬間、「バン!」という音とともに熱風を感じた。携帯電話で消防に電話するつもりが、警察にかけてしまうぐらい気が動転していた。

 近隣住民も様子をうかがいに外に出てきた。「中におるんか?」、「わからん」。そんなやり取りが耳に入ってきた。

 煙が上がる住宅の部屋のカーテンが動き、人の手が見えた。「考えるよりも先に、自然に体が動きました」。一目散に駆けだした。

 1階の窓が開いていた。網戸を開くと、部屋の中は火が回っていないようだった。「誰かおらんかー」。力いっぱい叫ぶと、2人の少女が姿を見せた。中学生と小学生。ぼうぜんとした様子だった。

 両手を伸ばして抱きかかえ、順番に外に逃がした。その後、両親は自力で外に逃げ出した。

 東消防署によると、消防車が出動して1時間ほどで鎮火したが、住宅は全焼したという。

 東消防署と県警広島東署は8月20日、2人の少女を救出したとして、池田さんに感謝状を贈った。池田さんは「たまたまそこにいただけ。大したことじゃないけど、2人が無事でよかったです」と話した。

 東消防署の原崇副署長は「緊迫した現場では自身の安全を第一に考えて欲しいが、勇気を持って2人の尊い命を助けていただいた。当時は消防隊がまだ到着できておらず、数分遅れていたらどうなっていたか分からなかった」と感謝した。(根本快)