17歳少女の吹き飛んだ右足を麻酔ナシで切断、縫い合わせる…イスラエル軍の標的になった中東・ガザ地区の惨状

AI要約

パレスチナ・イスラエル戦争によるパレスチナ・ガザ地区の人道的危機が深刻化しており、食料や医療の不足が深刻な問題となっている。

イスラエル軍の攻撃により多くの被害者が出ており、医療従事者は手当たり次第に治療を行っている状況が報告されている。

飢餓問題も深刻で、多くの家庭は食料不足に苦しんでおり、子供たちが栄養失調のリスクにさらされている。

■逃げ場を失ったパレスチナ・ガザ地区の人々

 昨年10月7日の軍事攻撃で激化したパレスチナ・イスラエル戦争は、いまだに激しい対立が続いている。世界一の人口密度と言われるガザ地区内は絶え間ない攻撃にさらされ、もはや安全な避難先さえほとんど残されていない。

 食料は底を突き、人々は数カ月間も缶詰と小麦粉だけの生活を送っている。医療は多くの病院で機能しておらず、民家のテーブルの上で脚の切断手術を敢行するなど、厳しい状況が迫る。

 イスラエル軍は7月27日、ガザ地区の学校を標的にした空爆を実行。ガザが位置するパレスチナ自治区の保健省の発表によると、少なくとも30人が死亡、100人以上が負傷する惨事となった。

 フランスの国際ニュースチャンネル「フランス24」によるとイスラエル軍は、この学校は「テロリスト」である武装集団・ハマスの指揮統制センターになっていたと主張している。ハマスはこれを否定し、学校は避難民を収容する野戦病院だったと述べている。

 攻撃が行われたのはガザ中央部のデイル・アル・バラフ近くにあるハディージャ学校だ。保健省によると、犠牲者の多くは子供だった。目撃者のムスタファ・ラファティ氏は、英BBCの取材に対し、爆発の衝撃で体が揺れたと語る。彼は恐怖のあまり学校内に駆け込んだと語り、「恐ろしい光景だった」と振り返った。

■SNSで拡散された動画「17歳少女の緊急手術」

 ガザの医療状況は非常に厳しく、多くの負傷者が適切な治療を受けられない状況にある。ニューヨーク・タイムズ紙は、現地の整形外科医であるハニ・ベセソ医師を取材している。

 ベセソ氏の姪であるアヘドさんは、イスラエル軍の攻撃で足を負傷した。血を流し、泣きわめき、意識が混濁するなか、ベセソ氏が呼ばれたという。重傷だったが物資不足の折、稼働できる手術室も器材もない。

 ベセソ氏がやむなく使用したのは、アヘドさんの母親がつい先ほどまでパンを作っていたキッチンテーブルだ。彼はあり合わせの包丁とハサミ、そして縫い糸を手に取ると、アヘドさんの脚をテーブルに横たえ、そして切断した。

 米CNNの別記事よると、アヘドさんはまだ17歳の若さだ。器具も医薬もないなか、即席手術の激痛に耐えた。「麻酔などありませんでした。聖書を暗唱し、心を鎮めました」と彼女は語る。

 即席の手術は、感染症のリスクが高い。だが、ガザの医療システムは限界に達しており、これがベセソ氏にできる精一杯の治療だった。ガザでは多くの病院が完全に機能停止しており、麻酔や抗生物質などの供給も不足しているという。

 国際救助委員会のシーマ・ジラニ博士は、ニューヨーク・タイムズ紙に対し、ガザの状況を「地獄のような光景」と表現している。火傷を負って足を失った6歳の少年や、手足を失い血を吐いている1歳の幼児の様子を、彼女は目の当たりにした。「これ以上に緊急を要するケースがあるとは到底想像できません」と、現地の差し迫った状況を語る。

 このようにガザ地区の人道危機は、極めて深刻だ。多くの人々が重傷を負い、医療システムが機能していれば防げたであろう感染症によっても被害が拡大している。国際社会からの支援が求められているが、現状では十分な支援が届いていない状況だ。

■人口の96%が食糧危機の状態にある

 食料も足りない。ガザ地区の人道危機の中でも、特に深刻な問題となっているのが飢餓問題だ。住民の多くが食糧不足に苦しんでおり、子供たちが栄養失調で命を落とすケースも増えている。

 ガザで育児をする30歳女性のダイアナ・ハララさんは、国連組織から派生した人道NPOメディアの「ニュー・ヒューマニタリアン」に対し、「私たちが経験していることを表すのに、『飢饉』以上の言葉が見つかりません」と語る。

 ハララさんは、「小麦粉と缶詰の食料しかなく、それも支援物資としてかろうじて手に入る状況です。支援は不定期ですし、量も多くはありません」と語る。彼女の一家は、昨年10月7日にハマスが攻撃を仕掛けて以来、9回も強制的に移動させられたという。やっと手に入れた貴重な食料さえ、避難のたびに置いて行かざるを得ない。

 ガザ地区のハン・ユニスに住む62歳のナイーマ・アル=アシュールさんは、「私たちはほぼ1年間、缶詰の食料で生活しています。これ以上どれだけ続けられるか分かりません」と語った。彼女の家族は、子供や孫も含め15人の大所帯だ。別の母親は、清潔な水すらなく、みな1日1食から2食でしのいでいると語る。