「最高難度」の訓練で起きた事故 防止のカギは「高度差」 海自ヘリ衝突事故調査

AI要約

海上自衛隊のヘリコプター同士の衝突事故で、指揮官らが安全な高度差を意識していなかったことが明らかになる。

海自トップの酒井良海上幕僚長や木原稔防衛相は再発防止に全力を尽くす意向を表明。

過去の対策が事故防止に活かされず、目標を共有する指揮官たちの意識の欠如が事故の原因だった。

「最高難度」の訓練で起きた事故 防止のカギは「高度差」 海自ヘリ衝突事故調査

海上自衛隊が9日に調査結果を公表した海自ヘリコプター同士の衝突事故で、2機の乗員と、それぞれを指揮していた指揮官らが安全な高度差を意識していなかった実態が判明した。「最高難度」(海自幹部)の訓練で起きた事故。3年前の接触事故での対策は十分に生かされなかった。

「まさに断腸の思い。悲惨な事故が二度と起こらないようにしたい」。海自トップの酒井良海上幕僚長は9日の記者会見で険しい表情で語った。木原稔防衛相も同日の閣議後会見で「調査結果を重く受け止め、この先、一人の犠牲者も出さない覚悟で再発防止に全力を挙げる」と述べた。

哨戒ヘリは2種類の音波探知装置(ソナー)を駆使する。ホバリング中に投下し、低高度で潜水艦の方向をつかむ「つり下げ式」と、空中から複数の「ソノブイ」を投下し、広範囲に水中音を電波受信する方法だ。

事故4分前、新たな捜索目標が出現。第4護衛隊群司令が直接指揮する大村航空基地(長崎)所属の16号機は、ソノブイからつり下げ式に切り替えるため、高度約600メートルから45メートルへ降下した。

護衛艦「すずなみ」艦長の指揮下でつり下げ式を使用していた小松島航空基地(徳島)所属の43号機も同じ目標地点へ移動した。2人の指揮官は2機が同一目標へ飛ぶと認識していなかった。

一方、2機は互いを認識していた。水平飛行していた43号機の機内で事故2分前、16号機の方位と距離が報告された。だが、衝突までの間は距離の報告がなくなった。各機2人ずつの航空士は見張りだけでなく、機体操作やソナー準備などに追われていたとみられる。

令和3年7月、鹿児島県・奄美大島沖で哨戒ヘリ2機が対潜戦訓練で接触。乗員計8人は無事だった。この時も見張り不十分が原因とされ、防止策として飛行高度を決めておく「高度セパレーション」が導入された。

ただ、複数の指揮下での手順は決まっていなかった。ある海自幹部は「夜間、複数指揮官の管制下で同じ目標に飛ぶのは最もシビアな環境だ。いかに高度差を決めるかがカギだ」と話した。(市岡豊大)