「殺人事件で全国の保護司不安の声」報道への違和感、報酬制にしても保護司は増えない!わかりやすい再発防止策にはむしろ弊害も

AI要約

長谷川洋昭さんのコメントから、保護司と対象者の間に生じる心理的な距離や、対象者が報道によってどのような不安を感じているかが明らかになった。

長谷川さんは、報道が保護司の立場だけでなく、対象者の立場にも目を向けるべきだと訴えている。

保護司の大切な役割や、彼らが常に対象者の地域生活を支える覚悟を持って取り組んでいる姿勢が伝えられている。

「殺人事件で全国の保護司不安の声」報道への違和感、報酬制にしても保護司は増えない!わかりやすい再発防止策にはむしろ弊害も

 前回の記事「〈日本社会にあえて問う〉保護司殺害事件で保護司は不安なのか?「罪を犯した人と夜間に自宅で面接」知られざる保護司の活動実態」では、総務省のアンケートからは、「他の設問と比べると、1人での面接に不安を感じている保護司は多くはない」「面接場所は7割が自宅」「夜間の面接は珍しくない」といった現状を解説した。

 私たちは自分の常識に縛られている。事件が起きれば、「何か問題があったはず」「関係者は不安を感じているはず」という常識をもとにその事件を考える。そして、すぐに取り組むことができる、誰も反対しない「わかりやすい対策」が提案されることになる。

 その結果、何が起きるのだろうか。

 「自分のコメントとして使われたことに違和感がある」と話すのは、保護司歴11年の長谷川洋昭さん(51歳)である。

 長谷川さんは、田園調布学園大学子ども未来学部で教鞭をとりながら、消防団や保護司などの地域活動を続けている。今回の事件でも、複数のメディアから取材を受けた。そのときに、自分の思いが伝わらないもどかしさを感じたという。

 「テレビのナレーションでは、『全国の保護司から不安の声があがっている』と報じられました。これは、誰が、どのように調べた結果なのでしょう。取材では不安を感じないか何度も聞かれましたし、私も不安を感じる人はいるだろうと答えました。ただ、それは私が伝えたかったことでありません」

 保護司のなかには怒る人もいただろう。申し訳ない気持ちがあると、長谷川さんは話す。

 「保護司が不安に思っている以上に、保護観察対象者(以下、対象者)の皆さんの方が不安を感じているはずです。

 今回の事件によって、罪を犯した人に対する差別や偏見は強まるでしょう。反省して生活を再建しようと頑張っている時に、事件報道に接する。『ああ、やっぱり対象者は怖い人だと思われるのだろうな。就職も断られるかもしれない……』残念ながら、こうした対象者の不安に寄り添う報道はあまり見られません」

 長谷川さんは、保護司と対象者との間に心理的な距離が生まれることを心配している。

 「保護司は、誇りと覚悟をもって取り組んでいます。保護司は自宅の住所や電話番号が記された『連絡カード』を、対象者に渡しています。対象者は保護観察期間中、常にその連絡カードを携帯することが求められています。万が一何か事件を起こせば、保護司に連絡がいく。このように保護司は、対象者の地域生活を支える覚悟をもって担当しているのです」