障害者手帳持つ視覚障害者、推計は「過少」の可能性 - 基準の該当者は3倍超の指摘も 社保審・障害者部会

AI要約

厚生労働省が2022年の「生活のしづらさなどに関する調査」の結果を報告し、視覚障害者の有効回答数が低い可能性が指摘された。

調査では全国の身体障害者手帳所持者が415万9,000人で、視覚障害者は6.6%にとどまった。推計値の正確性への懸念が示されている。

厚労省は今後の検討課題として、視覚障害者に対する調査方法の改善を検討する。

 厚生労働省は4日、社会保障審議会・障害者部会の会合で、2022年の「生活のしづらさなどに関する調査」の結果を報告した。推計された全国の身体障害者手帳の所持者は415万9,000人で、そのうち視覚障害者は6.6%にとどまっていた。これを踏まえ竹下義樹委員(日本視覚障害者団体連合会長)は、同調査では視覚障害者の有効回答数が低いのではないかと指摘。身体障害者手帳の所持者が過少に推計されている可能性を懸念した。【渕本稔】

 調査は厚労省が5月に公表したもの。国勢調査の調査区5,363の地域に居住する在宅の障害者(児)を対象に実施し、有効回答数は1万4,079⼈(回収率57.6%)だった。

 調査票の集計を基にした推計では、⾝体障害者⼿帳の所持者は415万9,000⼈で、そのうち「肢体不自由」が158万1,000人(38.0%)で最も多く、次いで「内部障害」が136万5,000人(32.8%)、「聴覚・言語障害」が37万9,000人(9.1%)。「視覚障害」は27万3,000人と、全体の6.6%にとどまった(「不詳」が13.5%)。

 同調査では、調査員が各世帯を訪問して調査票を本人や家族に手渡し、記入後に返送してもらう形式で実施している。視覚障害者に対しては、希望に応じて点字の調査票を渡しているものの、調査票への記入ができず、回答できていない人が数多くいる可能性がある。

 竹下委員は、「視覚障害者の有効回答数は極めて少ないと聞いている」と述べ、そうした状況の集計を基にした推計データに対して「強い疑問がある」と苦言を呈した。

 清水朋美委員(国立障害者リハビリテーションセンター病院部長)は「眼科業界では、身体障害者手帳の基準に該当する視覚障害者は、100万人程度いるのではないかという指摘をよく耳にする」と発言。同調査の推計値を基に視覚障害者の割合は少ないと判断され、各種の施策が検討されていくことへの懸念を示した。

 視覚障害者に対する調査方法について、厚労省は「今後の検討課題」だとしている。