転勤先で土地購入、定年後に夫婦で築いた花園 一般公開終了 山形

AI要約

山形市の西蔵王高原にある約1000坪の「まんさくの庭」は、24年前に夫婦が荒れ地を切り開いて作った理想の庭で四季折々の花が楽しめる場所だ。しかし、夫婦は今月末で一般公開をやめることに決めた。

庭は山形市街から車で20分ほどの場所にあり、色とりどりの花や美しい景色が広がっている。夫婦は庭造りを通じて多くの人に喜んでもらえたことを感謝している。

夫婦は早苗さんが転勤で山形に赴任した際に、自然の美しさと人々の温かさに触れ、庭造りを始めることを決意。しかし、近年体力の衰えを感じ、一般公開を終えることにした。

転勤先で土地購入、定年後に夫婦で築いた花園 一般公開終了 山形

 山形市の西蔵王高原にある約1000坪の「まんさくの庭」。四季折々の花が彩り、訪れる人の目を楽しませてきた。24年前、荒れ地を切り開き、「理想の庭」を求め続けた夫婦は、今月末で個人宅の庭を公開する「オープンガーデン」をやめることにした。

 山形市街を車で抜け、山道を約20分走ると、まんさくの庭の小さな看板が見えてくる。三宅早苗さん(82)と妻の由紀さん(76)に庭の中に案内されると、色とりどりの花が咲き誇り、緑の草木であふれていた。

 小道を通ったり、小さな坂をあがったり、別世界を散歩しているようだ。庭の向こうには月山や朝日連峰が望める。由紀さんは「春から雪が降るまで、何かしら花が咲いているように植栽しているの。今はバラやアジサイが見ごろよ」と教えてくれた。

 2人は岡山県倉敷市出身。医療機器会社に勤めていた早苗さんは転勤が多く、アメリカ、ベルギーなど海外で長く過ごした。1991年から3年間は山形県に赴任。「ここに来て、なぜかほっとした。自然の豊かさ、人の温かさを改めて実感し、縁を感じた」と話す。山形から東京へ転勤する前、由紀さんが夢見てきた庭造りをするため、西蔵王の土地を「清水の舞台から飛び降りる気持ち」で購入した。

 2000年、早苗さんの早期退職に伴い、西蔵王に2人で移住した。早苗さんは「これまでずっと転勤で連れ添ってくれて感謝している。庭のことはよく分からないけど、自分もできる限り手伝いたい」と、由紀さんの夢の実現を後押し。共に懸命に荒れ地を切り開き、作業用一輪車がパンクするほど何回も大きな石を運んだ。

 4年後、ようやく庭が形になり、一般公開を始めた。「すべて自分流。紙芝居をめくるように、日々、景色が変わっていく庭にしたかった。去年よりよいものをと、毎年そう思っていた」と由紀さん。「花は生き物だから」と旅行にも行かなかった。四六時中、庭のことを考え、手入れを続けた。

 しかし、心境の変化が訪れた。由紀さんはここ数年、「満足した庭ができたのかなあ」と感じるようになったという。年齢を重ね、体力の衰えを感じることもあり、今春、6月末で一般公開をやめることを決断した。

 「あっという間だったけど幸福な時間だった。人様が見てくれるから、ここまで続けることができた。ちょっとは人の役に立てたのかな」と2人は話す。

 一般公開は今月29日(午前10時~正午)と30日(午後1~4時)。入園料は250円。【竹内幹】