【安田洋祐が語る】なぜ、中学受験は異常なほど過熱?ゆるくなる大学受験、もうピュアな学力を競う場は中受だけ

AI要約

日本の知的生産性の低さを嘆く西田氏と、中学受験競争の「虚しさ」を分析する安田氏が、「日本の「教育」大丈夫なんですか?」をテーマに対談。

日本は読み書きそろばん能力が高いが、大学受験の緩和と中学受験の過熱に注目。大学受験が緩くなる一方、中学受験は過去最高の受験率を記録。

教育のあり方について様々な視点から考える必要がある。

 社会学者の西田亮介氏と経済学者の安田洋祐氏が、「日本の未来は本当に大丈夫か」をテーマに対談するシリーズ。前回の連載では「日本の「政治」大丈夫なんですか?」をテーマに裏金事件をめぐる諸問題を論じた。今回のテーマは「日本の「教育」大丈夫なんですか?」。日本の知的生産性の低さを嘆く西田氏の問題提起に対し、安田氏は過熱する中学受験競争の「虚しさ」を経済学の視点から分析する。第2回は安田氏がゆるくなる大学受験と過熱する中学受験の関係を読み解く。(JBpress)

 (*)本稿は『日本の未来、本当に大丈夫なんですか会議 経済学×社会学で社会課題を解決する』(西田 亮介・安田 洋祐著、日本実業出版社)の一部を抜粋・再編集したものです。

■ 日本の読み書きそろばん能力はすごく高い

 日本の知的生産のクオリティが下がっている。西田さんの前節のご指摘についてはぼくとしても納得するところです。

 ただ、国際的な学力テストPISA(Programme for International Student Assessment 、正式名「OECD生徒の学習到達度調査」)などでは、ときどき順位が下がったりはするものの、圧倒的に日本の点数は高いという事実は見過ごせません。

 日本の読み書きそろばん能力はすごく高い。これは事実で、圧倒的な日本の強みだとぼくは思っています。

 その背景には、おそらく大学に入るための高校時代の受験勉強があります。

■ ゆるくなる大学受験と過熱する中学受験

 ペーパーテスト中心の入試制度に賛否両論はあるものの、受験があるからこそ必死に勉強せざるを得ない、という側面は確かにあります。平均的な学力をそこまでばらつきなく高くしてくれているのは、やっぱり受験のプレッシャーです。

 とはいえ、日本では、大学受験の内容はどんどんゆるくなっています。

 一例として、浪人する人の数がすごく減っています。独立行政法人大学入試センターによると、昨今の浪人生の受験比率は全体の15%程度まで減少しています。ほかのアジアの国とは好対照です。

 反対に、高まっているのが中学受験熱です。特に首都圏ではすごくて、2024年度は前年度より900人減の6万5600人と9年ぶりに減少しましたが、受験率は22.7%と過去最高を更新しています。

 中学受験はやりすぎなところもあるとぼくは考えますが、大学受験の熱が下がっていくのと中学受験が過熱しているのは、セットなのかもしれません。