エメラルドグリーンの海に映える「宮殿」…韓国人観光客に人気の絶景独り占めできる無人島 長崎・壱岐の「辰ノ島」

AI要約

長崎県壱岐市の辰ノ島は美しい海と断崖絶壁が魅力的な観光地。観光船で訪れることができ、遊覧や海水浴が楽しめる。

島の周辺を巡る遊覧では、海の宮殿や蛇ケ谷など素晴らしい絶景が楽しめる。島に上陸して巡ると、鬼の足跡や羽奈毛崎の断崖絶壁など見どころも豊富。

辰ノ島の絶景ポイントから眺める景色は圧巻で、青い海と白い砂浜を楽しむことができる。島を訪れる際は、船の運航スケジュールに注意が必要。

エメラルドグリーンの海に映える「宮殿」…韓国人観光客に人気の絶景独り占めできる無人島 長崎・壱岐の「辰ノ島」

 エメラルドグリーンの海、荒波に削られた断崖絶壁や奇岩-。長崎県壱岐市の北端に浮かぶ辰ノ島には美しい眺めが広がるという。夏場は遊覧・海水浴客も多く、昨年7、8月には約1万人が訪れた。本格的な観光シーズンを前に絶景を独り占めしようと島へ向かった。

 無人島の辰ノ島は広さ約30ヘクタールで、みずほペイペイドーム(福岡市)の約4倍。漁船でにぎわう壱岐市の勝本港から観光船で行くことができる。

 港近くの観光案内所で、島周辺の遊覧と上陸ができるチケットを購入した。参加者約40人のほぼ半数が韓国人。彼らを案内していた韓国のツアー会社の社長は「6月は約100人を連れてくる」と教えてくれた。

 併設のカフェで昼食用に勝本名物のスルメイカと壱岐産ジャガイモ「壱岐黄金(こがね)」のコロッケを挟んだ「イカッケバーガー」を買い、船に乗り込む。船員に「迫力があっていい」と勧められた船首甲板に立ち、いざ出発だ。

 心地よい風に吹かれながら穏やかな海上を進むと、10分足らずで遠浅の海と白い砂浜が見えてきた。環境省の「快水浴場百選」にも選ばれた辰ノ島海水浴場だ。

 上陸する人を降ろし、ここから約30分の遊覧がスタート。まずは「海の宮殿」。長い年月で浸食されてできた洞窟のある岸壁がエメラルドグリーンの海に映え、まさに宮殿のようだ。船長が船を近くまで寄せてくれたが、崖にぶつかりそうでハラハラした。

 外海に出ると、波が荒くなった。必死で手すりにつかまる。断崖絶壁の蛇ケ谷(じゃがたに)は、崖と崖の隙間に水が蛇のように入り、こちらも吸い込まれそうな気になる。

 羽奈毛(はなげ)崎の断崖には「正直者には見える」と言い伝えられる観音様がある。船員が指さして「ほら、青く見える。あれ、あれ」と教えてくれるが、その姿を拝むことはできなかった。

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 いよいよ辰ノ島に上陸する。条件がそろえば、船が宙に浮かんだように映る「宙船(そらふね)」が見えるという。波止場から振り返ったが、残念ながら見られなかった。

 島の管理人の原田政史さん(42)に案内役を頼み、他の参加者たちとは逆の反時計回りで巡ることになった。潮が引いた砂浜を歩き、緩やかな上り坂を進むと「鬼の足跡」が見えてきた。波による浸食などでできた大穴で「大鬼がクジラをすくい捕ろうと踏ん張ってできた」とされる。もう一つの「足跡」は、南西に約12キロ離れた壱岐島の牧崎園地にある。

 島の頂上、羽奈毛崎に到着した。高さ約50メートルの断崖絶壁。高所恐怖症の私は身がすくんだが、360度のパノラマは絶景だ。広がる水平線の向こうには対馬も望めた。坂道を下って蛇ケ谷を通る。船から眺めた水路を断崖絶壁から見下ろすと迫力満点だ。

 海水浴場が見渡せる絶景ポイントは「見返り坂」と呼ばれている。原田さんが「時計回りに巡ると、この絶景に気付かず通り過ぎることが多い」と教えてくれた。遠くに青い海と白い砂浜、近くには草原やチョウ、空にはミサゴやトビを眺めながら波と風の音を聞く。ずっとここにいたい気分だ。高台の階段に座ってランチタイム。絶景を独り占めしながらイカッケバーガーを堪能した。

 帰り際、はだしで海水に入る。冷たい水と砂の感触が心地よい。波止場までの道すがら透明な海を眺めていると、コバルトブルーの魚が見られた。「次回は(旅先で仕事をする)ワーケーションか読書でもしに来よう」と島を後にした。 (野田範子)

 ◆メモ 4~11月は勝本港と辰ノ島を結ぶ定期船が毎日6往復(現在は点検中のため4往復)あるが、期間外は要予約。いずれも最少2人から運航。料金は、上陸のみ1000円▽遊覧のみ2000円▽上陸・遊覧セット2500円(いずれも小学生は半額)。勝本町漁協観光案内所=0920(42)2020。