釣り、風俗…家賃滞納で老母絞殺の55歳男 裁判所が断罪した生活保護費のあきれた使途

AI要約

55歳の無職男が82歳の母親を殺害しようとした裁判で懲役9年の判決が下された。男は家賃滞納による困窮から自殺を考え、母親と共に命を絶とうとしたが自首した。

男は元々生活保護を受給していたが釣りや風俗店通いにお金を費やし、収入がなくなって母親の生活保護費を頼る生活になった。家賃滞納が続き、退去を迫られた際にパニックに陥った。

転居先を探す中、母親の施設入所を提案されたが母親は拒否。絶望感から無理心中を計画し、母親を殺害した。

釣り、風俗…家賃滞納で老母絞殺の55歳男 裁判所が断罪した生活保護費のあきれた使途

「家を追い出される。一緒に自殺しよう」。同居する母親=当時(82)=に対する殺人罪に問われた無職男(55)の裁判員裁判が6月、大阪地裁で開かれた。2人は母親の1人分の生活保護費で生活。家賃滞納を続けた末、退去予定日の前日に無理心中を図った。一方、地裁は判決で「全て被告が自ら招いた事態」と批判し、懲役9年(求刑懲役12年)を言い渡した。裁判所に指弾された男の破滅的な生活保護費の使い道とは-。

■滞納額はおよそ100万円

自宅のこたつでテレビを見る母親。肩の力が抜けたその瞬間だった。昨年5月14日午前8時ごろ、大阪市住吉区の自宅で、男は母親の背後から両手で首を絞めた上、とどめに包丁で首を刺して殺害した。犯行後、駅に向かって歩きながら車道や線路に飛び込んで自殺することも考えたが、交番で自首した。

「ずっと家賃を滞納していた。母は『(家を)出るなら死んだ方がまし』と言うので悩み、殺そうと思った」

警察官にこう語った男。令和3年12月から自宅マンションの家賃を滞納し、滞納額は100万円近く。管理会社から通告された退去予定日は翌日に迫っていた。

生活が困窮した背景に何があったのか。男は一時結婚していたが、離婚を機に母親と同居。母親の生活保護費を頼りにする生活が始まった。

■「頭が真っ白になった」

約10年前には自身も生活保護を受給し、ホームセンターで働いて月7~8万円の収入があった時期もあった。しかし、3年に仕事を辞める。母親の介護や人間関係のもつれが原因だったが「何とかなるかという甘い考えだった」。

さらに、翌4年夏には自身の生活保護支給も廃止(打ち切り)されてしまう。収入が安定したからではない。趣味の「釣り」を区役所職員から「ぜいたく」と指摘されたことで不信感を募らせ、必要な報告を怠ったゆえの廃止だったという。

再び母親の生活保護費が唯一の収入となったが、釣りや風俗店通いをやめられず、家計の逼迫(ひっぱく)に拍車をかけた。膨れ上がる家賃滞納から目をそらし続けた結果、管理会社から強く退去を迫られ、パニックに陥った。

慌てて転居先を探しつつ、区役所で窮状を訴えた。ケースワーカーから母親の施設入所を提案されたが、母親は「入所するなら死んだ方がまし。あんた(男)にみてもらいたい」と拒んだ。「頭が真っ白になった」状態で選んだのが無理心中だった。