都の「スクールカウンセラー雇い止め」に波紋、学校における子どもの継続支援に必要な視点

AI要約

スクールカウンセラー(SC)の配置拡充と雇用課題について、こども教育宝仙大学教授の石川悦子氏が語る。

SCの役割や配置時間の問題点、配置時間を長く確保する自治体の例を紹介。

配置時間が長ければSCは子どもたちへの支援活動や教育相談の幅が広がる。

都の「スクールカウンセラー雇い止め」に波紋、学校における子どもの継続支援に必要な視点

不登校やいじめなどの問題が増える中、配置の拡充が図られてきたスクールカウンセラー。一方で、東京都の不再任問題が波紋を呼ぶなど、その雇用のあり方には課題もある。そもそもスクールカウンセラーの役割とは何なのか、子どもたちのために力を最大限に発揮するためにはどのような体制が必要なのか。こども教育宝仙大学教授の石川悦子氏に話を聞いた。

不登校やいじめなど心に関わる問題の増加を受け、1995年から始まった文部科学省のスクールカウンセラー(以下、SC)制度。当初は各都道府県に3名(小中高各1名ずつ)の配置だったが、段階的に拡充され、現在は約3万カ所にSCが配置されている。

文部科学省の補助事業「SC等活用事業」では、SCの選考に当たっては、1:公認心理師、2:臨床心理士、3:精神科医、4:児童生徒の心理に関する専門知識を持つ大学教員、5:1~4と同等以上の知識と経験を持つ人物、のいずれかの条件が求められている。

公立学校と私立学校でSCを計20年間務めてきた、こども教育宝仙大学 教授の石川悦子氏は、SCの役割についてこう話す。

「SCの第一目的は、子どもの状態がよくなること。実際に行う支援には、子どもと直接関わる『直接支援』と、学校の先生や保護者のコンサルテーションを行う『間接支援』があります。SCと聞くと一般的には『子どもたち一人ひとりに合ったカウンセリング』を行うというイメージが強いかもしれませんが、先生や保護者に寄り添い、学校の教育相談体制の充実に貢献するのもSCの役割なのです」

2018年に心理に関する初の国家資格である公認心理師が誕生したことで、「さまざまなバックボーンの人がSCになる道筋ができて裾野が広がった」(石川氏)が、SCの配置状況はまだまだ十分とは言えないのが実情だという。

SC等活用事業では基盤となる配置時間を「週1回おおむね4時間程度」としているが、2022年度の調査によれば、SCが週4時間以上配置されている学校は、小学校では24.4%、中学校では64.5%にとどまる。さらに、小学校では8.7%、中学校では2.4%がSCの配置自体がない。

「SCの配置状況には地域差があり、中には月に2回の配置で1回当たり2~3時間という自治体もあります。SCは子どもたちがどんなことを考えているのか、その声を直接聞きたいという気持ちで活動していますが、配置時間が限られていると直接支援にたどり着けず、間接支援の割合が大きくなっていくのが実情です。また、先生と子ども、保護者と子どもの関係が膠着した際、第三者性を持つ専門家として両者の橋渡しをするのもSCの重要な役割ですが、配置時間が短いと難しくなります」

配置時間を長く確保できている自治体では、SCは日頃の直接支援や間接支援はもちろん、自殺予防教育やソーシャルスキルトレーニング、アンガーマネジメント教育といった予防開発的活動にも貢献しているという。

「SCを常勤配置としている名古屋市では、日々子どもに直接アプローチでき、学校の先生と一緒に家庭訪問するといったアウトリーチも可能だそうです。また、東京都などSCの配置時間を週7時間45分としている自治体はまだ全体の半数以下ですが、そのくらい長いとSCは子どもたちと直接会うことができ、先生や保護者との橋渡しもできます。活動時間が長ければ、教育相談の幅も広がるのです」